第34話 真実と神野の見解

 最後に、O弁護人に神野は全力で訴えた。


1.その日の出来事            

 エルゴメーターで一汗流し、着替えてマシンフロアーに戻ったら原告女性がいたので、『エルゴメーターが新しくなったね』と声をかけたところ、『他の機械も入ってますよ』と言われ、レジスタンスマシンエリアに誘われました。

 途中で以前から気になっている固くなった腰のことを、ダメもとで訊いてみようと思い、『腰が固くなった精だと思うが、腹筋が全然できなくなった』と言ったら、『腹筋なら…』と言って、腹筋台に案内されました。

 本人自ら腹筋台に乗り、両脚を前方の円筒形を横にしたようなものに乗せ、上体を起こす姿勢で腰関節の角度を、『ここが90度になるように』と言って、左手でしめしました。つられて右手で原告女性の左腰の上あたりと、左手で左ハムストリングの真ん中あたりに手を伸ばしました。右手の感触はあったが、左手は記憶していません。

 私は腹筋台の使い方を教えて欲しかったのではなく、腹筋(上体起し)ができないほど腰が固くなった。その理由に何か心当たりはないか、少しでもしなやかにする方法を知らないか、訊きたかっただけです。

 腹筋台での指導は3分程度だと思います。その後、私は腹筋台の北側から西にまっすぐ進み、西側にあるレジスタンスマシンの手前で振り返り、『マラソンランナーが外を走るとき、凄く大事なストレッチがある。私は腰が固くなってできないけど、あんただったらできる。やってみてくれる?』と言って指導をしたのです。 原告女性にこのストレッチの効果が分かってもらえれば、本人または交友関係から、腰をほぐす術が見つかるかもしれないとのほのかな期待です。


 指導順ですが、


1) まっすぐ立つ。     

2)上体を前に折る。

3)肩の力を抜いて、右脚を左脚の前に重ねる。

4)手を無理に下に伸ばそうとしないで、頭と腕の重みだけにして右膝の裏で左膝を押す。

5)ここを意識して。


 このとき右手で彼女の左ハムストリングを下から上にスライドさせたのですが、アスリート仲間であれば、脹脛、ハムストリングの途中、途中から臀部の下部、離陸となります。

 アスリートの場合、ハムストリングと臀部は感覚的には一枚岩。原告女性の場合はぶつかったような…。で、一瞬止まってすぐ下したら、直後に『内線…』と声がかかりました。


2.私と目撃者のこれまで 

 割と好感度の高かった女性なんですが…。

 朝、顔を合わすと、必ず声をかけてくれてた明るい好感度の高い女性で、自分のプライベートなこともよく話してくれてました。例えば、自分と彼氏の交際が終ったこと、両親がKスポーツジムのエアロダンスで知り合ったこと、高校時代に巫女さんを務めたこと等々。

 あるとき、亡くなったグラマラスで脚線の美しかった女性歌手の身体の特徴を話したあと、うっかり口が滑って、彼女とは正反対の身体つきであると言ってしまいました。

 本人にストレートに言ったわけではありませんが、『貧乳で短足』と言ったことになります。彼女は150cmぐらいで、フラットな身体のベビーフェイスです。その後、私には笑顔を見せなくなりました。

 この時から私に嫌悪感を抱いていたものと思われます。


3.私と原告女性のこれまで

 女子更衣室のロッカーの、閉店前の点検作業で大音をたててドアーの開け閉めをしていたので、注意をしたことがあります。苦笑いしながら、『早く帰りたかったんで…』と、悪びれたた様子はありませんでした。

 彼女の仕事のなかに、ストレッチマットの汗を拭くタオルの交換がありますが、使用前のタオルがなくなっても換えないので、何度も注意したことがありますが、『あ、そうですか』程度で、『すみません』は聞いたことがありません。


4.私の見解 

 私は過去に、Kスポーツジムのアスリート仲間、マラソン仲間の女性数名に例の前屈ストレッチを教えていますが、特に一人親しくしていた女性がいました。

 このストレッチはマラソンランナーが野辺を走るときに有効で、周囲に何もない広場や草原でもできます。

 裁判官や検察官はただ前屈するだけとお思いのようですが、さに非ず。左右別々に行い、左ハムストリングの場合、立った姿勢から前屈して、右脚を左脚の前に重ねます。肩の力を抜いて右膝の裏側で左膝を押します。左右交互に2回ずつ。 

 ストレッチ指導はスタジオの窓際を使ってましたが、受付からよく見えます。

 筋トレやストレッチに、部位を意識することの必要性は前述のとおりです。脹脛からハムストリング、臀部下部あたりまでですが、アスリートはみんな下半身の筋肉は発達してます。ボトムアップしており、太ももと臀部の境はあいまいですね。 親しくしていた女性ですが、彼女はプライベートストレッチインストラクターの有資格者で、有料ストレッチのレッスンのために、私をよく練習台にしてました。 当然のごとく私の脚、腰、臀部には濃厚接触します。終わったあとお礼に、私が彼女に肩、腰、臀部、ハムストリングをマッサージして終了。

 彼女は163cmで脚長の日本人離れした体形で、他の女性からも憧れの眼でみられていました。私は、目撃者も無い物ねだりで、彼女を羨望の眼で見ていたのではないかと思います。

 私がうっかり、目撃者を『貧乳、短足』扱いしたとき、彼女と私のことを思い出し、自分が蔑まされたような気分になったのではないかと…。

 この時点で、目撃者は私への復讐の機会を窺っていたのではないかと思われます。私とKスポーツジムの確執、私の教え魔的性格、無垢で幼児的な原告女性…等利用できるものは利用して。

 目撃者が私を注視していたのは、セクハラ発言があったとか手や肩を触られたと言うのは彼女の作り話で、私とアスリート仲間との無遠慮な接触を利用したものと思われます。私とKスポーツジムとの確執は彼女には追い風だったわけです。


5.疑問点

 なんで、指紋検査をしないんですか?

 原告女性や目撃者の言うように触っていたのなら、指紋が残るはず。

 何故証拠のユニフォームを出してこないのか? 

 ハムストリングにしか付いてなかったので、出せなかったんじゃないですか?

   

6.西宮警察に対して

 何故、私に現場検証をさせないのか?

 私だけが現場写真を見せてもらってないが、前屈現場は警察官が撮った写真のものとはかなりずれています。

 別途、図面と写真で示します。


7.最後に私の反省点

 1)確かに、目撃者に対してグラマーで、美脚の女性歌手(故朱里エイコ)と正反対の身体と言ったのは大変失礼だったと思います。

 アスリート仲間にはフラット体形の女性が多く、彼らにも同じようなことを言ってます。

 2)原告をアスリート仲間と区別すべきでした。

    

 どちらも、アザミの効用ですね。

   


to the next Episode.


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