ほとんどの人は「痛み」というのを直接体験しないと分からない。
何故なら、その「痛み」とは自分とは"無縁"だからと無意識に考えているからだ。
だから、その「痛み」を訴えたところで理解してくれる人はいるだろうが、見つけ出すのはとてつもなく困難だ。
この作品のテーマであるMCSも現代だからこそ出てきた問題であり、理解者が少ないのも無理はない。
だからといって「自分には関係ないから」と切り捨てる訳にはいかない。知らぬ間に当人を傷つけているかもしれないし、いつの日か自分が、もしくは身内や友人の誰かがなっているかもしれない…。
『明日は我が身』ですよ。
みーやちゃんは仲の良いふーくんの服からする柔軟剤の甘い匂いが大好きだった。だがある日、いつもと同じようにふーくんと過ごしていたみーやちゃんは突然意識を失い、病院へ搬送されることに。そしてふーくんは知らされる。みーやちゃんが微量の化学物質に触れるだけで様々な症状を引き起こしてしまう化学物質過敏症(CS)を発症したのだと。
化学物質に満ち満ちた現代社会では誰もが発症する可能性のある化学物質過敏症。本作はそれを発症してしまったみーやちゃんの辛さと、彼女を大事にしたいふーくんの奮闘を描いています。
絵本を思わせる文章運びは読者年齢層を選ばず内容を伝えてくれますが、描き出されるみーやちゃんの絶望はおそろしく深く、辛いものです。でも、だからこそ空回りして失敗して、でも友達のため前向きにがんばるふーくんの意気が、彼女と読者の胸に染み入るのです。
もし自分が発症してしまったら、もしくは周囲の大切な人が発症してしまったら。読み終えた後考えてみていただけましたら。
(「社会の問題、その“今”を切り取る!現代ドラマ4選」/文=高橋剛)
当事者なのでその目線で読ませてもらいました。この症状を聞いたことがない人でも想像できるような言葉で書かれていると思います。登場する人達が優しいので現実もこうならばもう少し生き易くなるのかもしれません。製品の問題だけではなくメーカーや経済の観点にも触れているので症状だけを考えるのではなく社会としての在り方や方向性も考えなければならないですからそれらもトータルとして綴られていた事で現実へと引き戻してくれました。
行政や学校などに書籍として置いて欲しいなと個人的に思える作品です。
読んで涙が出てしまいました。