結婚しても別居して私は楽しく暮らしたいので、どうぞ好きな女性をつくってください。

リオ

第1話 会いに来ない王子

「ニーナ、元気か?」


「カイル?来てくれたの?」


「ああ、もう会えなくなるからな。可愛い俺の弟に」


「…隣国の王子に嫁ぐ私を…男扱い……」


「それくらいの方が楽だろ?」


「ええ、その通りね」


「子供さえつくって、後は別々に暮らせばいい。この俺の教えを覚えておきなさい。好きではない相手と結婚するんだ。割りきった方が楽だ。」


「うん!その教えを胸に、いってくる。」




「ああ。」






 ・・・・・



「ニーナ様。ニーナ様。」


「……おはよう、ステラ。」


「お顔の色が良くありませんが、大丈夫ですか?」


「大丈夫よ。ただ何でも自分で出来てしてしまう、女らしくない女を演じるのが面倒でたまらない」


 私は、女のふりをする事にしている。

 お嬢様の定義から外れる事を自らやる。



 婚約者ではあるけれど、未だに結婚をしないのは、この出来の悪い私の子を我が国の世継ぎにと考えた時、不安らしい。


 だからこの王国の姫として相応しくないように私は頑張る。

 結婚しても、誰か側室を迎えてもらえるように仕向ける。


 だってそうすれば、私は子供を産まなくてすむかもしれない。



 それに私は、未だに婚約者の顔も知らない。よくできた素晴らしい人らしい。

 年齢は3つ上。21才。


 今の私は18才。

 妹は既に嫁いでるのに、私は18才まで嫁に出すこともなく婚約者も決まっていなかった。


 このままずっと嫁がず暮らしていけるんじゃないか、そんな夢を見ていた。


 けどやはりムリだった!


 どこをどう間違ったら、伯爵家の私が隣国の王太子と婚約になるのか。

 お断りなどすれば、それこそ国際問題もの。




「はぁ…」


 それにしても、ここに来てもう1ヶ月。

 私の姿を見たくないのか、私に姿を見られたくないのか、結婚したくないのか。


 会ったこともない男のために、毎日毎日くだらない努力をするのは面倒だわ。


 しかも噂では、溺愛する女性がいるという。すでに側室(溺愛中)候補がいるという、最高の条件もそろっている。

 彼女に男の子をご懐妊いただいて、私はすたこらさっさと、別居する。

 もう、最高の未来がまっている!


 けど会いにこないってどうなの?何でもいいけどさ、少なくとも挨拶くらいはするべきだと思うのよ。人として。



 この国の王太子殿下は礼儀はなってないようね。





婚約者に会わないのは今日で2ヶ月。



「はぁ…」


ここに来てから何度目のため息だろ。



窓の外は活気があって皆楽しそう。

………今なら外にでても婚約者とか気がつかれないんじゃない?


うん、外に出よう。

そうしよう。

それがいいに違いない。


服は1番街にとけ込める感じのものを選ばないと。

……用意されているのは馬鹿みたいに綺麗な服ばっかり。


『…綺麗な物だけ贈っとけ』的なね。


手持ちのお金も無い事だし、着ていった服を売ろう。それで服を買えばいいか……


外に出るのは簡単だった。


この邸には女中も1人、侍女1人、あと兵が1人。

なめられたものだわ。私が誰かに襲われたりする可能性だってあるのに、兵が1人。


皆それぞれ仕事が手一杯だから、簡単に外へ出られた。


「あの、」

「ん?ないだい?」

「この辺で質はありませんか?」

「ああ、それなら次の角曲がって3件目だよ」

「ありがとうございます。」


私はすぐにそこへ向かった。


「すみませーん。どなたかいらっしゃいませんか?」


店は開いてるのに、人の気配がまるでない。

どうなってるの、この店…。


「いらっしゃいませ。」

「うひゃゃゃ!」

「わっ!」


後ろから声をかけられて、変な悲鳴をあげてしまった。


「申し訳ありませんでした。急に後ろから声をかけられたものですから…。」


まさか私の後から入ってきた人が店員だなんて思わなかった。


「いえ、こちらも、驚かすような事をしてしまってすみません。」


ニコっと笑った店主の顔は爽やかだ。


「ところで、何か質にいれるものでも持ってきてるのですか?何も持っていないように思いますが…」

「私のこの服を買って欲しいのです。」

「この綺麗な服をですか!?む、無理です!うちでこれを引き取れるようなお金はありません」

「いえ、そんなにお金はいらないの。この街で服を買って、ご飯を食べられるくらいのお金になれば問題ないわ。」

「…ですが、とても高級なものです。そんなお金でいいんですか?」

「ええ。こんな服、着る事ないもの。」

「…何故ですか?」

「ん~、私はずっとこの街で暮らすつもりだから、こんな服より皆が着てるものを着たいわ。」

「特注品のようですし、プレゼントされた品ではないのですか?」

「もしそうだったとしても、顔も知らない人から貰う物なんて、ただのゴミよ。」

「……そうでしたか。では、買い取りいたします。」

「ありがとう!」


そして私は500ニードル(5万円)を手にいれた。






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