第29話 レティシアと愉快な仲魔達

 結局、8組のエロフとオークの夫婦が誕生した。

 エロフの姫はレティシアに一目惚れしたようなので別である。


 「一応領主の許可とギルドの従魔許可は貰ったわ。証を受け取る時街の入り口で待機しといてと言われたわ。」

 そこで証の受け取りとパパンによる最終判断が下されると言う。


 街の外でも近い部分は聖女の結界があるため、外敵の心配はない。

 

 エルフの長の元へと向かう道中、領主とギルドでの話を説明した。

 「オーク達には当面外壁外の南から西を開拓してもらいます。家はまだ建設していないので住居の1階大広間を予定してます。」


 「我々は生かされているだけで幸せです。文句などございません。」

 オーク達、随分丸くなったなと思うレティシア。

 魔物の世界も弱肉強食なのだろう、強者に従うのは摂理と言えるのかもしれない。

 

 エロフの姫はエレン・エル・フィールと名乗った。

 数千年と続くエル王家の末裔だった。

 人間の歳に換算すると17歳らしい。他のエロフ達も皆15~17歳だそうだ。


 一際大きなオークキングには名前がないのでガレフと名付けた。

 なんか名付けたら全員進化してしまったのはここにいる者しか知らない。

 ジェネラルはキングに、キングはキング+に。


 なんだその進化先とツッコミを入れたのは笑い話である。

 ちなみに人間換算すると、20歳だそうだ。

 一人最初に脳天ぷちゅんされたのは、一番若いやる気盛りで15歳に相当するとの事だった。


 「もう着きますよ。」



 「おぉ、エレンどこに言っておった。捜索隊を出すとこ……ろ……ひやぁぁぁオークキングがたくさんいるぅううぅ。」

 後ろに転んで失禁してしまうエルフの長だった。


 「お、お母さま……」

 エルフの長は女性だったんかいと心の中で突っ込むレティシア達面々だった。


 

 「お、お見苦しいところをお見せしました。」

 そりゃぁ初対面で失禁姿を見せたらそう言いますわなと思うレティシア。


 「わ、私も若い頃にオークに……くっころを言った経緯がありまして。」

 その時を思い出して過剰に吃驚したらしい。


 「だ、大丈夫よ。貴女はちゃんとエルフのお父様ですからね。幸か不幸かオークとの間で妊娠はしてませんからね。」

 何のカミングアウトを聞かされてるのだろうと思う面々である。

 でもオークの逞しいのを味わったらエルフじゃ満足できなくなってしまって……とぶつぶつと呟いていた。


 「それで、このオーク達に絶賛ハッスル中だったところを救出したわけですが、オーク達は全員私の下僕になりたいと土下座されまして。」


 「確かに貴女から発せられる魔力とか力とかを視ると服従したくはなるでしょうね。オーク達の気持ちもわかる気がします。」


 「そこで問題が発生したのですが、本来であればエルフ達を届けてはいおしまいだったのです。しかし8組のエロフとオークの夫婦が成婚してしまって

ですね。」

 もはやエルフをエロフと言う事に抵抗のなるなるレティシア。

 

 「オークを我が領地で働かせるとなると、その妻であるエロフ達をどうするかという問題が発生しまして。出来れば夫婦で離れるのは良くないと考えているので……」



 「良いですよ。許可します。貴女の領地でそちらのオークの妻として生活する事を許可します。」

 みなまで言う前に長は許可を出した。


 「その代わり……貴女の領地との交易を望みますわ。交易を持てばたまに視察で伺えますし。あわよくば私も……」

 願望がだだ漏れなエロフの長。

 この一族、もうエルフとは思うまいと誓うレティシア。


 「あ、一応言っておきますが、オークの性欲は封印しております。夫婦間のみその封印は解除してますが。」

 


 「そういえば我が娘はあぶれてるようですね。」

 「私はお姉さまにぞっこんです。」

 エレンはない胸張って威張った。


 「子孫の事は考えなさい。誰を好いても良いですが、100年以内に子は成す事。それさえ守れるなら自由になさい。」


 「それでは、オーク達にはエロフ領との街道を優先して作らせましょう。街道を引いても良い位置を指示してくれればそこまで工事

しますので。」


 「そうですね。結界の外まで欲しいのは事実ですが、街道の終着点からエルフの住処を割り出されてしまいますからね。」

 街道の終着点には砂漠のオアシスに当たるようなものを建築しようという事になった。

 魔物との事がなければ、宿場町を作るのが良いかなと考えるレティシアである。


 「私が結界を上書きしましょうか?それで宿場町でも作れば、森で活動するための一時拠点くらいにしか思われないのではないでしょうか。」

 森を開拓し、もし街道が走ればこれはフラベルの領地と言う事になる。細かい事はエロフの長との話し合いが必要になるかも知れないが。


 「良いですよ。貴女の結界なら強力そうですし、余程の高位魔族でも来ない限りは問題ないと判断します。ある程度の建築目途が立ったらそちらはお願いしますね。」



 レティシアは結界を張りエロフを悪意ある他種族から完全に切り離した。

 協力共存関係にあるものは除外して。


 「レティシア様、これは友好の証と、娘達を救ってくれたお礼です。」

 そういって長は3つの苗をレティシアに手渡した。

 

 「これは有名なユグドラシルの苗木です。貴女のところにいるアルラウネのお嬢さんがいれば問題ないと思います。」

 本当はドライアドがいれば一番良いのだけどと付け加えられる。

 流石のレティシアもドライアドに知り合いはいない。今後はわからないけど。



 会談中、終始ユーリの機嫌は良くならなかった。

 どんどん増えていくシア信者達。


 二人きりから始まった生活なのに、気付けば片手では足りない人数がレティシアの周りに集まっている。

 面白いはずもない。しかしそのレティシアが救っている相手なので文句は言えない。


 仲間外れにされる苦しさ、置いて行かれる悲しさはユーリ自身も理解しているためだった。



 「それでは、私は普段は工房とお店の経営で多忙ではありますが、たまに採取とかに出掛けますのでこちらにもたまに顔を出しますよ。」



 「それじゃぁ、全員忘れ物はない?」

 エルフの里から出る女性エロフ達の荷物はレティシアの空間収納に保管している。

 住居が完成するまでは生活必需品以外は出せる場所がないためそれで良いと納得していた。


 「転移するよ。」

 結界を上書きし、エロフの里からフラベルの街入り口前に転移する。




 「おわっ」

 門の入り口で警備をしている門兵が突然現れたレティシア達を見て驚愕する。

 レティシア達人間だけならば問題はなかった。

 アルラウネとエルフとオークキングが現れれば腰を抜かしても仕方がない。


 「あ……」

 男のお漏らしには需要がないのでレティシア達は全員スルーする。


 「従魔登録の証を貰ってくるから待ってて。ユーリ皆を見ていて、お願いね。」

 返事を聞かずにレティシアは転移する。

 その場に残されたユーリはやれやれと思いつつも、お願いねと頼られた事には満足していた。


 「ただいま。じゃぁガレフ達はこれを首からぶらさげといて。それと洗浄の魔法っと。」

 回復を掛けた時に一度綺麗にはなっているのだが、その後のエルフ領まで歩いた時に汚れは出来ている。

 これから街に入るのに不潔では、魔物とか人間とか以前の問題であった。


 「パパン呼んでくるからもう一度待ってて。」

 再度転移で姿を消すレティシア。


 「お姉さま、怒涛の展開過ぎて思考を追いつかせるので精一杯です。」

 ラッテが漏らすのも仕方がない。

 喋る暇もない程に展開が早いのだ。

 レティシアがこうして席を外している間に話の補足をしなければ、頭がぐるぐるして眩暈を起こしているだろう。



 やがて領主を連れてレティシアが戻って来る。

 今度は一応歩いて門をくぐっての登場である。

 これは、一緒に歩いて行くか、レティシアに抱き付いて転移するかの二択で前者を選んだ結果である。


 娘に抱き付くのはどうかと妻二人に諭されたとは言えないレオナルドだったのだが。



 「ここにいる魔物達がシアの言っていた従魔達かい?良いんじゃない?開拓していくのだろう?居住の許可を与えるよ。」


 オーク達が跪いて感謝を述べていた。

 エロフはそんなオーク達の肩を優しく抱いている。


 「それにしてもなんだい?エルフとオークの禁断の愛達かい?良いね異種族恋愛。これは知り合いの作家に本にしてもらおう。」

 暫く後、エロフとオークの恋愛本がフラベル領を起点に広まる事となるのは別の話。



 「それじゃぁ、住居が出来るまではエロフとオークの夫婦は1階の大広間を寝床にして。」

 空き部屋を使ってとは言わないレティシアだった。

 1人1人なら足りなくなるが、夫婦で1部屋を使うならば足りるはずなのだが……

 

 「発情しすぎて近所迷惑をしたらどちらも暫く禁止措置を取るからね。」

 釘をさす事を忘れないレティシア。

 エロフもオークも深く頷いていた。


 「そうですよ。掃除をするのは……そうですね。大広間は使用している間はエロフの子達に任せましょう。」

 メイの訴えはごもっともだと、レティシアは同意した。


 その日はオーク肉パーティとなった。 

 脳天ぷちゅんされた彼である。


 ガレフ達に確認はしたが、別に構わないとの事だった。

 元々オーク達はひもじい生活をしていたため、死した仲間の肉を喰らう種族でもあった。

 流石にここにいる8人のオーク達は互いを食す事はなさそうではあるが、これまではそうやって生きてきたと述べていた。


 焼肉パーティが終わった後、レティシアはメイとラウネを連れて庭へ出ていた。


 「試験的に薬草をここに植えようと思うの。それとエロフの長から貰った苗木も1つ植えてみようかと。」

 大きくなる事を想定して苗木は少し離れたところに植える事にし、その周辺に採取してきた薬草の苗木を植えていく。

 そしてレティシアは魔法で水をシャワーのように振りかける。


 「あ、私も浴びたい。」

 ラウネはシャワーの中に入っていく。


 「あ、お姉さまが私の中に入ってくるぅ。」

 発する言葉はとても良い子には聞かせられないものだったが。


 「お腹いっぱいむねいっぱい。」

 ラウネはそう言うが、胸の膨らみはほぼない。



 私は土に埋もれるか触れてないと弱ってしまうから……と言い、先程帰ってから試験的に植えた薬草類と一緒にラウネは外で就寝している。


 1階の大広間に人数分の布団を引いて今晩はそこで就寝する事になったエルフとオークの夫婦達。

 オークもエルフも夫婦になるのは良いけど子供はどうなるんだろうなとレティシアは考えていたけど……

 どうでも良いか、それはもう天に任せるよと投げ出した。



 就寝前大広間の扉を開けると、案の定エロフとオーク達夫婦は性交をしていた。



 「おーほっほっほ。跪きなさいっこのブタやろうっ。」

 ビシィバシィっと鞭が肉を叩く音が響く。

 一番小さなエルフの少女ミーシャが、一番大きなオークキングを……調教していた。

 暫く唖然として見ていたのだが、ガレフが直立し後ろ手に縛られ股間を鞭で叩かれて喜んでいるところを見て、レティシアはお腹いっぱいになった。


 何も見なかった事にして、レティシアは扉をそっと閉めた。


 (どこに鞭なんてあったんだろう。)

 鑑定をしたレティシアが視た物は、「龍の髭」となっていた。

 ガレフ……死ぬなよ、まだ何も働いてないからなと思うレティシアの心は誰も知らない。


―――――――――――――――――――――――

 後書きです。

 フラグが立ちました。ドライアドさん。

 それと、オークキングのガレフさん、レティシアに服従した瞬間から支配される悦びに目覚めました。

 

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