第21話 ユータ達のその後②

 ユータとアリシアの情事を見て、少しやる気が削がれたユーグではあったが、追加メンバー選考について自分の意見が取り入れられる事で溜飲を呑んだ。


 この二人は所かまわずいちゃいちゃしていた。

 よくもまぁこれまでレティシアやユーリにバレなかったものだとユーグは思っている。

 それだけレティシアがユータを信頼していたという事なのだろうけど、今ではそんなものは抱かれていないだろうことはユーグも理解している。

 追放した事で、これまでの交友関係における信頼感をも捨てたのだ。


 ユーグはそれを理解している。

 万能過ぎると思っているが故に次のメンバーは自分達より少し下であり、尚且つ有能でなければならない。

 それでいて、自分好みの女であることが理想。

 なんとも贅沢過ぎる条件だ。


 それら全てをクリアする人物など、いるはずもない。

 存在していたとしても、自分達の行動範囲にいる確率なんて……砂漠の砂の中から砂金を見つけるようなものだ。


 「冒険者ギルドに募集を掛けておこう。パーティメンバー募集と試験の内容を出せばある程度は絞れるだろう。」


 ユーグは早速冒険者ギルドに赴き、用件を済ませた。

 


 一方、散々ホワイトソースをアリシアに注いだユータはアリシアと一緒に身を清め、それなりに整った格好を身に着けた。

 これから仮にも父である伯爵に会いに行くのだから、汚れた格好でいるわけにはいかない。

 アリシアもお嬢様然とした清楚な恰好と化粧をしていた。


 これほど見た目と中身が釣り合わない令嬢などそうはいないのだが、見た目からだけではそれは伝わってこない。

 アリシア自身以外には。


 「アリシア、父さんには俺達の事伝えるけど良いよね?父さんに言って正式に婚約を結ぼう。」

 婚約は行うものであって結ぶのは婚姻なのだが……


 アリシアは頷いている、それが答えだと言わんばかりに。

 ポートマン家の事を考えれば伯爵家との縁が繋がるだけでも大きな事である。

 流石のアリシアも王家や公爵家と縁談を持てるとは思っていない。

 しかし現在伯爵家の子息であり、天職勇者であるユータがその程度で終わるはずはないと思っている。


 アリシアがユータを好いているのと同時に、地位や名誉を自らのものにしたいという思いも同時にあった。

 下級貴族ではいられない。贅沢の限りを尽くしたいわけではないが、それなりに不自由のない生活を送りたい。

 そう思っていた。


 そういった意味で伯爵という立ち位置は、上過ぎず下過ぎず丁度良かった。

 



 どういう挨拶をしたのかは覚えていない。

 アリシアは決して物覚えが悪いわけでもなければ、難聴なわけでもない。


 ユータの父である伯爵が何を言っているのかわからなかった。

 レティシアと何故婚約破棄したのかとか、寄りを戻せないのかとか。

 ユータを叱責、説得するような内容ばかりだった。


 どう解釈しても、アリシアとの縁を祝福しているようには見えなかった。

 あんな魔族や隣国との防波堤でしかない辺境の娘と比べて、自分の何が劣っているというのか。

 親の爵位では確かに劣ってはいるけれど、所詮は辺境の田舎貴族の娘。


 そのようにしかアリシアは思っていなかった。

 フラベル家のおかげで魔族は大きな行動をとってこれないし、隣国も攻めてはこないとは微塵にも考えていなかった。


 「もう良い。父さんがわからずやだとは思わなかった。例え勘当されたとしてもシアとの復縁はありえない。このアリシアと共に人生を往く。」

 「俺は勇者なんだ。そのくらいは自身で切り拓いてやるさ。」


 ユータは話し合いが解決しないまま父との会話を自ら打ち切った。


 ユータは思い違いをしている。

 自身は貴族の子息ではあるが、伯爵ではない事に気付いていない。

 確かにこのまま成長し家督を継げば伯爵と成るが。


 勇者ではあるが伯爵ではない。


 勇者としての功績を残せば家督を継ぐ前に何かしらの爵位を賜る事はあるかもしれない。


 もし、子息令嬢本人が何かしらの功績を残して本人が蔣爵されるとすれば、それは他でもないレティシアが最もありえる話である。


 この時既に、エルダートレントを討伐し、森の開拓に身を乗り出していたのだから。

 冒険者の功績は、場合によっては国からも褒賞を得る事がある。

 国益を優位にした場合や、王族等を窮地から救った場合などだ。


 レティシア本人は気付いていないが、エルダートレントに強姦された女性冒険者の一人に王弟の娘がいた事に。

 王の弟、つまりは高位貴族という事になるが、王籍から除籍されたとは言っても、悪事を働いてのものではないのだから現王家との繋がりは切れてはいない。


 冒険者をやるくらいなのだから、その娘も長女ではないのだが、それでも薄いとはいえ王族の血が流れている。

 その命を救った功績は大きい。ましてや傷物にされた身体を綺麗な身体にした事はとても大きい。

 本人は冒険者として活動した時から女性である事は二の次に思っているかも知れないが、親である王弟からすればその感謝は計り知れない。


 レティシアの知らないところで株が上昇している事に関しては、知る者は少ない。


 しかし、何も成していないユータよりは確実に国のためになる事をしていた。

 本人が望むかは別にして。


 森を開拓という事は単純に国土が広がるという事。

 魔族との暗黙の協定は森を境にとなっている。

 森そのものは互いに治外法権であるとも。


 木がなければ森ではない。

 国土から陸続きである空いた土地は当然、そちら側の国土となる。


 魔族が自領側を開拓しないのは、面倒だからという理由だけだけれども、それを知る者もまた少なかった。




 アリシアの手を引き、自分の部屋に入ると荷物を詰めてマジックバックに放り込むと……

 再びアリシアを押し倒して令嬢強姦プレイを楽しんだ。


 アリシアもまたノリが良かった。

 悪徳領主に借金のカタに利息の支払いという名目で、無理矢理身体を奪われる令嬢の役を演じきっていた。


 感じている様子までが演技かどうかは、本人にしかわからないが。


 伯爵に命じられて様子を見に来た執事とメイドの二人は、呆れた顔をしてそのまま扉を閉めて何も見なかった事にしたとか。


――――――――――――――――――――――――――――


 後書きです。

 ユータ、段々うまくいかなくなっていきます。

 レティシア、勝手に偉くなっていきます。

 スローライフ?

 時間がゆっくりと遅い人生。

 

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