第14話 私がギルドマスター、レイコ・ヤソジマであるっ

 「確かに確認致しました。」

 受付嬢カルナは討伐証明であるエルダートレントの魔石と枝木を確認していた。


 「それと生存者と遺体の件もありがとうございました。後程確認して遺族が引き取れるように致します。」

 他の職員が後続のメロン馬車を確認に行っている。

 まだ目覚めぬ生存者も数人いるため、その後の処置も含めてレティシア達はギルドに丸投げする事にした。

 決して面倒だからではない、断じてない。


 「それと皆さん、マスターから話があるそうなのでこのまま奥の執務室へお願いします。報酬もそちらでお渡しします。」


 疲れてるのにと思わなくもないけれど、面倒な処理は丸投げしたかった手前その要望に応える事にした。


 

☆ ☆ ☆


 そして執務室の中にはギルドマスターと先程の受付嬢カルナ、ユーフォリア以下3名が並んでいる。

 以下3名の中には金髪ツインテールのラッテも含まれていた。


 「私がギルドマスター、レイコ・ヤソジマであるっ。」

 豪快な挨拶とは裏腹に、スーツを綺麗に着こなした見目麗しい30代くらいの女性であった。

 

 「まずはエルダートレントの討伐及び生存者の救出、残念ながら帰らぬ人となった遺体の回収に感謝する。」


 自らが椅子に腰を掛けると、「まぁ座れ。」とレイコは4人を座るように促した。


 「じゃぁ遠慮なく。」

 ユーフォリアが座ると他の3人もそれに続く。ラッテだけは左右をきょろきょろと見渡し、自分も良いのだろうかと遠慮がちにではあった。

 受付嬢であるカルナだけはレイコの斜め後ろに直立している。


 「で?討伐の事だが、実際の所はそこの領主の娘がヤったんだろ?悪・即・殴の血がぷんぷんしやがるぜ?」

 レティシアの甘い考えは、ギルドマスターには見透かされていた。

 天職のおかげか、何かマジックアイテムでも持っているのか、それとも勘か。

 

 「まぁ細かい事は良い。貴族と敵対する事は面倒だから元より領主とは話がついている、特例だ。その代わり何があってもギルドは責任を負わない事になっているがな。」

 領主とギルドマスターの間で話し合いは過去に済んでいたのだが、レティシアはそれを知らない。

 法に触れない限りは、余程の事がなければ娘のやろうとしている事に関して見逃して欲しいと。

 また、その際全ては自己責任であるため、ギルドに責は問わないと約束を交わしていた。


 「話を続けるが、先程職員から報告があったが生存者も遺体も綺麗だと言う。これは聖女様の力だろう?それだけでも充分助かってるのは事実だ。」

 確かにあのままの姿の遺体では遺族もいたたまれないだろう。

 遺族からすれば、遺体が戻って来るだけでも救いではあるだろうけど、出来る事なら綺麗な状態の方が良いに決まっている。


 生存者にしても、身体の大事な所を貫かれたという事実は拭えず、今後の生き方に関わって来る。

 残念ながら復元では身体は戻せても心までは戻せないようで、恐怖や屈辱などは拭えない。

 今後どうするかはギルド側も出来るだけのケアはするつもりだが、結果的には各々の心の持ちようとなってくる。


 「これは報酬だ。イロはつけておいた。下品な話になってしまうが、金で解決とはいえ、冒険者達を綺麗な状態にしてくれたおかげで助かっているからな。」

 ユーフォリアには金貨1000枚、レティシアとユーリにはセットではあるが金貨150枚が支払われた。

 生存者は5名、遺体は8名分。そこに身体の復元料という形だ。



 「それと、今回の働きを以って、レティシアとユーリはBランクに昇格だ。異論は受けつけない。」

 ギルドマスターとしては、実力のあるものはある程度の人間性は考慮しつつも、ランクをバンバン上げて行きたいスタイルであった。

 低ランクで燻っていられても一般に暮らしている人達のためにならない。

 ギルドの仕事は何でも屋的なものが多いけれど、そこに住む住人達にとっては欠かせない存在である。

 

 本来実力のあるレティシア達は、それに見合ったランクでもっと仕事をしてもらいたいというギルドマスターの思惑があった。

  

☆ ☆ ☆


 レティシアとユーリは、カルナから新しいギルドカードを受け取り退出する。

 今日はもう疲れたし寝たいと思っているレティシアは、ギルドを出たところで解散する旨を切り出した。


 「今日は色々ありましたし、これで解散でよろしいかしら。」


 「そうだな。私はもう暫くこの街にるいるから何かあったらその時はよろしく。今日の事は楽しかったよ。」


 ユーフォリアはそう言って右手を差し出す。

 レティシアはその手を取り「私も。」と手を握った。


 「っ」

 バチっと脳内で何かがはじけたような気がするレティシアだったが、ユーリ達周囲の人には異変を感じ取られてはいない。

 レティシアだけが感じ取っていた。


 「ハル……カ?」

 レティシアが漏らしたその言葉は何だったのか、レティシア自身にも良くわかってはいない。


 (何かが流れてきた?握手する事で?そんな能力なんてなかったのに。)


 続いてユーリ、ラッテとユーフォリアは挨拶を済ませる。


 「ではごきげんよう。」

 ユーフォリアはそういってその場を離れて行こうとして戻ってきた。


 「忘れるところだった。残りの高級メロン!」


 右手を差し出すユーフォリアに、レティシアは残りのメロンを手渡した。

 そして今度こそ3人の前から立ち去っていく。


 


 「しょうがない、今日はウチ来る?」

 レティシアが一向に離れようとしないラッテの様子を見かねて、今晩の宿として家に誘った。


 「イクイク~!」

 ラッテは満面の笑みで快諾していた。

 飛び跳ねて喜ぶものだから、ツインテールが顔に当たってるんだけど、と言えない隣のユーリだった。



――――――――――――――――――――――――――

 後書きです。


 そろそろ工房出来ます。師匠は仕事が早いのです。

 最初に作るものは……ナニでしょう。

 えっちなものではありません。

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