episode4 カップメンとゲーム

 柚凪がオレの服をきて洗面所から戻ってきた。

「ど、どぉ?似合う?」

柚凪は灰色のダボダボの寝間着の裾を手で持ちながら聞いてきた。

「そんな服、似合うもなにもないでしょう」

「あっそ」

「それより、お腹空いてません?よかったらこの中から選んでください」

 そう言い、オレはテーブルに置いたカップヌードルを指さした。

テーブルにはシーフード、しょうゆ、カレー味の3種類が並んである。

「う〜ん、これにしようかな」

 柚凪はシーフードを手に取った。

 さすがに晩飯あんぱんだけだと足りないよな。

「じゃあオレはこれで」

オレはカレー味を手に取った。

「じゃあお湯を入れてきますね」

「うん、ありがと」

 柚凪からカップメンを受け取りキッチンにお湯を注ぎにいった。


3分後。

「そろそろいいですかね」

「たぶんね」

「じゃあ食べますか」

 オレが「いただきます」と言うと柚凪も小さく「いただきます」と言いずるずるとカップメンを食べ始めた。

「ねぇ、翔、あんたいつもこんな夜ご飯なの?」

「ええ、まあだいたいそうですかね、あとはレトルトの牛丼とか中華丼とかそんな感じです。」

「まあ、私も同じようなもんなんだけどさ、なんか味気なくない?」

「あー確かにそうですね」

「せっかくだからさ、これからは私が作ってあげようか」

「え?」

「だって、明日からも翔の家来ていいんでしょ?」

「それは、まあ」

「だったら、それくらいさせてよ。

 私これでも腕には自信があるんだ。」

「へぇー意外ですね」

「意外ってなによ!失礼ね!」

「あはは、ごめんなさい、ではお言葉に甘えさせていただきます。」

「ええ!おっけいよ!」

 柚凪は胸に手をとんっとやり、任せなさいという感じだった。

それから二人でもくもくとラーメンを啜った。


─────


「ふぅー、お腹いっぱいね」

ふたり、ほぼ同時にカップメンを食べ終わり、そのままソファーにもたれかかった。

「はい、お腹もいっぱいになったことですし、相手になってもらいますよ?」

そう言うと柚凪はオロオロと座ったまま後ろへと下がっていき怪訝そうな表情を見せた。

「あ、相手って、、やっぱあんた、するつもりなの」

「ええ、そりゃもちろん。一人でもできるにはできるんですが、やっぱ二人の方が楽しいですので。」

すると柚凪の目が汚物を見るような目へと変化した。

「う、うわー!変態よ!変態がここにいるぅ!でも、ほんとに待って、まだ心の準備が、ハァ、ハァ」

謎に罵詈雑言を浴びせられ、謎に息切れをしている。

「変態?さっきからなにを言ってるんですか?」

「あ、あんたは、ナニをするつもりなのよ!」

「なにってそりゃゲームですけど」

「げ、ゲーム……?」

「はい、いつもはオンラインで対戦とかしたりしているんですけど、やっぱリアルで人とやる方がおもしろいじゃないですか。

盛り上がりますし。」

「あ、あぁそう……ゲーム、、」

 柚凪はストンと肩を落とし、安堵の表情を浮かべた。

「嫌、でしたか?」

「ううんっ、やりましょゲーム!」

「はい!ちょっと待っててください」


 そしてオレはテレビ台の下に収納されてあるゲーム機(Sw○tch)と数本のゲームカセットを取り出した。

オレはそれをテーブルに並べどれがいいですか?と聞くと柚凪は無難にマリ○カートを指さした。

確かに、二人で盛り上がれそうなのはこれくらいしかないしな。

他はほとんどがロールプレイングとかだし。

やり方を知ってるかと聞くとバカにしないでよと怒られ、そのままゲームは始まった。


 3、2、1、GO!!

の合図とともに一斉にカートが走り出した。

オレはク○パ、柚凪はピ○チ姫。

なんとも対照的な人選となった。

まあ、ク○パは人ではないけどな。

「あぁ〜もう、ミスったっ」

 オレは順調なスタートをきったが柚凪はスタートの位置で黒い煙をふかしながら、止まっていた。

最初にアクセルをずっと踏んでたのか。

「なにをやってるんですか」

「う、うるさい!これから本気だすのよ!」

「はい、頑張ってください」

 とはいえ、明らかな差がつくのも面白くないので、オレはわざとバナナでコケたりして柚凪のカートと均衡状態へともっていくようにした。

「へ!ざまあみろ!」

 柚凪の放った甲羅がオレのカートに激突し、グルルんとカートが回転した。

「ふっ、そろそろオレも本気だしますか」

「かかってきなさい!」


 コースは4周目に突入し、ゴールは残り僅かというところまできた。

現在一位はオレ。二位は柚凪だ。

 一応十二位まであるが、他は全部機会、いわゆるbotなので相手にもならない。

 そして、オレは激戦を征し、見事一位でゴールした。

かなり危なかった、あと一ミリ差といったところだっただろうか。

「うぅ〜悔しい!もう一回!!」

「次は勝てるといいですね」


 その後オレたちは6回ほどレースを繰り返し、最終的な結果は4対2でオレの勝ち越しとなった。

 一本は結構ガチで負けて、もう一本は情けで負けてあげた感じたが。

「う〜〜ん、疲れた〜」

 そう言い、柚凪は背伸びをした。

 時刻を見てみると、深夜の12時半を回っていた。

 そろそろ家の鍵も開いてるんじゃないだろうか。

そんな事を考えていると───

「わ」

 膝辺りになにかがのしかかった。見てみると柚凪が頭をのせて寝ていた。

いや、寝ているのかはよく分からない。

うっすら、目が開いているようにも見える。

「柚凪、こんなところで寝ないでください。

ほら、そろそろ帰らないと。」

そう言い、オレは肩をゆすった。

「帰りたくない、今日はここで寝る」

そう、小さな声で呟いた。

「えぇ、でも朝には父さんも帰ってきちゃいますし、いろいろとまずいですよ。

それにさすがに柚凪のお父さんも心配しますよ。」

「あいつはしないよ。心配なんか。」

 そう言い柚凪はオレの膝に顔をうずめた。

 オレの鼻腔に柚凪の優しい匂いが入ってくる。アロマとかなんだろうか、口では言い表せないような甘く、とろけるような匂い。

うちのジャンプーはこんな匂いだったっけか。

 いやいや、そんなことはどうでもいい。

 さて、どうするか。

 無理やり連れて帰るしかないのか。

 でもオレ柚凪の家知らないし。

 ほんとにどうすればいいんだ。

 






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