お泊まり


「どうぞ…こんなんで悪いけど」


前にも作ったことあったけど、あれから少しは練習して人に出せるくらいにはなった。


「あれ、何かうまくなってませんか?」

「やっぱ分かるか。まぁ…ちょっとはな。食べてもらいたいしどうせなら良いもん食わせたいだろ…」

「僕のために頑張ってくれるんですね…嬉しいです」


頑張って良かった…。喜んでくれるならなんでもしてやりたくなるな。


「改めて言われると恥ずかしいな。ほら、いいから食えよ」

「はい。いただきます」


あ、箸の持ち方、綺麗。親の教えが良かったとか。あぁ、でも兄の方は綺麗じゃなかったな?


「おいしい…すごくおいしいです!」

「おお、それは良かった。作りがいがあるわ」


食い方も綺麗なんだよな。しかも、ちょっとエロい…いや、エロいって何だよ。


「そ、そうだ、今度どっか出かけね?」

「デートですか?」

「でッ…デート、うん、デート…行きたいとこあったら行こう」


とっさに言ってしまったが、正解かも。

 デートあんましたことないしな。


「真琴さんの行きたいとこ行きましょ?僕、知りたいです。真琴さんがよく行くお店とか

「そ、そうか!?じゃ、そうするか」


か、会話!終わるの早!もう話すことねぇ…もっと三春と話したいのに、話題ってすぐ出てくるもんじゃねぇな…。


「ふっ」

「え、なに?」

「あ、いえ、可愛いなって思ったんです。そんな無理に会話を続けようなんてしなくていいんですよ。一緒にいるだけで楽しいです。真琴さんは違いますか?」


俺は、やっぱりバカだ。そんなことも気づかないなんて。


「…いや、違わない。でも、もっと話をしたいって思ってさ…」

「ゆっくり聞かせてください。まだまだこれからがあるんです。ね?」

「あー!俺、ほんとバカ!情けねぇ…三春は大人だな」

「そんなことないです…僕も追いつこうと必死なんです…」

「三春…」


そりゃ、そうか。やっぱ、年の差あると気になるよな。


「あっ!」


三春の思い出したように声をあげる。

 急だったので肩を揺らすほど驚く。


「な、なんだ?」

「真琴さんの親って今日は…」


あー。すっかり忘れてた。

 俺はケータイを取り出す。


「今日、母さん、帰ってこないから大丈夫。何かあれば兄貴に頼ればいいから気にするな」

「お兄さんいるんですね?」

「そう。なぜか、俺の学校で先生やってんの。絶対わざと。他のとこ行けば良かったのにさ。俺は身内と学校で顔合わすの嫌なのに」


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友達の家に行ったら弟に懐かれました 蒼井和希/あおい和希 @tobiokise

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