M家のギャグ談義

「さんみつ? 三ツ矢サイダー、ミツカン酢、三井銀行か…」

 と、私がギャグると、妻と長男と次男は超マジな顔をした。

「父さん、父さんともあろう人が、そんな不完全なギャグを言うなんてがっかりだよ。三井銀行は金融企業、三ツ矢サイダーとミツカン酢は食品じゃないか」

 と、長男が先ず私のギャグの不備をついた。

「そうだね。“三井銀行”を食品に変えるべきだよ。それならギャグ的整合性がとれる」と、次男。

「そうね。ただ、三ツ矢サイダーもミツカン酢も液体だから、三井銀行と代替だいたいする食品は液体じゃないと単語並列型ギャグに必要な統一性がないわ」

 妻が次男の意見を補足した。

「なら、蜂蜜はどうかなぁ。三ツ矢サイダーは清涼飲料水で、同じ液体でもミツカン酢は調味料だから、飲料水でも調味料でもない蜂蜜なら単語並列型ギャグのもう一つの条件である各単語の意味的多様性もクリアできるし」

 長男が反故紙ほごしをテーブルに広げ、その上に図を描きながら言った。

「三ツ矢サイダーもミツカン酢も“ミツ”が頭についているわ。でも蜂蜜は…」

 細かいことにこだわる妻が承服できないといった顔をした。

「それなら、ミツ豆はどうだろう」

「みつ豆ねえ。液体食品というカテゴリーには入らないんじゃない? いっそのこと、ミツカン酢をミツワ石鹼にしたらどうかしら」

「母さん、三ツ矢サイダーとミツワ石鹼は家庭用消耗品のカテゴリーじゃないか。それだと、三井銀行がウいちゃうよ」

………

 三人の議論は一時間に及び、私は眠気を抑えきれず、コックリとしてしまった。

「父さん! 父さんのギャグについて大事な話をしているんだよ。何でネるんだよ。無責任だなぁ」

 長男がキれた。

 我が家は平和で、我々はおバ家族である。

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