第4話 密室②
密室。吉良が自分の場所にある壱の箱を開けている。
中からスマートフォンと紙を取り出す吉良。
吉良「これ……」
平 「電話じゃないか!助け呼べるんじゃないか?」
吉良「待って下さい……。ダメです。なんか1つだけ番号が登録されてて、そこにしか電話できないみたい」
根間「ネットとか、メールとかできないの?」
吉良「……無理かも」
根間「貸して!」
スマートフォンを受け取って、操作してみる根間。
根間「ああ、ほんとだ。駄目だ」
矢内「紙は?なんて書いてあるの?」
吉良、紙片を開いて読む。
吉良「『壱ノ犠牲 吉良小百合 愛ヲ捧ゲヨ』って……」
平 「愛を捧げよって、……なにすりゃいいんだ?」
矢内「電話が一緒に入ってたんですから、それを使ってなにかするんでしょう」
根間「……愛を捧げるってくらいだから、コクるとか?」
首を撫でたあと、吉良に質問する麻生。
麻生「登録されてる電話番号には心当たりはないんですか?」
電話番号を眺める吉良。
吉良「ありません……というか、分かりません。もし私の携帯に登録してある番号でも、普段気にすることもないし……」
平 「とにかく、電話をかけてみるしか無いんじゃないか」
根間「ついでにさ、助けてってお願いもしてみたら?」
矢内「相手は犯人の一味かもしれないし、犯人から与えられた携帯じゃないか。さっきの件もあるし、イレギュラーな行動はなるべく避けたほうがいいと思うが」
吉良「……私もそう思います」
根間「そっか……」
吉良「とにかく電話、してみます」
麻生「お願いします」
吉良、電話をかける。スピーカーから呼び出し音が聞こえる。
平 「スピーカーモードになってるみたいだな」
吉良「設定変更もできないみたいです。皆さんにも聞いてもらうことになりますね」
相手が出る。女性の声。
五島『はい、五島です。……もしもし?』
思わず電話を切る吉良。
平 「どうした?」
吉良「ごめんなさい。びっくりしちゃって」
矢内「知ってる人だったのかい?」
吉良「ええ、でも向こうは知らないと思います。愛を捧げるって意味も、分かりました」
根間「どういうこと?」
吉良「……私、不倫してるんです。通ってる大学の教授と。今のは、相手の奥さんです」
驚く一同。
矢内「へ、へえ~。そうなんだ……」
吉良「でも、奥さんと離婚の話し合いが付いたら、結婚をすると言ってくれているんです」
麻生「じゃあ、愛を犠牲に捧げるっていうのは……」
吉良「多分……奥さんに、私と彼との関係を話せって事だと思います」
根間「つまり、彼氏との愛を犠牲にする……ってこと?」
吉良「ええ、多分」
平 「……すまないが、時間がない。そう思うんならやってみてくれ」
矢内「平さん、いくらなんでもそんな言い方は……」
平 「五人の命がかかってるんだぞ。大体、不倫関係なんて遅かれ早かれ精算しなきゃならないものじゃないか」
矢内「だけど……」
吉良「いえ、平さんのおっしゃるとおりです。……やります」
再び電話をかける吉良。
五島『五島です』
吉良「……もしもし」
五島『いったい何なの?話したいことがあるって手紙出してきたのはあなた?』
吉良「手紙……?いえ、あの、私、吉良小百合といいます」
五島『キラサユリさん?……どちらのキラさん?』
吉良「私、あなたの夫である瞬さんとお付き合いをしています」
五島『お付き合いって……あなた……もしかしてあの人の教え子?』
吉良「はい……」
五島『また……今度という今度は絶対にゆるさないわ……』
吉良「また?」
五島『どうせ結婚しようとか言われたんでしょ?』
吉良「……」
五島『お気の毒様。あの人にその気はまったく無いから』
吉良「でも……」
五島『いい?私はあの人が勤めてる大学の理事長の娘なの。私と別れるようなことがあれば、大学を追い出されるのは目に見えてるわ。他の大学への根回しもして、研究を続けることもままならなくなるでしょうね。そんな状況にあの人がなりたがるとでも?あの研究の虫が?』
吉良「……」
五島『とにかく、あの人に確認してから、あなたには改めて連絡させてもらいますから』
電話が切られる。続いて『ガチャ』とどこかで鍵が開いたような音が聞こえる。
座り込んで顔を両手で覆う吉良。
吉良「馬ッ鹿みたい。何が愛を捧げろよ。そんなもの、最初っから無かったんじゃない!」
静かに泣いている吉良。他のメンバーは黙りこんで、吉良の姿を見ている。
爆弾のカウントダウンは刻一刻と進んでいる。
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