2人が帰った後、夕飯まで1時間。

俺は朝天造に話を聞くこととなった。

「おじいちゃんの日記ってそんなに量があるのか?」

「わかんないけど、達筆過ぎて読めなかったり、わからないことがあったりして」

ふー―っとため息をついて机の下に置いてある日記とやらを見てみるが、机の下の暗い空間にぎっしりに3段ほどになって積みかなさっている。

「どこでみつけたんだ?」

「うち、去年リフォームしたじゃない」

俺たちが生まれたくらいに隣の駅から引っ越して来たらしいので、15年経ったということで、きれい好きの母親が倉庫がサビたなどいいだし、材質を変えて広くしたりついでに壁を塗り直したりしたのだ。

「そのときにね、私が手伝ったとこにあったの…なんとなく戻さないで机の下にいれたまんまにしてて」

確かに去年、1週間ほど一旦倉庫に入っていたものの一部を2人の部屋で預かったりした。その中にあったのだろう。

「受験でそのままになってたけど入学してから読み出したの」

「なるほどな」

「で、わかったことおじいちゃんの時代には軍事利用しようとそういう特殊な能力を持ってる人たちは施設に集められたらしいの」

「なるほど…」

俺たちの世代に戦争の話はほとんどでてこない。が、祖父がこどもの時代はドンパチやってたはずだ。

「集めた能力者はいろいろいて、うちみたいな吸血鬼とか、狼男とか。特殊能力持っている家とか。血が残っている場合は注射されたりね」

「ふーむ」

そもそもうちは二代前といえばおじいちゃん(父方か母方かもそういえば知らない)だけしか知らず、他に3人いるはずの祖父祖母の話さえ母の口からはでてこない。父親も倒れる前にほんの少ししてくれたくらいだ


俺はどうなってしまうのだろう……。

「ちなみに私たち兄妹3人はおじいちゃんの血を注射されてるわよ」

「え!?」

「今はふたりとも体強いけど、こどもの頃は弱かったんだって」

「おじいちゃんのおかげか」

「兄ぃは素養があるかもしれない、って書いてあった。射躯羽はサキュバスになったと書かれてた。これも便宜上の呼び方みたいだけど吸血鬼(ヴァンパイアという呼び方が面倒になったのかいつの間にか吸血鬼で定着している)と親(ちか)しい生き物みたい」

だから…あんなに射躯羽ねぇの娘は血を引いてエロかったのか?

射躯羽ねぇの乳がでかいのもサキュバスになったからか?

「朝天造は?」


朝天造がカーっと赤くなる。

「天使……」

「はあ!?天使なんているのか!?」

「わかんない……ただおじいちゃんの本に、朝天造に血を与えたら天使になった、と書かれているのよ!天使ってなんなの…わかんないわよ!どこにも書いてない」

朝天造は続ける

「私目黄色いしなにか変化があったのかもしれないんだけど…」


そのあと大げさに朝天造はしっと声を潜めた。

「兄ぃ、大変なのよ、実はそうやって祖父の時代に打たれた血が現在そうやって発動しつつあるの、そして人間でなくなれば死んでもいい…そんなトーナメントショーをやるって噂が流れているのよ」

「なんだそれは」

「私先週友達とデズニ-ランド行ったでしょ?」

「ああ」

6月は千葉県民の日があるだけでなくデズニーランドの入場料が安いのだ。東京と冠してはいるがやはりあれは千葉のものなのだ。


「ネズミが教えてくれたの。ここより儲かる場所が近くにできるぞ…ってね」

「漫画の読みすぎじゃねえの?」

とはいえ、自分も吸血鬼になってしまったと言われたらさほど嘘とも思えないな、と

口にはしないが考え込んでいたら何も言えなくなってしまった。

朝天造もそれ以上の情報は持っていないようだった。


母から「夕飯できたわよー!」との呼び声があった。








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