第24話 秘石師
式典の2日後、王宮に呼ばれた直人とモニカ。王の間で膝をつき叩頭する。玉座に座っているジュリアス王が直人の功績を労った。
「聖剣デュランダルの復元、大義であった。そなたには恩賞と新たな
「新たな
王の権限の一つに
「秘石を読み解き、そのあり方を正しく管理する者。
『秘石師』の職にナオトを任命する!」
新たな
王都の一画に秘石師の事務所を振り分けられた直人。細長い建物一棟が『秘石師』の事務所となった。持ちビルとか、本当に社長になったみたい。建物に入って最初にする事は掃除だ。放置されていた間の埃や塵を拭いたり、掃いたりしていたら清掃屋が訪ねてきた。どうやら、王が手配していたらしい。プロの方のお仕事を横取りしてしまっていた。
2階から上の清掃を頼んで彼らを建物に入れると、今度は大工がやって来た。部屋に必要な家具を仕立てに来たらしい。内装工事もやるのか。家具のカタログ的な冊子を見て本棚と机を選んだが、ワーキングチェアは気に入る物がなかった。直人は絵を描いて回転式のソファー椅子を作れないか聞いてみると、棟梁は眉がくっつきそうなほど険しい顔をした。
ワーキングチェアは諦めようと思っていたが、なんとイメージ通りの椅子を本当に作ってきてくれた。羽毛の入った革貼りの座椅子にローラーの付いた脚。上部もちゃんと回転した!すげえ!異世界職人やるな!こんなに頑張ってもらって、後で高額な請求が来ないかな?
そういえば、『秘石師』の給料はどうなるんだろう?歩合なのか?リナに確認したところ、国務をしていたり、国に必要な
さて、掃除もして内装整備もして一番重要な作業に取り掛かる。秘石の書き込みだ。
新しい
管理者の存在を認識しつつも、ある事実に気付いた。その管理者がプログラミングできない今、自分がやるしかないという事か!
「……ってことはスキルや設定は俺が考えていいってこと!」
これはテン上げだろ!元の世界にいた時も自分で好きなプログラミングをする事はまずなかった。ゲーム会社にいた時はチームリーダーの決めた筋書きにプログラムを組んでたし、フリーランスの時なんてクライアントありきの仕事だ。
秘石に何を刻み、どんな能力を組み込むかは直人に主導権がある。しかも、それが現実で使えるんだぞ!ヤバいヤバい!興奮してきた!
「ええ!何がいいかな!まずは『
ああ!もっと色んな職業の秘石を見て、良いもの取り入れたいな!」
自分でどんなプログラミングをしようか考えていると、モニカがふっと笑った。
「なに?」
「いえ、ナオトがとても楽しそうだったので!出会ってからずっと眉間に皺を寄せて考え込んでばかりでしたから……」
確かにそうだ。異世界転移してから、とにかく多忙だったし翻弄されてばかりだった。元の世界にいた時のより波瀾万丈な日常だ。
「でも、今のナオトはきらきらしてます!最初に会った時よりもずっと!」
モニカの言う通り、異世界転移した時も胸踊らせていた自分がいる。新しい世界、新しい自分が待っていると思っていたが、異世界に来てもやってる事は変わらなく、仕事の日々だった。最強にもなれないし、スローライフを送れる訳でもない。
何ともおかしな異世界転移だ。
「そうだな。結局俺は魔術も使えないし、剣術もできない。でも、俺には『プログラミング(これ)』が合ってるのかもな……」
直人は秘石を触る。この秘石に何を刻もうか、夢が膨らむ。
数日後に、秘石師の制服が届いた。縫製師に採寸をしてもらい、直人に合った服に袖を通した。白いシャツにモスグリーンのベスト。靴も歩きやすい皮製のものだった。着心地に問題なかったので、縫製師にお礼を言うと着替えたモニカが部屋に入ってきた。直人が着ているのと同じ色のベストにスカートみたいなズボン。あれ、何ていうんだっけ?ワイドパンツ?(ガウチョパンツ)。魔女っ子姿じゃなくなったモニカを直人はまじまじ見つめた。
「なんか、とんがり帽がないと変だな」
「私もまだ、帽子がないのに慣れません」
「本当にいいのか?『市井魔術師』を辞めちゃって……」
「はい!ナオト一人だけでは大変だと思いますので、お手伝いします!」
秘石師として身なりも整えた所で、秘石室の作業を仕上げる事にした。秘石に職業、地位、使用者への付与、スキル等のコードを刻む。部屋の半分も埋まってないが、必要な物があれば付け足していけばいい。
「
モニカが全てのコードを刻み込んだ。
{
job:"cord carver",
user:"naoto"
}
これで直人もスキルが使えるようになった。早速試してみようと、石灰で作ったチョークを取りだし、その下にスペルを書き始めた。スキルを掛ける物の指定を『チョーク』していれば、これでも『
「
秘石に文字が刻まれる。『subuser:"monica"』秘石師見習いのなったモニカと顔を見合わせて、満足感に微笑んだ。
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