第17話 挫折(モニカ)

「モニカは何になるか決めたかしら……」


「うん!『しせいまじゅつし』になる!」


「そうか、大変だと思うが頑張れるか?」


「うん!まちの人の役にたてるようにがんばる!」


 両親は私の頭を撫でて将来の夢を応援してくれた。10歳の時に市井魔術師に弟子入りして、魔術を学び始めた。魔術の訓練はとても疲れるし、薬草の扱いや相手の症状を見極めるのには苦労した。

 魔術は万能ではない。『治癒ヒール』では大病は治せないし、できる事とできない事がある。だから、できる範囲で最大限の魔術を人々のために使いなさい、というのが師の教えだった。

 その言葉を胸に、なんとか一人前の市井魔術師になり街の人のために働き始めた。


 そんな時、飛竜がマルク村に出現したと知らせが入った。飛竜を退治するまでは絶対に行ってはいけないと触れが出されて、眠れぬ日々を過ごした。飛竜は討伐され両親とも再会できたが、村はひどいあり様だった。友達と追い駆けっこした麦畑は地面が抉られ、いつも果物をおまけしてくれた店や自分が通っていた学校は瓦礫となっていた。

 そして、村の防壁シールドは壊されたまま戻らないそうだ。大聖堂の祈祷でも修復されず、王政府は正式に『廃村』を決定した。


 こんな無惨な姿のまま村は見捨てられてしまうの?

 どうして防壁シールドは直らないの?

 諦めるしかないの?






 最近、また使えない魔術が出てくるようになった。依頼を断った時の残念そうな顔を見ると心が苦しい。そんな時にナオトに出会った。

 ドアを開けたら彼が倒れていたのには驚いたが、何かの病気などではなくて安心した。記憶がないらしく仕事も家も覚えてないと言っていた。行く当てがないならと家に置いていたら、ナオトが秘石室に侵入していた。秘石の文字を『プログラム』と呼び、書き換えを頼んでくる。恐る恐る魔術でスペルを刻むと、本当に……魔術が使えるようになっていた。


「おお!上手くいったな!やっぱスペルがバグってただけなんだな!」


 彼は自分がしたことがどれ程の偉業なのか気づいていない。彼にとってそれは仕事の一部なのだろう。けれど、ナオトなら秘石を直せる!私は彼に懇願してマルク村の秘石を見てもらった。最初は難色を示していたし、数字を書き込んでは頭を悩ませ苛立っていた。

 私は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。ナオトにとって、これは義務でも仕事でもない。私の我が儘をナオトに無理強いしている。


 それでも、ナオトは投げ出さずに作業を続けてくれ、そして私は目の当たりにした。教会も国も匙を投げた故郷の防壁シールドが再び村を覆う瞬間を……。私の故郷をナオトは取り戻してくれた。


 だからこそ、ナオトの力になりたい。ナオトが必要と考えているから、旧魔王城ここに来たのだ。なら、なんとしても魔王の秘石にたどり着かないと…。

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