12 光剣:Damaging Optical Saber
「なんで陣笠の旦那を探してンだ? あんた、スピンドルから来ておいて、あの流星騒ぎと無関係ってことはないンだろ?」
それらに「心配するな」とショート・メッセージを送りながら、
「陣笠の旦那?」
「
「随分と有名なのね」
「八区の界隈じゃ、知らンやつはモグリだな」
隣に座るストレンジレットの
時間が掛かっているようだ。
「それで、あいつに何の用だ?」
間を繋ぐのに、
「キミの予想通り、流星の件だよ」
「あいつと流星に何か関係があるンか?」
「こういう界隈だと、詮索屋は嫌われるのが常識だと思っていたけど?」
「お前さんに嫌われても、俺は困らねえよ」
再び、
「出ないね。寝てるんじゃないかな?」
「まあ会社員が、こんな時間に起きてはないわな」
「会社員? あのコが? それは本当なの?」
「待て待て、会社員といっても
「どこの?」
金にうるさい
「なんにせよ、朝までは陣笠の旦那も起きて来ねえ。出直してこい」
「ならここで待たせてもらう。後三十分もすれば日は昇るでしょう?」
手を振って追い返そうとするが、マキシはどこ吹く風で居座ろうとする。さっきからピリピリしている
「勘弁しろよ。お前みたいな可燃性の危険物、こンなとこに置いといたら、三十分もしない間に大惨事じゃねえか」
そう言って
「
「あいよ。気を付けて」
ストレンジレットの
サングラスの位置を直し、カツカツと踵を鳴らして店の奥にあるエレベーターへと歩き出す。
「マキシ……つったか、こっちだ」
先にエレベーターに乗ると、大人しくマキシが続く。サイボーグの彼女が乗ると、もっと揺れるかと思ったが、重さを感じさせることなく彼女はエレベーターに乗り込んだ。
「四十五口径を弾くような装甲のわりに、軽いンだな」
「エレベーターに乗れないような重さだと、耐久性にも剛性にも支障がでるでしょうが……
「それでも、その体躯で二百キロもあるンか」
「
「タッパがこれだと、重いのか軽いのか、いまいちピンと来ねえな」
胸の前で掌を水平にして見せて言う。
長身の
とはいえ彼女の身体には、知る限りでも
二百キロ程度の重量というのは本当のようで、年季の入ったビルのエレベーターはスムーズに上へと昇っている。
「ついでに聞いてもいいか?」
「なに?」
「あんた、生身の頃も、そんな風貌だったンか?」
「な……あー……どうしてそんなことを?」
だが、マキシは意外に動揺した反応を見せた。
「ただの好奇心だ。あんたの言動や殺気は、どうみてもティーンエイジャーの姿形と噛み合わンからな」
「……なるほど」
「何が、なるほど、なンだ?」
「いや、こっちの話」
そうこうしている内に、エレベーターはバー“ストレンジレット”が入っているビルの屋上に到着した。
屋上にはあまり使われていないエア・ビークルの着陸パッドと、ベンチに自動販売機、それに手入れの行き届いた花壇があった。
正面には一区や七区の、天を突くようなビル街が広がっている。
夜通し輝いているビルの電飾が消え初め、東の空はそろそろ白み始めていた。
「これがニュートウキョウ……まるで塔の街……どうしてヒトはいつまでも、地上で重力に抗おうとするのかしらね」
「あれがバベルの塔なら、さっさと崩れてほしいもンだ――コーヒーで良いか?」
はじめて見る光景なのだろう。出てきたばかりの田舎者のように、
「ありがと」
缶を開ける音と鳥の声だけが流れる中、静かに夜が明けていく。
「さてと……」
しばらくの静寂の後、“ヴンッ”と、
ガジェットの名は、
センサ・ネットの技術で造られたバーナーの刀。
反りも刃文もないが、切れ味に遜色はない。
「お前の見せた
「
すこし嬉しそうにマキシがそういうと、左腕の袖から、鎌のような逆反りの刃を持った
「
「銃はどうも性に合わないンでな」
朝日が反射して、朝比奈の顔に掛かった瞬間、マキシが飛んだ。
伸ばした銀の腕、前腕側面から生えた
それを
――ギィン! と、一合。
再び二人は距離を取る。
刃ではなく、噴出するバーナーなのだ。
それが弾かれた。
「どういう理屈なンだ?」
「
そう言ってマキシは、
「
「……なるほど?」
蒼いバーナーのような刃を覆うように、幾何学模様と文字列が浮かぶ。
「で、ちょっと待ってもらえるかな?」
「命乞いするようなタマじゃねえだろ?」
「いや、一応聞きたいことがあって」
「なンだ?」
「ボクは、なんで
それで
「人聞きの悪い言い方をしなさンな。屋上だからって、障子に耳が付いてねえとは限らンのだぞ」
ずり落ちたサングラスを戻しつつ、
「大体、襲ってきたのはそ……」
そこまで喋って、
店の扉で問答になって、扉は破壊されたが、
店の中で銃を抜いたのはトバ組の方。
そして今も、先に
「――それも、そうか」
頭を掻いて
よくよく考えれば、こいつは
まあ繋ぎもなしに、
「それで、
話が通じたと思ったのか、マキシが改めて言う。
――お前さんが言うと、どうも脅しか喧嘩売ってるようにしか聞こえねえンだよ
そう心の中で零しながら、
「
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