第18話 腐女子と腐女子 ACT  4

「大分混乱しているようですね。先輩」

混乱。これがしない方がおかしい。


いきなりこんな展開になるなんて、誰が想像するか!

「ちょっと待ってよ、私と希美の関係って、私たちは。ただの仲のいい友達なんだから」


「いいんですよ、別にこのことは口外はしません。ですから、私もお二人の間に混ぜてほしんです。躰だけの関係でいいんですよ」

「あなた一体何者なの?」


「やだなぁ、ただの可愛い後輩ですよ。せ・ん・ぱ・い」


先輩って……。

うるうるとした眼差しを私に投げかけながら、躰が動き始めた。


手が、胸に触れる。……そっと押し込んでくる。

「先輩、いいにおいがする。甘い匂いがします」

首筋に唇の柔らかさを感じる。


「あっ……」そこ、弱い。希美にいつも始めに責められる所。この子、そこまで知ってる? どうして、私の弱いところを全て知っているかのような、この子の攻め方。


「気持ちよくなって来たでしょ先輩。先輩の事はよく知っているんです」

「駄目だよ。学校でなんて。保健室だよ、保健の先生来ちゃうんじゃない」

「来てもいいんです。あの人は何も言いませんよ」


「どうしてよ」

タイが外され、ブラウスのボタンが上から外されていく。

鎖骨に唇が触れる。


躰が次第に熱くなる。

「駄目だよこれ以上は」

「でも先輩の躰は求めて来ていますよ。温かいです。先輩の躰から熱を感じます」


その時、カチャっと音がしてスライドのドアが開いた。

ベッドのカーテンは開いたままだ。

私の目に入る白衣を纏った女性の姿。


保健の先生……。

その時私の躰は固まった。


「ふぅーん、なるほど鍵がかかっている訳だ」

「あ、あの……、これは……」


「チェ!」

「あ、ごめんねぇ驚かせちゃって」

ひょいと、私に覆いかぶさる彼女を、まるで猫でも掴み上げるかのように私の躰から離した。


「あんなぁマル。いい加減私の職場を荒らすのはやめてくれないかなぁ」

「別にぃ、荒らしてなんかいないですよ。私は森野先輩に介抱してもらっていただけなんですけど」


「介抱ねぇ、お前の場合介抱じゃなくて欲望を解放しているんじゃないのか?」

「どうしたんですか今日は? やけにつっかかりますねぇ。欲求不満ですか? あ、それともヤキモチとか?」

「はぁ、そうだな今日はどっちもだ。それに、生理で気分がすこぶる悪い」


「それだけですか? 今日は宮島先生お昼で帰っちゃったからじゃないですか?」

「うっ!」

「あ、何もすぐに返さないところを見ると、それが一番の原因のようですねぇ、尚子なおこねぇさん」


尚子ねぇさん? 


長崎尚子ながさきなおこ

養護教諭、つまりは保険室の先生だ。


で、この子が先生の事を、確かにねぇさんと呼んだ。て、いう事は先生の妹なの、この子は。

またまた状況が把握出来ない私、さっきから何がどうなっているのかさっぱり分からん。


「えっと。森野さんだったけ。ごめんねぇマルが変な事しちゃって。このことは……出来れば、御内密になにとぞお願いします」


「ええええッとええええええッと」

目を白黒させながら、あの見た目あああ、こういう人が美人だというお手本みたいな容姿の先生から頭を下げられると、どう言葉を返したらいいのか困ってしまう。


長崎尚子先生。男子の間では超が付くほど注目されている先生だ。

これだけの容姿であれば養護教諭なんて地味な仕事よりもモデルデビューした方が成功しそうな風貌だ。

あれ、こんな事思ったの、そう言えばみかんと出会った時同じ事思ったなぁ。


二人が並んでいるところを想像すると意外とお似合いなのかも……なんて思う自分が居るけど、なんかモヤモヤしちゃって、落ち着かなくなる。


「森野さん、森野さん。どうしちゃったの。だ、大丈夫?」

「……大丈夫です」


「ほら、マルも謝って。こんな事しちゃいけないでしょ。これじゃほんとレイプだわ」

レイプって、私襲われちゃったんだ。


「ご、ごめんなさい……先輩」

なんかとても素直な子だ。と言うよりも長野先生に頭が上がらないんだね。


「先生、お二人姉妹だったんですか?」

「ああ、この子私の事ねぇさんって呼ぶからね。でも本当の姉妹じゃないんだよ。私の実家と、マルちゃんの住んでるマンションお隣同士なんだ。だからこの子が生まれた時から、ずっと姉妹の様に育ってきたからね。それに今は一緒に住んでるから」


「一緒にですか?」

「そ、マルがこの高校に入学するからって、それなら一緒に住むことにしたの」


「そ、そうなんですか」

「あのね先輩、私先輩の事ずっと見ていたんですよ。この高校に入学した時からずっと。……先輩はたぶん覚えていないと思うんだけど、あの時、私を助けてくれた先輩が私は女神の様に見えたんです」


「助けたって? 何のこと?」

「やっぱり覚えてなんかいませんよね」


「そっかぁあの時のかぁ……」

長野先生がちょっと暗い表情で言う。


「な、何ですか? 私には全く身に覚えがないんですけど」


「あれは私がまだ入学して、すぐの事だったんです……」

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腐女子のりんごちゃん従兄のBL教師に恋をする。 さかき原枝都は(さかきはらえつは) @etukonyan

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