第9話 致命の誤解

「な、なんとか間に合った〜」

ゼーゼー息を切らしながら呟く時夜、それに対してすまし顔の神崎

(男と女、立場逆じゃね?)

一瞬自分が情けなくなったが、時夜も超新生異能者アノヴァリーの端くれなので常人に比べたらある方。しかし神崎は格が違う。彼女からしたらぶっちゃけ「なんか走るスピード、ナメクジから亀になってる!すごいね!」みたいな感じで差を感じないのだ。そんなこと考えるだけ無駄と思える。


「それで、他校の女子とどうやっていつからお友達になったのかしら?」

恐ろしい笑顔を浮かべ聞いてくる神崎。冷や汗を浮かばせる時夜

ちなみに件の四季葉は他校の生徒なので今はいない。


「つ、つい最近、迷子の俺を道案内してくれて、は、は、話があったから仲良くなったんだよ」

震えながら言い訳する俺。なんと情けないことか。


「へぇ〜仲良くなったねぇ〜、それでさ、確認なんだけど四季葉さんとは

やけに友達を強調してくる神崎、恐らく四季葉が彼女だったとしても俺は肯定しただろう。

「あ、アタ、当たり前……だろ?」

肯定したんだから神崎の詰問は終了すると思っていたら時夜に再度恐ろしい笑顔を形作って話してくる彼女


「おかしいなぁ〜じゃあ私は友達じゃないのかなぁ〜」

「いや、そ、その神崎さんは俺の友達デスヨ?」

「じゃあなんで四季葉さんは名前呼びなのに私は名字なのかなぁ〜四季葉さんより長い付き合いなのになぁ〜」

「え?いや、その雰囲気の違いといいますか、四季葉は親しみやすいけど、神崎さんはちょっと俺とは別の世界の人というか」

「名前で呼んでよ、私の方が少しだけど付き合い長い友達じゃん」

雷華は顔を下に向けて消え入りそうな声で呟いた。それを聞いた時夜は衝動的に了承してしまった。女の子に俯きながら頼まれてしまったら聞くしかない悲しい男の習性

「ーーーーーーわか、わかったからその………落ち込まないでくれよ」

「何がわかったのかな?時夜?」

見つめながら名前を呼んでくる神崎、鈍いとろい鈍臭いと評判の時夜にだってその意味くらいはわかる。

「わかったよ………ら…雷華」

「よろしい!」

さっきまでの落ち込み具合は演技と思えるほどいい笑顔で笑ってきた神崎……改め雷華

(これだから女は恐ろしい)

心の中で呟く時夜


(ってかこの態度俺のこと好きなんじゃね?!)

勘違いしても刻夜を責めることはできないだろう、人間なんてちょっとしたことで勘違いする生き物なのだから。

(やっぱ先に友達になったのに後に知り合った人間の方が仲良いってなんか悔しいからね!先に親友になるのは私だ!)

(よし、とりあえず黒マントどうにかしたら告白しよう、あの態度は絶対そうだって、リーチかかってるって、ライトノベル俺の経験則だと大体、「ば、馬鹿っ!言うのずっと待ってたんだから!お、遅いよ!」とかなんとかいうはずだし!)

(これで時夜は友達確定だな〜苗字呼びだと友達感ないからね!)

(ぐふふふ、俺の時代きたわこれ、もしかしたら四季葉の他にも可愛い美少女魔術師が出てきてハーレム展開も視野に……「女しか出てこないの〜?そしてほぼ全員主人公に惚れるとかあり得なくねぇ〜?」とかいうアホがいるが、馬鹿野郎、男出して何が楽しいんだよ?!主人公とイチャコラしないヒロインなんてヒロインじゃない!!俺はハーレム王になる!!破廉恥王ブレイブ・T・リトにどこまで近づけるか、「一掴みの大楽園ワンハーレム」をこの手にできるか、「偉大な修羅道オーガライン」を走破できるか、試してやる!!)

(ふふふ、ムッツリの時夜を落とした私に不可能はないな、私の時代だわ)

好かれてると勘違いする男。態度と顔面偏差値とさっぱりした性格で男を勘違いさせる達人。現在進行形で意思がすれ違い合う二人の息が噛み合った瞬間だった。恋愛の「れ」も知らない年頃の男女が絡むとこうなる好例である。

後に告白するがフラれるのはのはまた別の話

…………………

そんな風にはたから見ればイチャついてるように見えるやり取りをしていたら学校に着いた。

「いや〜なんとか間に合ったね刻夜」

「そうだな、バス乗る前は絶対間に合わないと思ってた」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る