第6話 魔女と聖女は表裏一体

「あのさ俺にわかるように話してくれない?」


笑みを深めて口を開く四季葉

「うーん、この話をするにはまず魔法師の起源から話さないとね」

「魔法師の起源?」


「うん、ねぇ?超新生異能者アノヴァリーっていつからいると思う?」

「はぁ?十数年前からだろ?」

なぜそんな質問をしてくる彼女の意図が読めず、一般的常識で回答する時夜。

そんな時夜の回答を待ってましたと言わんばかりに指を立てて左右に振り出す、まるでメトロノームのように


「実は超新生異能者アノヴァリーってのは歴史の節目で誕生してるのさ」

「はい?じゃあなんで今まで認知されてないんだよ」

「数が少なすぎたんだよね〜」

「は?」

「人間てのは不思議な生き物でね〜多数から外れる少数を排除したがるんだよ、君だって異能特区で無能力者なんかやってると思い当たる節があるんじゃないの?」

「それは……」

確かに今まで見下される方が多かった気がする、というかクラスで空海に絡まられたばかりだ、人間はそうやって自分の優位性を示したがるのだろう、嬲る者は超能力者だろうが無能力者だろうが変わらない、そう考えると無意味な進化と思わされる。


「覚えがあるようで結構、それで君はジャンヌダルクって知ってる?」

「知ってる、聖処女ジャンヌダルクだろ?」

「そうそう、魔女狩りで殺された彼女は本物の魔女アノヴァリーだったんだよ、歴史上の偉人はだいたいそうさ、ただし大元は一緒ってだけで、君たち超能力者は異なる進化を辿っちゃったけどね〜」

そう締めくくる四季葉、しかしまだ疑問点は存在しており解消するために時夜は口を開いた。


「待ってくれよ、偉人が実はアノヴァリーと起源が同じってのは理解した、でもそれがなんであの男が女の子をを殺す理由になるんだよ!話繋がってねぇぞ!」

だんだんイラついて声を荒げる時夜、今までの自分の価値観をひっくり返すような話をされたからか、それとも血塗れの少女を見捨てたり四季葉の言葉に反論できないような情けない自分にか、今だに行動と目的が見えてこないフード付き黒マントの魔術師にか、それともその全てが原因なのかもしれない。


懐から紙札をだし、喉にを当てて喋り出す四季葉

「我々救国の英雄、気高き先祖ジャンヌダルクを事もあろうに魔女という冤罪と汚名を被せ、何十人もの人間が彼女一人を無数の槍で串刺しにし、吊るし上げ、火で炙るという、彼女の騎士としての誇りと尊厳、信徒としての神への忠誠も祈りも全てを叩き折り、彼女の美しい髪も肉も骨すらも一片残らず灰燼に帰して残された我らに墓を作り弔うことすら許さなかった貴様らが今更魔女や異能者の育成機関を作る?…………巫山戯るな!!!ってことらしいよ?」

最初から最後まで男性の声で喋り、締めは四季葉の声で終わらせた。


ついにあの惨状を作り出した男の動機にたどり着いた時夜は顔面蒼白で絶句する

「なんだよそりゃ、頭いかれてる………そんな大昔の人間の事情なんかあの子に関係ないだろ………………ーーーーー要は異能者なら誰でも良かったってことか!?ーーーーーーただの交通事故とか八つ当たりみたいなもんだと?!………ーーーー何が復讐だよ………ーーーーーーーーやってる事、異端審問で冤罪被せてた奴らと変わんないだろ!」

最初はフード付き黒マントの異常な精神性に言葉を失いかけていたが徐々に一人の人間の生存権をないがしろにしてる理不尽な行為に対しての怒りに転化される。


時夜の言葉をさっきまでの笑みを潜め神妙に頷く四季葉。

「君の言う通り、ただの八つ当たりだ…許されるべき事じゃない…それを止めるために私が派遣されたんだ、本当なら私が犯行前に捕まえてればこんなことにはなってなかったんだよね」

四季葉は悲しそうに下を向いて、影が差し顔色は見えない。


四季葉のしおらしい様子に罪悪側が押し寄せる時夜。

「いや、お前が悪いわけじゃなくてあのイカレ野郎が悪いだけで……」


まだ時夜が話してる最中に顔を上げて笑顔で喋り出す四季葉

「だよね!いや〜私のせいじゃないよね〜あいつが全部悪いよね〜」

四季葉は飄々と語り出す、そんな様子に苦笑する時夜


(まぁいい俺だって何にもできなかったし、これから関わることもないだろう)


「じゃああの男を捕まえるために、

「はい?今なんて?」

「うん?頑張ろうね?」

「違うその前」

「私は悪くない」

「戻りすぎな上に改竄してないか?」

「ごめんごめん、ついね、一緒にってところでしょ?」

「そうだよ!なんで俺もなんだよ!」

「え?だって君はもう関係者だよ?」

「はい?」





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