第5話 魔法と魔術の違い

目を開けると見えるのは自室の天井、自分のベットに横たわっているようだ。


「嘘だろ……夢オチかよ〜壮大すぎる悪夢だった〜」


文句言いながらも安堵が全身を包む


「そうだよな〜魔術とかあり得ないよな〜」


誰に話すわけでもなく、独り言をつぶやいた

だがその独り言に返事が返ってきた


「残念!その悪夢まだ続いてるよ!」

返事と同時に視界が女の子の顔で埋め尽くされた。


「おわっ!?」

驚愕した時夜は脊髄反射で彼女から距離を取ろうとしてベットから墜落した。


「いだっ!!?」

落ちた先で頭をテーブルの脚にぶつける時夜。

「いってぇ〜〜」

踏んだり蹴ったり泣きっ面に蜂とはまさにこの事



「あちゃ〜大丈夫?」

心配そうにのぞきこんでくる彼女


「だ、大丈夫だから離れてくれ!」

パーソナルスペースを現在進行形で侵略してくる彼女に赤面する時夜。


「へ?はは〜ん何照れてんの〜可愛いね〜君♪」

小悪魔的な笑みを浮かべながらからかってくるが、言葉とは裏腹に距離を離してくれた


離れたのをきっかけに相手を観察する時夜、とりあえずさっき話してた相手で間違いなさそうだ。

「それで?なんであんたがここにいる?」

質問された相手は不機嫌そうに唇を尖らせ、眉根を寄せる

「ひっど〜い、それが倒れた君をここまで連れてきた人に対する態度?」


そういえば話してる途中で意識が飛んだな

「あんたが何かしたんじゃないのか?」

あの時は二人きりだった、いきなり倒れるなど外的要因がなければ起こらない。

彼女が何かした可能性は十二分にある。

「いや〜そうだったとしたら、こんなところに連れてこないでしょ?誘拐犯だったら眠らせた時点で縄かロープとかで拘束するのがベターだと思うけど?」


言われてみれば確かにそうだ、俺に危害を加える気ならわざわざ俺の学生寮なんかに届けるわけがない

「なるほど…あれ?そういやあんたどうやってこの部屋入ったんだ?」

「君の荷物から鍵を拝借して入った☆ついでに生徒手帳も見させてもらったよ、針間時夜君?」

「結構犯罪じみてないかそれ?」

そうジト目で見るが彼女は何食わぬ顔で笑っている


「はぁ〜とりあえず助けてくれたみたいだな、ありがとう」

少し照れながら礼を言う時夜、一瞬呆けた彼女だがすぐさまいやらしい笑みを上塗りした。


「いやいや〜どういたしまして〜」

ムカつくがここは我慢だ話が進まん

「それにしてもびっくりしたよ、いきなり耳と鼻から血を吹き出して倒れた君を心配して慌てて近寄ったら血涙も流しててさ〜」

「は?!ちょっと待て、血を流してた?」

「うん?そうだよ、あれ?魔槍の呪いってわけでもなかったし君の異能の反動じゃないの?」

「いや、俺は星屑異能者デブリだから異能なんて……ってそんなことはどうでも良いんだよ!それ!魔槍だの呪いだのお前ら一体なんなんだよ!」

彼女の言葉に記憶が蘇り叫ぶ刻夜

「うん?私は魔術少女蒼炎 四季葉そうえん しきは

「魔術少女?」

「正確には魔術師だけどね〜」

「はい〜?じゃあ蒼炎さん?あんた魔法使えるのか?」

怪しい心霊番組を見てるような目で四季葉に質問する。


「う〜ん魔法じゃなくて魔術なんだけど」

「なんか違うの?」

「そうだね、まずは実演しようか」


おもむろに彼女は手袋をつけ出した、黒い手袋の甲に怪しげな図形、俗に言う魔法陣が書き込んであり、魔法陣の中央には半分だけ燃えた葉っぱがあり中々厨二臭い。



四季葉は指を突き出しながら気の抜けた声を出した。

「よっ!」

掛け声がトリガーになり指先から火がついた

「おお〜でもそれってただの 発火能力パイロキネシスじゃないの?」

「ふふ〜ん、じゃあこれでどうよ?」

そういい懐から人型の紙を取り出しばらまいた、直後紙は膨らんでそれぞれ小動物の形をしだす

「は?!あんた双異能者ジェミナなのか?!」

「いやいや、そんなもん不可能って習ったしょ?」

「確かに…あり得ないって授業で習った、って事はあんたまじで魔法使いなの?!」

「だから〜魔法使いじゃなくて魔術師だって」

「さっきも言ってたけど、なんか違うの?」

「違うよ〜魔法ってのは魔力で社会や自然界の法律、法則に干渉できる人のことを魔法使い…魔法師っていうのさ」

「うん?どういうこと?」

首をかしげる時夜に笑顔のまま話し続ける四季葉。

「例えば、卑弥呼って人知ってる?」

「知ってる、確か巫女さんで国を治めてたっていう」


刻夜の返答を満足げに頷いて肯定する四季葉。

「そうそう、その人って神のお告げとかいう超胡散臭いこと言って国を治めてたじゃん?実は本物の異能者だったんだよね〜」


阿呆らしいと言わんばかりに顔を背ける時夜。

「はぁ?なんだそれ、馬鹿馬鹿しい」

しかしそんな時夜の呟きを否定してくる四季葉。

「じゃあさっきのはどう説明する?こんな小娘が使えるんだよ、歴史上の偉人が使えたってなんの不思議もなくない?」

「ぬ、言われてみれば…」

無理やり納得させられた、時夜は押し黙る。

「納得できた?じゃあ説明続けるよ〜魔法使いを名乗るにはせめて国の重要人物になるとか科学じゃ再現不能な事をやらなきゃいけないだよね〜」


意外そうに声を出す時夜。

「なんでだよ?手から火出せたらすげぇじゃん」


少し悲しそうな顔しつつ苦笑いする四季葉

「でもさっき君最初パイロキネシスって言ってたじゃん、所詮君達超新生異能者アノヴァリーに再現可能なんだよなぁ〜」


なお反論する時夜

「でも、二つの異能使って実質双異能者ジェミナじゃないか、それは科学にできないことじゃないのか?」

だか、即刻撃ち落とされる

「確かに二つのことを同時にできる人はいないだろうけど単体では似たような能力者はゴロゴロいるでしょ?、しかも私の火と式神なんてわざわざ能力なんか使わなくてもライターとロボットを使えばごく普通の一般人でも再現可能だしね〜〜、そんなもん魔法とは認めてくれないんだよ〜」

「色々めんどくさいんだな」


苦笑しながら自嘲気味に言い放つ

「そんなこんなで、魔術に格下げされたのさ〜ちゃちな手品扱い?」

「酷い言い方だな」

「まぁ〜基本的な魔術座学と私の説明はある程度終わったね〜次はあの男の方について説明するよ〜」


「おう、なんなんだあの変態?」

「彼も魔術師なんだよ」

「そんなことはわかってんだよ、なんで人殺してんのかって聞いてんの!!」


ハイテンションでツッコむ時夜、それに笑顔で答える四季葉

「あ〜彼にとっては復讐なのさ」

「復讐?あの子があのおっさんになんかしたの?」

「ううん、面識すらないよ」


うんざりした顔で再度問い詰める時夜

「なんで見知らぬ相手をぶっ殺す事が復讐なの?知らない相手なんだろ?」

「復讐というよりは見せしめかな」

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