異能特区

天倉彼方

第1話 デブリの憂鬱

 ここは星屑高等学園、しかしただの高校ではない。


 

 2ーAクラスの教室に真夏の暑苦しさが窓から流れ込み、生徒達は先生に抗議した

「美咲先生!クーラーつけろよ!」

「そうだよ美咲先生!熱中症になっちまう」

「クーラーつけながらグラウンドの汗だくになりながら、頑張る運動女子を見るのが至高、あと美咲先生もセットだと最上」

 そんな生徒に親しげに下の名前で呼ばれ、さらに文句つけられているのは黒羽 美咲、星屑学園の体育教師兼このクラスの担任だ。

 長い黒髪をポニーテールにまとめ、凛々しげな目、通った鼻筋に口紅をを入れずとも艶かしい唇、起伏のある女性らしい体のライン、美女といっても差し支えないが着ているジャージが全てを台無しにしている

「ほう?君達はクーラーをつけていいほど偉いのか?よーし、それでは今から模擬実技を開始する。全員体育館に集合、それと下の名前で呼ぶな」

 額に血管を浮かせながら、なんだか恐ろしい笑顔を浮かべそう言い放つと生徒達は当然抗議する

「「「「ええええ〜!!!!」」」」

 美咲は抗議は受け付けんとばかりに教室を出て行く、渋々生徒達も体育館に移動し、生徒達は体育座りで待機して、模擬試験の開始を待つ

 美咲はバスケットボールを床に置き、肉食獣めいた笑みを浮かべながら生徒を名指しする

「確か佐藤さっき抗議してたな、先ずはお前からだ」

「うへぇー、トップバッターかよ〜」

 心底嫌そうな顔をするが先生に逆らうわけにもいかず、立ち上がり目を閉じて手を前に突き出すと用意されたバスケットボールが浮き出す。

 黒髪黒目の平凡な見た目な俺こと針間時夜はその超常現象を流し見しながら思考の海に溺れる。

 神なんてこの世界にはいない、いたとしても相当性格が悪い。


 なぜならこの世界に生まれた瞬間から人間同士の差別を良しとしている。

 貧富の差に才能の差や容姿の差、その様々な格差が争いの火種を作る。だからこそ俺たち人間は普通を求めるのだろう。多数派に混ざれば自分は攻撃されず、少数派になれば惨めな目にあう。管理する側も普通を設定すればそこから外れたものを異常とみなし排除することで秩序を保てる。


 だが神はそんな俺たちの努力をあざ笑うかのごとく、新たな格差を生み始める。ある日の夜、世界各地で隕石が飛来し未曾有の大災害を起こした。

 飛来した隕石には未知の物質が宿っていたらしく、それだけだったら何の問題もなかった、ただ興味深い研究素材が手に入ってよかった。それだけの話のはずがその物質と呼応し異能に目覚め始める少年少女達、俗に言う超能力者が誕生したのだ。



 隕石の被害は甚大だったがピンチはチャンス、超能力なんてものほかの所にはない財源を有効活用するために異能者を研究する都市を作り、研究費用を募ったら他国からものすごい支援がされた。

 どの国も異能は美味しいと感じたらしい。

 俺たちが住むその都市は異能特区と名付けられ、集められた超能力者達は超新生異能種アノヴァリーと呼ばれた。

 超新生異能者アノヴァリーにも能力階級があり上から

 空論体現者エアリアル

 限界突破者オーバーリミット

 進化可能性者シフトプログレス

超常異能者エキストラ

 超能力者スキルホルダー

 星屑無能者デブリゼロ


 まぁ空論体現者エアリアルはもはや都市伝説レベルで今だに1人も至れてないとか、現状限界突破者オーバーリミットが最強の能力者だ



 異能が発現する可能性を持っているものもこの都市に来る、精密な検査を受け異能を持っているが発現できない奴らを星屑無能者デブリゼロと呼ばれた、一般的にはデブリやゼロと省略されている。



 そんな奴らの説明をすると言うことは、俺がそれだというのはなんとなくわかるだろうか?

 何かの能力を持っているらしいが、それが何かわからず、星屑無能者デブリゼロに分類された。



 そう物思いにふけっていると美咲先生に名前を指名される

「次、針間!」

 呼ばれた俺はバスケットボールに対して手を突き出し集中してみるが、何も起きない。

「もういいぞ、次は島風!」

 そう言われ、晒し者にされた俺は呼ばれた生徒とすれ違い、自分の場所に座る。

 今日もいつもと同じ空虚な一日だと思っていた。

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