第4話 姉が授業にやって来る

碁点(ごてん)中学校、2時間目。

鈴(りん)は3年1組で数学の授業を受けていた。

「うーん…」

鈴は数学が苦手だ。新しい分野を学ぶ際に、一度で理解できないのだ。

といっても、定期テストがある頃には完璧に内容を理解して、最終的に学年で1番になれている。

今は新しい分野を教師が教えている。

鈴はそれを理解できていない。


「はい、ではここで問題を解いてもらいます」

教師の説明が終わり、演習の時間に入った。

鈴は当然、解けずにいる。


「終了!ではこの問題をー…鈴さん、解いてみましょう」

「あ…」

鈴が黒板に解答する係に指名されてしまった。

鈴のノートは真っ白。

「すみません、わかりません」

正直者の鈴は教師にそう伝えた。

しかしその瞬間、教師は困惑し、クラスメイトがざわめき出した。

「鈴さん、この問題 簡単すぎたかしら?もしかして怒ってる?」

「学年1位がわからないわけないじゃん」

「俺だってできるんだもん」

「鈴ちゃんお腹痛いのかなぁ」

「・・・」

周りは鈴が解けると思い込んでいるが、鈴は本当にわからないのだ。

もう一度解けない旨を伝えようとしたが、周りの声が大きく、教師も考え込んでしまっているため、それができない。

(どうしよう…)

鈴は困った。


そう、困ったのだ。


カラン

「?」

教室が混乱する中、鈴の机の上に紙コップが投げ込まれた。

紙コップの側面には『耳に当てて♡』というメッセージ。

鈴は指示通り、それを自分の耳に当てた。

すると、

「いもうと(小声)」

「!、おねえちゃん…!」

姉である涼(りょう)の声が聞こえてきた。

「もう一つプレゼントがあるんだ。投げるから受け取ってね」

「うん、わかった」

紙コップに口を当てて涼に返事をすると、その紙コップは窓の外へスルスルと引っ張られて消えていった。

その後、鈴の机に向かって窓から何かが投げ込まれた。

それは…メガホン。

その側面には『ファイト♡♡♡♡♡』というメッセージ。

「おねえちゃん…!」

姿は一切見えないが、鈴は教室の外にいる姉に感謝した。

そして、メガホンを握りしめ、息を吸い込んだ。


「わかりませーーーーーーーーん!!!!!!!!!!!」


鈴以外が気絶している教室の外では、涼が紙コップを舐めまわしていた。

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