第21話 君はどうする?

「ご協力感謝するわ、勇者」


「いえいえ」


「おかげで全て戻ってきましたわ」


「よかった〜」


 これで町のみんなも安心だね。


「それじゃあ、あとは門を閉じるだけだな」


「いや、そういうわけにはいかぬ」


「え?」


 どうして?


「そやつだ、そやつ」


 ファイウルが指さされる。


「僕?」


「お主も罪人だろうが」


「そうだったー」


 戻らなきゃいけないのか。


「えー!」

「ファイウル帰っちゃうのー!」


 寂しいけどさ。

 仕方ないよ。


「だが、一つ提案があるぞ」


「提案?」


「お主は地獄に戻らず、勇者と共に暮らしてみるのはどうだ?」


「え!?」


 そんなことしていいの!?


「どうもお主は悪いやつには見えぬからな。それくらいの自由は認めてやる」


 まあ、そうだね。

 ファイウルは、少し悪いことしてたけど根はいいやつだからね。


「わーい!」


「それに、妾の炎も効かぬしな……」


 あー……そういう理由も……。

 それは大変でしたね〜。


「よかったね、ファイウル」


「うん!」


「それでは、お別れだ」


 地獄の王は、門をくぐる。

 そして、佐藤が手をかける。


「あ、お姉ちゃん!」


 最後に、魔王が声をかけた。


「なんぞ、妹?」


「また……会える?」


「ああ、いつの日か」


――――――――――――――――――――


「お父さんー!」


 帰り道。

 来たときよりも、一人多い。


「なんだー?」


「おんぶしてー」


「全くしょうがないなー」


 屈んだ佐藤の背中に、ブレサルが飛び乗る。


「ブレサルは、あまえん坊ね」


 今日は疲れたんだよね。

 お父さんの背中でゆっくりお休み。


「僕もおんぶしてー」


 そうおねだりするのは、ファイウルだ。


「無理だ!」


 即答する佐藤。


「えー、なんでー?」


「身体的限界!」


 ファイウル、重そうだし。

 今はブレサルがいるからね。


「ちなみに、私も無理だよ」


「……」


 ファイウルは、どこか寂しそう。

 この家族を見ていて、甘えてみたくなったのかもな。


「ファイウル」


 そんな彼に、魔王が声をかける。


「……なに?」


「私がおんぶしてやるのじゃー!」


「「ええ!?」」


 本気で言ってるの!?


「ほ、本当にいいの?」


「我は魔王なのじゃー!」


 魔王は自分の背丈より高い身長のファイウルを軽々持ち上げる。


「おお!」


「さすが魔王ちゃん!」


――――――――――――――――――――


「むにゃ……」


 いろんなことがあって、やっと夜。

 今日の佐藤は、すごかった。

 魔王幹部を倒したんだから。

 もちろん魔王もファイウルも頑張ったね。

 おやすみ。


「子どもたちは、みんな寝てしまったな」


「そうね」


 佐藤とシャロールの横には、ブレサルに魔王、そしてファイウルが寝ている。

 いつの間にか、布団も増えた。


「うちは一人っ子だったのに、随分賑やかになったな……」


「ふふ、いいじゃない」

「私は好きだよ」


「僕もだ」

「なんなら……もう一人作るか?」


 佐藤がシャロールに体を寄せ、密着する。


「あっ……! 佐藤……!」


 子供たちを起こさないようにシャロールが声を押し殺す。


「どうした?」

「久しぶりで緊張してるのか?」


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