第6話 思わぬ再開

「ここは……」


「まさか……」


「どこ……?」


 この豪華な装飾。

 しかし、ケスカロール城とは違う。

 全体的に暗い雰囲気だ。


「む、久しいな」


 正面の玉座に鎮座する人物が声をかける。


「「魔王!?」」


 夫婦は驚く。

 だが、ブレサルはキョトンとしている。


「……誰だ?」


 彼はお父さんの友達だよ。


「そっか、よかった」


「勇者よ、なにゆえここに来た」


「それがよくわかんないだよな……」


 洞窟から飛ばされたのかな……?


「魔王さん、元気にしてたー!?」


 佐藤が悩んでいる間にシャロールは魔王に駆け寄る。


「うむ」


「ごめんね〜!」

「結婚、就職、子育てで忙しくって、会いに行けなかったの〜!」


 忘れてたんじゃないのか?


「ほら、ブレサルもあいさつしなさい!」


「あ、はじめまして!」


 シャロールに背中をポンと叩かれたブレサルが頭を下げる。


「はじめましてだな」


「魔王はここでなにしてたんだ?」


 気になるね。


「考え事をしておった」


 考え事?


「ふ〜ん」


「他にはなにを?」


 まさか考え事だけじゃないだろう。


「いや、考え事しかしておらん」


 いたって淡々と事実を伝える魔王。


「なかなかだな……」


 若干引いてる佐藤。


「いつからなの?」


 シャロールが尋ねると、魔王は困り顔になった。


「ううむ、貴殿らとフレンド登録したとき……かの?」


「「ええ!?」」


 そんなにずっと!?


「な、なんで!?」


「世界が平和になって暇なんじゃよ」


 暇……。


「そっか……」


 なんだか魔王もかわいそう……なのかな?


「じゃあさ!」


 今まで静かに聞いていたブレサルが声を上げる。


「「「ん?」」」


「一緒に住もうよ!」


「「えええ!?」」


 二人が驚く。

 私も驚く。


「ふむ、それも良いな」


 なぜか乗り気な魔王。


「いや、待て待て待て!」


「ブレサルの世話で手一杯なの!」


 ワタワタする夫婦。


「「これ以上……」」


「でも、こんなにかわいい魔王さんを放っておけないよ!」


 ブレサルは必死に主張する。


「そうは言っても……」


「食費とか……」


「「ん? かわいい?」」


 さっきから、やたらシンクロする二人。


「魔王さん、かわいいよ」


 ブレサルが魔王の顔にかかっている長い髪を横に払う。


「や、やめんか。小僧」


 髪の下に幼い顔が見えた。

 ブレサルと同い年くらいの顔だ。

 実際は違うと思うが。


「おぉっ、かわいい!」


 佐藤が嬉しそうに叫ぶ。


「佐藤?」


 キャイアさんのように鋭い視線を佐藤に突き刺すシャロール。


「あっ、違う! これは浮気じゃない!」


 わざわざ言うってことは……。


「魔王さんって、こんなにかわいい女の子だったんだ〜」


 背が低いブレサルは、魔王を見上げていたから、前髪で隠れていた素顔が見えたんだな。


「うん」


「私はかわいい……のか?」


 魔王は半信半疑だ。


「すごくかわいいぞ!」


「そ、そうか」


 魔王は顔を背けた。

 ほのかに赤らんでいる。


「ブレサル、昔のお父さんみたいなことしないの」


「え?」


 佐藤もシャロールに出会ったとき、かわいいって言ってたよな〜。


「そうなのか……」


「おい、ブレサル」

「今なにを聞いた?」


 秘密だぞ。


「なんでもな〜い!」

「それより、早く帰ろうよ!」


 ブレサルはもう魔王の手を握っている。


「しょうがないな〜」

「魔王がかわい……」


「さと〜う?」


「かわいそうだから、一緒に暮らそう」


「わーい! ありがとうお父さん!」


 なんかペットみたいな扱いだな。


「そんなことない! お友達だ!」


「とも……だち?」


 この会話……デジャヴだな。


「ほら、やっぱり佐藤に似てる」


「そうかな?」


「お父さん、早くして!」


「わかった、わかった」


 こうして佐藤一家に家族が一人増えましたとさ。

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