第10話 クソ眼鏡が魔王に無謀なる反撃を企んでいるようです。もちろん瞬殺されます。


 サイド:リチャード



 いつもクラウスをオモチャにしていた校舎裏。


 クリートさんとの相談の最中、珍しく私は取り乱しながらこう言いました。


「ああ、そうか……そういうことだったのかっ! きっと……きっとカリーナも……クラウスに復讐されて……」


 アドルフは背骨の魔術回路を壊されて再起不能、そしてカリーナも恐らくは多額の金銭を要求されて実家に戻っています。


 カリーナについてはクラウスへのイジメには積極的に参加していなかったので、その程度で済んでいる……ということでしょうか。


 と、なると……私やクリートさんはどうなるのでしょうか?


 アドルフへの所業は事故なんかではありません。アレは間違いなく狙ってやったものです。と、なると――


 

 ――クラウスは完全にぶっ壊れています



 アドルフへの復讐にしても明らかにやりすぎですが、どうにも歯止めが効いてない様子です。


 そして、覚醒者となってしまった奴が……力を手にした復讐鬼が、私たちを許すことは無いでしょう。


 そうすると、私は一体……次の魔法戦闘実技試験の際に、どんな酷い目に遭わされるのでしょうか?


 青ざめ、そして震える私にクリートさんはニヤリと笑ってこう言いました。


「ふふ、リチャード……何をうろたえているんだい?」


「カリーナもアドルフもやられました! 奴は……きっと今回の試験で全員に復讐するつもりなんですよ? これが平静にいられますかっ!」


「ああ、どうやらそうみたいだね。まあ、所詮は覚醒者……僕は奴と最終で当たるとして、神装機神での戦闘訓練だ。搭乗戦なら僕に負ける要素はないよ」


 そこで私は声を荒げてクリートさんにこう言い放ちました。



「明日は私の……生身での魔術戦なんですよっ! 魔法までを先祖返りしているあんな奴に勝てるわけがないっ!」



 半泣きになり私は縋るようにクリートさんに頭を下げました。


「何とか……何とかならないでしょうか?」


「はは、それはご愁傷様だね。でも、僕は搭乗戦だからねぇ……」


「しかし、今回の試験が終わったとしても、奴はクリートさんにも必ず復讐に来ますよ? それこそ、夜中に寝込みを襲われるかもしれない!」


「それはおいおい考えるさ。僕の父親は公爵だし、覚醒者の一匹や二匹……どうとでもなるだろう」


「なら、私は?」


「だから言ったじゃないか、ご愁傷様だってね」


 冷たい――笑顔だった。


 それはクリートさんが……いや、クリートがクラウスに対する嫌がらせを影で計画していた時の笑顔と……同一のものです。


 その笑顔を見て、私は……クリートから切られたことを否が応でも理解しなくてはならないでしょう。


「もういい! 私は私のやり方で危険を排除しますっ!」


 そして――。


 私は学院から飛び出し、街のスラム……暗黒街へと全力で走ったのです。


 それは勿論――



 ――そのスジの者にクラウスを排除してもらうために




 と、いうのも私の親は裏社会の重鎮……裏ギルドの元締めなのです。


 アドルフは馬鹿正直に自分の力で立ち向かいましたが……所詮はアドルフは脳筋です。


「自分の力で太刀打ちができないなら……親の力を使えば良いっ!」


 ふふ、私の手を煩わせたことを……後悔させてあげますよクラウス。


 そうして私はクラウスの泣き叫び、命乞いをする顔を想像して……ニタリと笑みを浮かべたのでした。

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