第9話 豆狸、美味しい物を食べ過ぎて太る

若夫婦の営む、ペンションは昼間は喫茶店もやっていて、少しずつ評判になっていました。



それが1ひとつきくらい前から、『このお店でプロポーズすると上手くいく。』『店に飾ってある狸の写真を待ち受けにすると、幸せになれる。』とウワサになっていたのです。



お客さんは増えてお店は大繁盛だいはんじょう

それでも二人は週に一度は必ずお店を休んで、狸達との時間を大事にしていました。



そんなある日、ご主人は奥さんに言いました。



「店の評判が良くなって来たのも、あの狸達のおかげかもしれないな。

狸達が過ごしやすい様に、そのうち裏庭に甘柿の木や実の成る木を植えようと思うんだ。」


「それもそうね。他にも季節ごとに実の成る木を植えていきましょうよ。」



と若夫婦が話ている頃……

豆狸まめだ一生懸命いっしょうけんめいに、新しい巣穴を掘っていました。



『あゝ何だか今日は、すごく良い香りがするのぅ~。

こりゃあ、あの酒蔵の酒粕かの?

明日辺りまた何か、美味いもんでも食わしてくれるんかのぅ?

楽しみじゃ♪』



豆狸まめだは明日のご飯を想像して、またよだれがたれるのをがまんしながら、巣穴を掘り続けました。



そして次の日、豆狸まめだ達がサンルームの前で待っていると、奥さんがいつもより美味しい食べ物をたくさん出してくれたのです。



『美味いのぅ従兄あんちゃん。』


『そうじゃのぅ……フゥ……。』


『どうしたんじゃ従兄あんちゃん

具合でも悪いんか?』



従兄豆狸まめだの様子に、豆狸まめだが心配してたずねると、従兄豆狸まめだはこう答えました。



『最近身体が重いんじゃ…何か病気かのぅ?』


従兄あんちゃんもか!?

じつはワシも最近身体が重うてのぅ……

せっかく新しい巣穴を作ったのに、心配じゃ。』



そんな2匹を見ていた、奥さんがふとこんな事を言いました。



「まあ♪こんなにコロコロと丸くなって可愛いわねぇ~♪」


『『ガーン!』』



その言葉を聞いた豆狸まめだ達は、ショックで一瞬食べるのを辞めました。

が、しばらくするとまたエサを食べはじめ、しっかり全部食べた後に帰って行きました。



『『せよう…明日から…… 』』


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