#字書きがいいねの数だけ詳細に語る

齊藤 紅人

1.視点の使い分けについて

 基本的には一人称か三人称。それを「これから書く物語が面白くなるかどうか」で使い分けます。

 まあでも三人称がスタンダードです。何故なら物語を俯瞰出来るので展開で悩むことが少ないからです。感覚としては何処にでもカメラを動かせる感じですね。一人称だと一人の人物の頭の上にカメラが固定されていて、カメラに写らない=書けない場面がどうしても生じてしまいます。

 それをわざわざ一人称にするのは、そこに付加価値があると踏んだ場合です。

 過去作で一人称を採用したもので言えば、ショートショート集に収めた『家庭用消火器の燃えるような恋の顛末について』と、長編ミステリー『銃拳使いと自動人形』です。

 前者は、主人公が消火器で、いわゆる擬人化というやつです。消火器視点の一人称でお話を描くことで、日常における非日常感をうまく演出できたように思います。

 後者は、ミステリーである、ということが最大の理由でした。物語の終盤までトリックや何やらが読者に気付かれないようにしなければならず、一人称にしてあえて視点を絞ることで、その辺りの情報を上手く隠せるのではないかという意図ですね。ただ『銃拳~』に関しては、一人称かどうか以前に構成の段階でかなり突飛なものになっていて、構造上、一人称でしか表現できないものでした。なので、考えた上で一人称を選択したとは言えないような気もします。

 一度だけ、二人称というのを採用したことがあります。ファンタジー長編『竜斬の理』の冒頭です。貴方は~という人称を使うことで、物語への没入を誘うためでした。自分の書いた小説としては、この始まりは概ね好評を得られたのではないかなあと思います。

 視点については、自分がどれが得意とかいうことではなく、あくまで道具という感覚ですね。野球するならバットを、料理をするなら包丁を握るように、今から書く物語に相応しいものを選ぶというただそれだけです。

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