第18話 ページをめくると戯言がある

 終わりの鐘が鳴り……


 僕らは席を立つ。



 皆、真剣に書き写したノートを鞄にしまう。


 でも、君のノートは落書きだらけで……


 そんな落書きの内容に僕はいつだって夢中だった。



 恥じる事を知らず、その夢も内容も……


 自由に書き写し語る君は……太陽のように眩しくて……



 そんな光が眩しくて……


 光を塞ぐように……その光を欲するように手のひらを……伸ばしたんだ。



 届かなくて……


 掴めなくて……



 気がつけば僕もノートに落書きをしていて……


 ページをめくる……


 そこには君がいて……


 ページをめくる……


 やはりそこに君がいて……



 君が欲しいのか……君になりたいのか……わからなくて……


 

 終わりのチャイムが鳴る……


 君は席を立つ。


 君が忘れていったノートを僕はひろげる。


 僕とは違う恋をした君。



 ページをめくると……


 いつもそこに誰かが居た。



 僕は伸ばした手のひらを裏返す。



 終わりのチャイムが鳴る。


 僕を軽蔑する君の顔がそこにある。



 君は汚れたノートを鞄にしまう。



 世界なんてものは表裏一体……



 手のひら返して初めて気がつくこともある。


 自分の見える表だけをどれだけ綺麗に磨いたって……


 裏返せばそこは汚れた世界。


 裏返した手が、ページをめくる……



 きっと望んだ世界なんて無い……


 それでも、ページをめくる……



 いつも、君は笑っていた。



 それは、優しく僕を励ますものなのか……


 僕を中傷するための笑みなのか……


 僕ではない誰かに向けた笑みなのか……



 僕の落書きは今もそれを描けない。

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