ルールに穴がありすぎる話

人の幼少期には、絶対に避けては通れない道がある。


遊ぶことである。


カラス、イルカなど、賢い動物はみな遊ぶ。


人類もまた賢い動物。


遊びを避けては通れない。


人間がルールを理解するのは3歳ごろと言われている。


もちろん個人差はある。


そこで、僕がゲームをしていて「ルール変えた方がよくない?」と疑問に思ったものを紹介する。




・ドッジボール


小学生に人気のスポーツである。


最近、ドッジボールは人にボールをぶつけるので非人道的云々という理由で廃止されている学校もあると聞いたが、当時は人気の遊びだった。


もちろん当時はいじめはなかった。


ドッジボールには首から上に当ててもアウトにならないというルールがあるが、僕のクラスでも採用していた。


これを利用し、飛んでくるボールをヘディングし、アウトを免れる猛者がいた。


僕は「なるほど、その手があったか」と感心したのだが、その子はみんなからブーイングを受けていた。


そのときは先生がいたので、先生立会いの下で「わざと頭でぶつかった場合はアウト」という大岡裁きを見届けた。


僕はこれを真似したわけではない。


頭に当たったら痛いもん。


僕が怒られたのは別のルールの話だ。


アメリカンドッジボールというのをご存じだろうか。


Wikipediaには「戦争ドッジ」という穏やかではない名前で紹介されていた。


ちなみに、同じく小学生の時に軍艦じゃんけんが流行っていたのだが、ALTとして勤務しているアメリカ出身の先生が戦争経験者だったという理由で、先生から軍艦じゃんけんの禁止令が出されたことを思い出す。


これは当然の判断だと思う。


アメリカンドッジとは、基本は通常のドッジボールと同じなのだが、アウトになったら相手の内野に入り、相手チームになるという違いがある。


どの辺りがアメリカンなのかはわからないが、空想上のアメリカで行われていた遊びなのだろう。


台湾ラーメンアメリカンみたいな。ちがうか。


あるとき妙案を思いついた。


「永遠に当たり続ければ終わらなくね?」


自分はAのチームに所属しており、Bのチームからボールを受けたとする。


すると、自分はBのチームになる。


そして、Aのチームからボールを受け、Aチームになる。


これを繰り返すのだ。


まさにデバッカーの発想だった。


やってみた。


怒られた。


当たり前だった。


わざと当てられに来る人を当てて楽しいことは一つもない。


しかも時間切れになるまで終わらない。


当時はルールを守ってさえいればよいと思っていたが、どうやらそうではないらしい。


――でも、これを許してしまうルールの方を変えるべきだと思うけどなぁ。




・だるまさんがころんだ


高校の時である。


遠足の先が広い公園だったので、クラスの何人かでだるまさんがころんだをした。


「いい年して何してんだ」というツッコミは無しで頼む。


鬼が向こうを向く。


このとき、ふと思った。


「鬼の視野外にいたら振り向いても動けるんじゃない?」


敷地は広く、鬼の視界から見えなくなれば動いても見つからないという発想だった。


そして鬼の目の前まで来ると怒られた。


ルールは破ってない。


行動範囲が指定されていないだけだ。


ちなみに、僕がケイドロ(地方によってはドロケイ)で初めて自首を行ったのはこの遠足でのことである。




・UNO


知らない人が多いと思うが、公式のルールでは実はドロー2に対してドロー2を出せない。


『取扱説明書 - マテル・インターナショナル』およびUNOを買ったときについてくる説明書にも書いてあった。


ドロー4も同様にドロー2およびドロー4で返すことができない。


しかし、ドローに対してドローを出す人が後を絶たない。


ドローにドローを出せる方が個人的には面白いと思うので、公式のルールの方を変えた方がよいと思うが、なかなかそうはいかないだろう。


また、この知識を持っている人がいた場合、事前に確認する必要がある。


ゲームの途中で「え?知らないの?公式のルールではドローにドローは返せないんだよ」と、正しい知識をひけらかしたところで周りの人は困惑するに違いない。


というか困惑してた。


実は『黒ひげ危機一髪』も、開発当初は脱出させた人が勝ちなのだが、時代とともに脱出させた人の負け、という風に変化していった。


「全然おいしい」「こちら○○になります」など、かつて間違っているとされていたものが今は使ってもよいというように、ルールは時代や周りの環境に左右される。


なので、これは豆知識程度に留めておき、ドローは返せるというルールでゲームすることをお勧めする。




・グーとパーで分かれるやつ


ゲームではないのだが、チームで分かれる時に使う手法だ。


じゃんけんもそうだが、かけ声が地方によって異なる。


僕は今まで「グッパでわかれましょ」というかけ声を使っていたが、大阪では違った。


僕が大阪の大学にいた頃、このグーとパーで分かれるじゃんけんをする機会があった。


グループ内のリーダーがかけ声を放つ。


「グッとっパ!」


いや、そこは統一せえや。


大学って色んな地方から人が来てるからそのかけ声はあかんやろ。


かけ声が地方によって変わること知らんのかい。


てか他の人もなに馴染んどんねん。


全員「グッとっパ!」で通じるんかい。


馴染んでへんの俺だけかい。


と思った。


「グッパでわかれましょ」が共通語だと思い込んでいる僕は、「グッとっパ!」で分かれる時、「パ」の後もかけ声が続くと思ってグーを構えているので、絶対にグー側になる。


かけ声を揃える提案や、やり直しを要求したが、所詮少数派の声は虚しくも届かなかった。


これがマイノリティの暴力。


なので、グーとパーで分かれるじゃんけん、および他のじゃんけんなど、ローカルルールが予想されるゲームをする時は、事前にルールを共有しておくことをお勧めする。


その事件から僕はグーとパーで分かれるじゃんけんの時、絶対グーにしようと思った。


手を変えるのが面倒になったからだ。




以上、二度と同じ惨劇を繰り返す人が現れないことを祈る。




参考文献:

『ドッジボール - Wikipedia』

『軍艦じゃんけん - Wikipedia』

『取扱説明書 - マテル・インターナショナル』

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