第五話

 5:

 あれ? おかしいなぁ。

 遊園地って、こんなに体力も気持ちも疲れるものだったっけ……。


 思い返しつつ、兄の声が聞こえてきた。

「飲み物買ってくる」

「うん、お願い……」


 ベンチに座って小休憩。

 そして、紫の羽織を着て荷物の入ったトートバックを肩に下げた兄。

 その背中が、遠ざかっていく。


「ふう……」


 背もたれに寄りかかって、肩が下りるほど息をつく。

 ベンチがあるのに、辺りには食べ物を販売している所がない。


 ……あった。


 すぐ近くに自動販売機がある。だが、そこには兄はいない。

 きっと、メリーゴーランドの近くにあった軽食を売っていた所に行っているんだろう。


「…………」


 なかなか戻ってこない。

 今のうちにお手洗いに行っておこう……。


「あれ?」


 紙コップのジュースとソフトクリームがセットになった箱(二人分)を持って、戻ってきた龍之介。妹の燕がいないベンチを発見する。

 場所を間違えたわけでもない。

 すぐ近くに、今しがた出てきた『透明迷宮』がある。ここのはずだ。


「あいつ、どこいった?」

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