26話 人形少女は未来予知者?

午後の4時半頃、僕は1人寂しく渋谷の駅前のど真中で、ただボーッと突っ立ていた。


なぜ僕がこんな場所に、人混みが嫌いなこの僕が、わざわざ1人で立ってるかといわれれば、明確な理由がある。


今日の夜に3人で渋谷で飲もうと祐希に誘われたのだ。勿論残りの一人は莉奈だ。

ただ今日に限って学校から昼過ぎに呼び出されていた。

呼び出された内容を簡潔に説明すると、ゲームショウに出展するゲームについての紹介など、まぁそんな感じだ。


そして、それが終わったのが3時過ぎだった。

このまま帰って渋谷行くのもメンドイと考えて、もう渋谷に行ってしまえと考えたのだ。

集合時間は6時なので2、3時間程度暇潰せば丁度いい時間になる。

実に合理的な考えで、学校から渋谷移動した訳だ。

まぁ、買いたい物あるし、それで時間は簡単に潰せるなと思っていた。


僕は渋谷に着くなり本屋に行き、新刊の文庫本を4冊買った。

そして買い物は終わった。

たったの15分で。


暇潰しの買い物があっさり終わって、待ち合わせまで大量の時間が余った。

この時間を埋めるために、次に欲しいものかを考えた。だが物欲が乏しい僕には、他に買いたい物なんてなかった。

そして、悩みに悩んで冒頭の僕に繋がるのだ。


真夏にただボーッと立つ僕。

流石若者の街、渋谷である。

駅前で、しかもこんな人が多いのに、目の前の若いカップルはキスをしていた。

こんな暑いのに抱き合いながらベロチューなんて凄い光景だ。


僕はその様子をただ観葉植物を見る様な目でただ見ていた。

別にその様子を見たいわけでもないし、観察したい訳でもない。ただ、目線の先にそのカップルが居たから見ているのだ。

深い意味なんてない。


すると、横から視線を感じた。

僕はゆっくり横を見ると、少し離れたJR駅の入り口で1人の少女が見ていた。

Tシャツでジーパンのラフな女の子。


ただ僕は他人が興味を惹く様な行動もしてないし、そんなヴィジュアルもしていない。

だからこの女の子は僕じゃなく違う所を見ていると思い、自分の周囲を軽く見渡した。


そしてまた女の子を見ると、じっと僕を見ていた。

紛れもなく、その目線は僕はだった。

僕はなぜこんなに見られているのか不思議に感じた。

そしてその女の子をよく見ると、ふと思い出した。


そう、この子は以前会った女の子。

無口でアイドルの朝倉舞だった。

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