22話 男に縋る女②

僕達は波が出るプールから、流れるプールへと移動した。

無論だが、アイツらを血祭りにして血の海にはしていない。

そこは大人の対応をした僕を褒めて欲しい。


僕達は昼過ぎということもあり、昼食にする事にした。

屋内にある店で各々食べ物を注文してテーブルで食べ始める。


僕が頼んだカレーは実に平凡な味だった。だがそのごく普通のカレーでも美味しく感じる。なぜなのかは知らないが、スキー場やいろんなレジャー施設で食べるカレーは大体美味しい気がする。どう考えても普通のカレーなのに。


そんな僕達3人がいるテーブルに1人の女性がやってきた。


「やっぱそうじゃん! 莉奈と祐希じゃん!」


そこに現れたのは黒髪でロングの女性だ。まぁ、2人を知っているのだからキャバクラ仲間だろう。


「あっ、あや。おひさ」


祐希は右手を挙げて挨拶した。

一方莉奈はホットドッグを食べながら、真顔で見ていた。


彩という女性は祐希と話し始めた。そして、莉奈はそこに加わる事なく、ただホットドッグをゆっくり食べていた。


いくら鈍感な僕でさえ、なんとなくこの状況に違和感を感じだ。

余所余所しく話す祐希、無関心な莉奈、どうやら2人はこの彩という女性が嫌いらしい。

よく見れば祐希も少し嫌そうに、というかめんどくさそうに話を聞いていた。


僕は無駄な事に首を突っ込みたくないので、大人しくカレーを食べる。

すると、彩は僕を見て、「あれ、この人誰? 友達?」そう聞いていた。


「莉奈の彼氏」


めんどくさそうに祐希は答えた。なんだろうか、こんな祐希はあまり見た事がない。余程嫌なんだろう。

そしてそれに気付かないこの彩もスゴイ。普通だったら、祐希の反応で察する事が出来そうなもんだが、お構いなしに喋っていた。


「へぇー! 莉奈は男とか興味ないと思ってた! よかったじゃん」


彩は莉奈にそう話しかけるも、相変わらずホットドッグを食べていた。そして、スッと彩の後ろを指差して「なんか、呼んでるけど」と言った。


「あっ、ヤバっ。彼氏に呼ばれた! ゴメン、じゃあまたね!」


そう手を振って彼氏の元に走っていく彩。それを祐希と莉奈は手を振り返すわけでもなく真顔で見ていた。


「ねぇ、2人とも冷たすぎない? 手くらい振り返しなよ。雰囲気で嫌いな人とは伝わるけどさ」


「彼氏見てみなよ」


祐希がそう言ってきた。

僕は後ろを振り返り、彩の彼氏を見た。


「どうよ? どう思う?」


祐希の言葉にどう返そうか悩んだ。

というよりも、どう褒めるかを探していたが正解かもしれない。

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