17話 莉奈の隠し事

 夏休みの中、真っ昼間から僕は家の大掃除をしていた。

 家主である莉奈は用事があるといい、外出をしているためだ。

 昼から特にやることもなく、僕はあまり好きでもない掃除をしているのだから、余程暇だったのだろう。

 掃除は滅多にやらないが、やる時はしっかりやる、そんな性格なのが僕の特徴ともいえる。因みに血液型はO型だ。


「暑いな。もう少しエアコン効かないかな?」


 僕は居間のエアコンのリモコンに手を差し伸べた。そして風量を変えようとボタンを何回も押したが、無反応だった。

 よく見るとリモコンの液晶は真っ暗である。


「電池切れか。確か電池あったよな?」


 僕はテレビ台の引き出しを確認した。ここに電池が入っていた記憶があった。でも引き出しの中には電池はなかった。

 近くのコンビニに買いに行こうか考えたが、こんな炎天下に行きたくはない。出来ればこの涼しい場所から一歩も出たくない僕は他の場所にも電池があるか探した。


 寝室にあるクローゼットの中にいくつかのカラーボックスがある。

 そこには莉奈や僕の大事な書類や通帳など、貴重品が置いてある。僕はここに引っ越す前に前の家から電池を持ってきていたのだった。だが、自分のカラーボックスを見ても電池はない。


 そして、ふと莉奈のカラーボックスに目が入った。ほんの出来心だ。別に莉奈が浮気してるとか、そんなの考えた事もない。

 だけど、莉奈のカラーボックスになにがあるか気になった。


 僕はさりげなく、莉奈のカラーボックスを開けると、通帳やこのマンションの書類など特に面白みもない物達が入っていた。

 だが、そこに小さい缶の入れ物があった。僕は躊躇しながら缶を空けると、そこには大量の薬と、注射器が入っていた。


 僕は声を失った。

 莉奈はヤバい薬をやっているのかと思った。だが、そんな考えは浅はかだと気づく。

 カプセル状の薬の裏面には文字が書いてあり、これはただの医薬品の薬だからだ。


 僕はそっと蓋を閉めて、カラーボックスに戻した。


 そして居間のソファーに座り、無言になった。

 莉奈は隠し事をしている。

 そしてそれは、莉奈の身体に関することだ。

 大量の薬、注射器、これらは普通じゃあり得ない物だ。

 もし、これを摂取しないといけないなんて、相当重い病の筈なのだ。

 そして僕は莉奈のある言葉を思い出す。


『2年後には死にたい』


 これはまさか彼女の寿命なのではないのか?

 そんな疑問が僕の頭の中によぎっていた。

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