第24話

 「お爺ちゃんはい、クッキーどうぞ!」

 「おーおー、ありがとうリーナちゃん!」

 「うん!ヒロがジュースとか食べ物とか出してくれたから、いっぱいあるからね!」


 クーラーボックスをガッチャンガッチャン開け閉めするリーナリアロリ成人に苦笑するロックマンさんバカ親父


 ああ、平和だ。


 今、俺たちはロームン帝国を出奔(しゅっぽん)して北へストレージの中にあった古代人工遺物アーティファクトの魔導自動車に乗ってドライブしている。


 ポカポカ陽気で北に向かうにしたがって平原が増える。何も無い道をグングンと空に浮かぶ雲を追いかけるように車は快適に走っていく。



 運転席にロックマンさんバカ親父

 助手席に俺

 後部のシートにはリーナリアロリ成人と学者爺ちゃん4人が乗り込んでいるのだ。ビバ万歳優しい世界。



 魔導自動車は魔法陣が描かれ高級な皮がシートに張られているが、見た目は地球で言う所の4列シートのミニバンである。

 ハイエース的な?



 旅の共…… というか爺ちゃん達を含めた家族旅行のようにワイワイと走る車の中で俺は転寝(うたたね)をしながら遺跡の顛末を思い出していた。



 ───あの日──── ベヒさんを送り還し、魔力切れと体力の消費により気絶して朝を迎えるとリーナリアロリ成人にキスされそうになっていた所で目覚めた。


 「うわっ!」

 「あ!ヒロ!おはよう!」


 え?キスしようとしていたのバレて焦らないの?

 ひょっとして…… 日常的にキスされてる?


 俺は自分の唇を指でおさえる…… トゥクン…… いやいや!胸の高鳴りはナシでお願いします!

 リーナリアロリ成人の見た目は小学生の低学年だよ!?俺、落ち着け!



 お腹へったとニパッと笑うリーナリアロリ成人とテントから出ると…… 爺ちゃん達が俺に片膝を地面について無言で頭を下げ出した。


 「なになになに?これ何なの?」

 「むぅ、ヒロキこれは仕方ないのである」

 茶が入ったコップを俺に差し出しながらロックマンさんバカ親父が苦い顔をする。


 「…… ん、ヒロキ、アンブロジウス様がな昨夜のベヒモスとヒロキの会話を見聞していたそうであるな」

 「…… え?」

 マジか?

 汗がブワッと出てくる。え?え?結構ヤバい事を言ってたかな?…… てか盗み見してたの?



 「ヒロ、爺ちゃん達を立たせてあげてよ」

 「お、おおリーナリアロリ成人そうだな…… あの、普通に椅子に座って話しません?」


 落ち着け!落ち着け俺!ライフカードのCMをふと思い出す。30代以上じゃないと分からないだろうな…… 違う!地球ノスタルジー今はダメ!


 「えっと、机に頭を押し付けるが如く礼をしないでもらえます!?」

 爺ちゃん達は促されるままに席について、そのまま最敬礼をしたんだけど席に座った意味ないよね?

 

 「ヒロキ…… アンブロジウス様が言った事は本当であるか?」

 「えっと…… どういう話か全く珍紛漢紛(チンプンカンプン)なんっスけど?」

 ねー!?っとリーナリアロリ成人に笑う。

 えっと…… どんなヒロでも好き、ですか?


 おお…… なんだなんだキュンとするなコラ!


 「む、ヒロキが異なる世界の神様とこの世界の神様の使徒である…… とアンブロジウス様はおっしゃっておる」

 「おへ!?」

 めっちゃアンブロジウス信仰爺ちゃん爺ちゃんに聞かれてるじゃん!

 

 「えっと…… ちゃいますって!」

 「ふむ、、」

 めちゃくちゃ疑われとるな…… なんだろ、ベヒさん召喚して有耶無耶にしてやろうか?


 「うむ、浅はかである。召喚魔法は使うべきではなかった」

 「うっ!」

 ロックマンさんバカ親父がやれやれってしてる!


 「巨大な魔物を呼び寄せる召喚魔法は伝説の魔法じゃから…… 」

 「じゃな…… 魔力の高まりを感じて、さすがの我らも起きたからのぅ…… 」

 「それだけでも十分に首を垂れるに値するからのう」

 爺ちゃん!までやれやれってしてる!

 

 俺は全力で否定したね!


 それはもう!でもさ言うんだよアンブロジウス信仰爺ちゃん爺ちゃんが……

 「ワシを弟子にして下され!老い先短い道ですじゃ!ここで断られたら死にます!」

 絶対に!って目で見てくるんだよ……


 「ねぇ、ヒロ可哀想だよなんとかならない?」

 …… リーナリアロリ成人…… 狙って言ってない?

 「…… ふーっ。爺ちゃん達はこの帝国に未練とかないの?」

 

 コクコクと首を縦に振る。

 研究熱心で信仰心の高い事で…… 全く……

 あれ?孫いる人いなかった?あ、そう自分がいない方が安全…… ?悲しい事言わないでおくれよ……



 「採用!そのかわり俺は目立ちたく無いから爺ちゃん達は俺・リーナリアロリ成人の祖父になってもらいます!」

 ロックマンさんバカ親父の父親または義理の父ね。


 「む、ヒロキ、父が4人いるのは数が合わぬのではないか?」

 「そこはホラ、離婚された嫁さんの父親って事で」

 「…… 結婚もしていないのに、離婚された、で、あるか…… 」


 ロックマンさんバカ親父ショック受けない!

 

 「いや、ヒロ様…… さすがに神の使徒様を孫とは…… 」

 「アンブロジウス信仰爺ちゃん爺ちゃんじゃあこの話なしね」

 「うむぅ、あ…… 飴をあげよう」

 下手か!


 とりあえず、わちゃわちゃっと決まり家族ごっこは継続される事になった。

 もちろん俺たちが実は血が繋がっていない偽家族と言うのも伝えたよ。それで爺ちゃん達は気が軽くなったみたい。よかったふふん。


 ────────「さて、では早くここから退散しようかのう」


 ローワン爺ちゃん魔術爺の仕切り直しで、今現在迫り来るであろう問題が家族会議にあがる。

 

 どうやら、爺ちゃん達は厄介払いもかねてこの遺跡に派遣されたらしい。


 「死ぬのを期待されるレベル?」

 「死ぬのを期待されとるじゃろうな」

 真剣に答えるローワン爺ちゃん魔術爺


 どういう事かと話をかいつまんで聞くと……

 アンブロジウス信仰爺ちゃん爺ちゃんは現法王の弱みや司教の不正を知り。


 ローワン爺ちゃん魔術爺は今の魔術師団に煙たがれ。


 プロロップ爺ちゃんマテリアル爺は貴重な金属の鉱脈を隠蔽したい帝国高官と民衆に還元すべきと対立しており。


 ケリスト爺ちゃん魔道具爺は城の地下に魔剣を封印した事を知る口を塞ぎたいと近衛兵の隊長に睨まれている。


 うっわ!引くわ。

 殺されるフラグすごいじゃん!

 「よし逃げよう!今逃げよう!権力に巻き込まれる前に!」


 俺は即座に決心したね!この辛い物と匂いの合わない食べ物がある国を出ようってね!

 醤油ねぇかなぁ…… 他の異世界転生の小説みたいに過去に日本人が来ていたらストレージから漁れるのに無いんだもんな。


 醤油の作り方なんて知らねえよ!


 …… という風に俺たちは遺跡からコソコソと外に出て魔導車に乗って出奔したわけだ。


 爺ちゃん達に関して無駄に悲しい話とか嫌な話とかダメでしょ?

 ゆるーく、問題が目の前に来るまではせめて楽しく生きたいじゃん!

 金と物は全て持ってるんだからさ!たはー俺ってば苦労知らず!

 

 さぁー!次の国に着いたら爺ちゃん達にもスクロールで楽しく過ごす力をつけてもらおうっと!


 北風が車に当たりグラグラと揺れる。


 家族が増えたのが嬉しくて笑うリーナリアロリ成人


 もっと車のスピードを上げて風と戦おうとするロックマンさんバカ親父


 俺と話そうと頑張るアンブロジウス信仰爺ちゃん爺ちゃん


 車のスピードにビビり青くなるローワン爺ちゃん魔術爺


 車の構造に目を輝かせるプロロップ爺ちゃんマテリアル爺ケリスト爺ちゃん魔道具爺


 あぁ、なんか楽しいなぁ……

 なんとなく本当の家族みたいだなと思いながら俺は助手席で空を見上げながら、ゆっくりと眠りに落ちた。


──────────────────────────

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車の中

カクヨムでは画像挿入出来ないみたいです。


物差しとかテンプレートとか、パソコンで絵を描くとか時間的にムリでござるよーお許し下されー。

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