第12話 騎士テオの挑戦

「テオ・ラドクリフ選手!闘技場入り口までお越しください!」

「行ってきますね」

「油断するなよ」

「はい!」


 闘技場入り口まで歩いたテオは深く呼吸をして、精神を集中させ、光の先を見据えた。闘技場へ続く扉が係員により開けられる。

 太陽の眩しさを感じて、闘技場へと入場した。歓声が響きわたる。

 そして、異国の銅鑼が威勢よく鳴らされた。


「試合開始!」


 メンツは先ほどのミオンが戦ったモンスターと同じである。だが、職業が違えば攻略法も違う。その違いを味わうのが闘技場の醍醐味だろう。

 1戦目はドンポラススが現れた。鳴き声を上げて威嚇する。

 テオは細かな装飾の鞘から、フラタニティを引き抜いた。水色の刀身には血はまだ滲んでいない。微かに雷光のような電撃が刃に走るのをテオは感じる。

 ドンポラススが鋭い爪で引き裂こうととびかかる。それを紙一重で回避するとテオは、そのまま回転斬りを繰り出した。


「ラウンドフォース!」


 目にも止まらない回転斬りで緊急回避をするテオ。そのまま着地すると、得意とする技を早速使った。


「雷鳴閃!」


 稲妻のような斬撃を見舞う。フラタニティの雷撃のおかげで雷鳴閃のダメージも跳ね上がる。大ぶりな袈裟切りをドンポラススに食らわせて、あっという間に倒された。

 すぐさま2回戦に移行する。2回戦の相手はギスアドノス。純白に青味を帯びた鱗の氷の鳥竜が立ちふさがる。

 テオはそこでフラタニティに火炎を纏わせた。実はフラタニティには細かい刃が無数にあり、そこに着火するための油を染み込ませている。

 それを地面に擦りつけて火花を出すことで、魔法剣のような炎の剣を作り出すことが出来るのだ。テオは地面に刃を擦りつけて着火させた。


「おい!あれを見ろ!炎の剣だ」

「スゲエ。あのテオって騎士ナイトは只者じゃないぜ」

「あれなら、確かに氷の鳥竜と戦うにはおあつらえだ」


 フラタニティを疑似的な炎の剣にしたテオは真っ向から突っ込んだ!氷の息を吐いてきた。しかし、テオは炎の剣を盾にしてギスアドノスの額を切り裂いた。

 ギスアドノスが炎で斬られ悶える。これをチャンスと見たテオは一気に攻勢に出た。炎の剣の状態で繰り出せる技だ。


「バーミリオンセイバー!」


 そのままギスアドノスを真っ二つに切り裂いた。切り裂いた痕から血が舞い散る花びらのように華麗に舞っている。

 美しくも恐るべき技に観客も驚きの声を上げる。


「何て必殺技だ!ギスアドノスを一撃で葬るなんて!」

「あの騎士ナイト、只者じゃねえぞ!」

「頑張れ!兄ちゃん!兄ちゃんが勝つ方に賭けているから頑張れ!」

「やれ!やっちまえ!」


 選手控室にいるレンドール達は観客たちのどよめきから歓声に変わるのを聞いて、テオが有利に試合を進めていると確信した。


「どうやら、有利に試合を進めているらしい」

「テオってスゴイよね。普段は誰よりも丁寧な言葉遣いなのに剣を持つと一気に性格が変わるというか」

「そこが魅力的なのよね。わかるわ~私は」


 続いて3回戦に入った。イーオドススだ。先ほどのミオンはイーオドススの猛毒に苦しめられた。

 確かにあの猛毒は食らうとやばい。いかに丈夫な鎧を纏っても猛毒は染み込む。そして気がついた頃には大量の体力が奪われ瀕死になっている場合もあるのだ。

 迂闊に距離を置くと毒液が来る。懐に飛び込めば噛みつきで猛毒を流しこまれる。無傷ではすまないだろう。

 イーオドススが威嚇してくる。甲高い鳴き声を上げて、毒液を吐いてきた。

 紙一重で回避する。


「だが、ここでのこのこ退きさがってたまるか!ラウンドフォース!」


 回転斬りで回避行動をしつつ間合いを詰めたテオは頭が弱点のイーオドススの頭を狙い、連続斬りを叩き込んだ。


「ブレイドダンス!」


 合計6回の剣の舞いを披露したテオ。瞬時に頭にダメージを蓄積させた。イーオドススが気絶をする。頭を揺らして苦しそうに悶える。

 そこにミオンの技と同じものをテオが出した!


「昇竜撃!」


 剣で一回斬りかかった後、残った左手でアッパー攻撃したテオ。観客は驚いた。あれは先ほどの武闘家の技ではないか。騎士ナイトが武闘家の技を使えるなんて、聞いたこともない。

 血まみれになるイーオドススにテオはとどめに雷鳴閃を食らわせ、息の根を止めた。


「おい。騎士ナイトが武闘家の技を使えるなんて聞いたこともないぞ!」

「あれは普通の騎士じゃあねえな」

「すげえ。何かあっという間に終わったぜ!この試合、テオの勝ちだ」


「勝者、テオ・ラドクリフ選手!1次予選突破とする!」


 その瞬間、観客たちが歓声を上げて、騎士の常識を覆した新しい騎士に祝福の言葉をかけた。

 テオは深く礼をして、そして手を振り控室へと戻ってきた。

 そんなに激闘でもなかったようだ。軽く汗を額に滲ませ、ため息をついた。


「ふうっ!どうにかなりましたよ!」

「凄いな、テオ君は。あっさりと勝つなんて」

「このフラタニティのおかげですよ」

「さあ、次は誰かな」


 そこで呼ばれたのはアネット・サザーランドだった。次は彼女の出番だった。


「アネット・サザーランド選手!闘技場入り口までお越しください」

「出番ね。私もテオ君並みにスマートに勝ってくるわ」

「頑張れよ、アネット」

「ええ。任せて」


 次はガンナーのアネットの1次予選が開始されようとしているのであった。

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