誕生日のディナーを適当にすまそうとするな!

 特別な日の食事というのは、やはり特別なものでなくてはならい。


 今月は彼女ちゃんの誕生日がある。毎日あくせく働いて得た少ない賃金をせっせと貯めてできたバースデー資金。思う存分つかってやろう。

 誕プレはおいおい聞くとしてまずはディナーだな。「ここ行きたい!」といった店の予約が取れなかったんじゃかわいそうだし恰好がつかん。行くとこ決めて、楽しい夜を過ごそうじゃないか。なぁ?



「というわけで、誕生日の夜何が食べたい?」


「う~~ん……迷うなぁ……逆に、逆にだよ? 下妻氏は何がいいと思う?」



 なんで自分の誕生日に用意されるものを他人に委ねんねん……まぁ参考までに、ベタなものでも挙げておくか。


「焼肉とかは?」


「え~~~~~? ただ肉焼いたものをタレなどで美味しくただく感じ~~~~~~? 蛮族~~~~~~~」



 焼肉屋の人に怒られるぞお前。



「じゃあ寿司?」



「え~~~~~? 生きた魚をそのままいただく野蛮な料理~~~~~~~?」



 寿司職人なめんなよお前。〆から始まり焼きも炙も高度な技術を習得しとるわ。



「イタリアン……」



「出た~~~~~バブルにやたら持ち上げられ価格が暴騰してしまったイタ飯~~~~~! 美味しいんだけども~~~~確かに美味しんだけども~~~~~~! 価格に釣り合うかどうか微妙な感じのお店筆頭~~~~~~」



 そりゃパスタに限った話じゃないか? 



「え~~それなら……」


「は~~~~~~~も、よござんす。わたしゃね。がっかりですよ下妻氏には。えぇ。こんな時にバッチリに正当を導けないなんてね。政治家の方がまだましな答弁しますよこれなら」


「そうかなぁ……」


「そうですとも! いいですかぁ? まず私の話をよっっっっっく思い出してさい! 下妻氏が最初に焼肉と提案した時、私は何と言ったでしょぉか?」


「……蛮族?」


「正解! やればできんじゃ~~~~ん下妻氏! はい! この蛮族というワード。伏線です。焼肉は確かに美味しいけれどもやはり誕生日はガブリという感じじゃなくてスッ……って感じでいただきたいですからね? つまりお上品なものが食べたいという事! そこで再度質問! お上品な食べ物といえばなに!?」


「……懐石?」


「……はぁ?」


「なわけないよねぇ~~~~~~」


 っぶねー! 危うく地雷踏みかける問ころだったぜ~~~っぶねー!

 というか懐石も上品じゃねぇか。くそ。

 しかしそうなるとなんだろうな上品な料理って。そもそもどの国にも品位のある食べ物ってある気もするから当てはまるもの多いと思うんだけどなぁ……



 と、色々悩んでいる真似をしているがだいたい分かった。



「フランス料理?」


「ピンポン! あたり! まったくもぉ下妻氏~~~~~~もっと早う! 早う答えてくれなかなわんわぁ~~~~~ほんっに! かなわんわんわぁ~~~~~」



 何語だそれは。

 


「ちなみにフレンチの源流はイタリア料理といわれていて、カテリーナがアンリ二世のもとに嫁ぐときに一緒にやってきた料理人達の作った料理が広まったとされている~~~~

あれ? ならイタリア料理でよくない? ってよくないよバカチン! 私はフランス料理が食べたいの! ソースを絡めて”ジュテーム……ボーノ……ジュボーノ”ってい言いたいの!」



 だからもはや何語だよそれは。



「じゃあフランス料理を予約するけどいい?」


「UI! よきにはからってくれたまえ!」


「はいはい……お、なんかフランス風ラーメンだって。ここでもいいんじゃ……」


「くらだらない冗談言うおうとしてるならギロチンだかんね?」


「はい……」




 誕生日はフランス料理のコース(二人で5万円)になった。




 本日のQ&A



 Q.フランス料理食べたいって言われるけどマナーが分かりません




 A.それくらい調べろ。あと不快な食べ方しなければだいたい大丈夫だ。

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