正しい幼なじみの付き合いかた

九十九語

第1章

第1話 翔馬と葵の朝

 みんなは幼なじみにどんなイメージを持っている?

 アニメやライトノベルの様な展開だろうか。

 確かにアニメやライトノベルでは紆余曲折を経て付き合うのがおなじみだろう。

 だが、ここは現実。そんなラブコメ展開が起こることもなければ、そもそも男女の幼なじみなどそうそういないのだ。



 俺、西園寺翔馬さいおんじしゃうまには昔からずっと一緒にいる奴がいる。

 家は隣、小中高ともにクラスはずっと一緒。いわゆる幼なじみというやつだ。

 いや、いまさっき現実で幼なじみなどいないと言ってただろーって、確かに言った。だが安心して欲しい。ここは現実。ラブコメ展開などありはしない。

 これは俺西園寺翔馬とその幼なじみ寺島葵てらしまあおいとの日常である。




「翔馬〜。朝だよ〜。起きないと遅刻しちゃうよ〜」

「ん〜〜」

「今日も起きないね〜。仕方ない」

 そう言って葵は翔馬の耳に口を近づけ



「お寝坊さんな翔馬くん。早く起きないと唇奪っちゃうぞ☆」

「---ん!」



「あ、やっと起きた。おばさんが朝ごはん出来たって」

「あ、ありがとう」

 葵は毎度毎度色んな起こし方をしてくる。

 時には強引に布団を捲り。時には飛び乗ってきたり。色々なレパートリーを持っている。あまり過激なのはやめて欲しいが、起きないのはこちらなのであまり強くは言えない。


「先に下で待ってるから服着替えてから降りてきてね」

 そう言ってリビングへ消えていった葵を見送ってから重い腰を上げて学校に行く準備を始めた。

 リビングへ降りれば葵と母さんが仲良く朝ごはんを食べていた。

「おはよ」

「翔馬やっと起きたのね。早く食べちゃいなさい 」


 葵はいつもうちで朝ごはんを食べる。これは昔からのだ。いつからかは忘れたが葵が俺を起こすのが日課になりその流れで

「葵ちゃん。翔馬を起こしてもらってるかわりっちゃなんだけど朝ごはんうちで食べていかない?」

 という母さんの一声で今に至る。葵も最初は断っていたが母さんに押し切られたかたちだ。


 朝ごはんを食べ終え、身支度を済ませ2人で学校のへ向かう。

「じゃあ」

「いってきます」

「はい。いってらっしゃい」

 俺と葵は県立七草高校に通っている。

 今年の4月で高校2年生になった。

 ちなみにこの高校を選んだ理由は近いから。ただそれだけ。

 長く寝ていたい。その欲望には抗えなかった。


 教室に入ると恭弥きょうやが声をかけてきた。

「おう。おはよう」

「おはよ」

「今日も嫁と仲良く登校か〜」

「葵は幼なじみであって嫁ではない」

 こいつは虎ノとらのえ恭弥。中学からの付き合いだ。1年の時席が隣になったのがきっかけ。それ以来ずっと一緒にいるやつだ。友達思いのいいやつ。

 ただ、俺と葵のことをからかってくるのだけはごめん蒙りたい。

「寺島さんもおはよう」

「おはよう。虎ノ江くん。凛花は?」

「凛花なら日直で職員室に行ったよ」

 角積凛花かどつみりんか。俺らと同じクラスで葵の大親友にして恭弥の彼女。サッカー部のマネージャーをしている。恭弥もサッカー部でそこで出会ったらしい。葵とは恭弥つながりで意気投合。今では大の仲良しだ。

「そっか。ありがとう」

「それより聞いてくれよ〜。昨日さ〜...」

 こうして他愛も無い話をしているとチャイムが鳴った。

「あ、じゃあまた後で」

 そんななんの特筆すべきことがない朝が終わった。

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