第36話36

月曜日。


恒輝は普通に通学したが、明人は体の大事をとって学校に来ない予定になった。


しかしそれは、昨日の明人と電話で聞いていて恒輝はすでに知っていた。


明人が病院に運ばれてから、恒輝と明人の距離は明らかに更に近づいた。


メールだけで無くて、直接電話を何度もやり取りするようになったのだ。


だが、その所為で…


恒輝に迷いが生じてきた。


昨日も実は、御崎と朝から晩まで勉強会をしていた恒輝だったが…


その間も、御崎がじーっと見詰める中、明人と電話で喋る事もあった。


だがやはり、明人には、御崎と勉強していると言うのは秘密にしていた。


どんどん恒輝に、明人に黙っている事への罪悪感が酷くなってきたのだ。


結局恒輝は、後2.3日休むと言っていた明人に、御崎と勉強をしている真実を言う決心をした。


でも、いつ、どう言う風に伝えるかは今日、明日で考えて、明人が登校してきたら言うつもりだった。


しかし…


「キャー!彩峰君、おはよー!もう体大丈夫なのー?」


耳に、長野のキャッキャッした声が聞こえた。


「おはよー!もう大丈夫だよ」


彩峰にそっくりな声がした。


(えっ?!)


恒輝は、聞き間違いかと思いつつ、後ろを振り返った。


すると…


「おはよー!」


すぐ後ろに、休むはずの彩峰が本当に立っていた。


「おいっ!お前、今日から2.3日休むって、昨日言ってたよな?」


恒輝は、焦る。


「うん。でも、だいぶ良くなったし、一日も早く西島君に会いたかったから」


明人は相変わらず、色気と爽やかさが混在する笑顔で、恒輝への好意を隠さない。


そして恒輝も、なんだかんだ戸惑いながらも、その態度を拒否出来なくなっていた。


そこに、横にいた田北がちゃちゃを入れる。


「ヒュ~!彩様、こんな奴の為に泣かせるわぁ!」


「あんだと?誰がこんな奴だ!」


恒輝が田北を睨む。


すると突然…


長野や、他のクラスメイト達のザワつく声が聞こえてきた。


恒輝がそっちの、教室の前方に視線を移すとそこには…


眼鏡を外し髪を切りさっぱりさせた、正に別人のようにイケメンの御崎がいた。


長野達クラスメイトが驚くのは仕方ない。


以前から御崎がイケメンだと感ずいていて、イメチェンを勧めていた恒輝すら、こうやってあらためてて見るとビックリする。


「本当に…御崎君?」


取り巻きと群れていた長野が黒板の前で、御崎の顔をじっと見て聞く。


「うん…」


御崎は、少しだけ微笑む。


けれど流石イケメン…


その威力は絶大だった。


「ウソー!マジうける!マジでイケメン!」


長野が叫ぶと御崎の回りに、長野だけでなく女子達が群がる。


手の平を返したようなクラスメイト達の反応に、恒輝は心底呆れたが…


「おはよう!恒輝!」


御崎が突然、少し離れていた恒輝に向かい言った。


そう言えば昨日恒輝は御崎に、下の名前で呼んでいいか聞かれたのを思い出した。


田北達にもそう呼ばれてたし、軽い気持ちでOKした。


「おお…よう!」


恒輝が右腕をあげたが…


それを見て、明人は固まった。


「えー!アレ、本当に御崎かよ?ちょっと変えただけであんなに変わる?しかし…恒輝!何?何?お前ら急に!御崎と何かあったのー?」


田北が、恒輝の肩を抱いてきて、笑いながら茶化して聞いてくる。


「何んにもねーよ!」


恒輝は、顔が近い田北を剥がそうとする。


だが、そうしている中…


明人と御崎は、ただ静かに無言で、お互いに何か言いたそうに視線を一瞬合わせた。

























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