第22話22
恒輝のクラスに明人が来て、それから3日経った。
その3日目…
全ての授業が終わり、車通学の明人と校門前から別々の帰路についた。
学校から最寄り駅までの10分程の徒歩の間…
その駅から自宅近くの駅までの電車内…
恒輝は、この3日の明人との怒涛の毎日を思い出した。
この3日間…
明人は、最初からクラスにいたかのような馴染みっぷりで、すでに恒輝よりクラスに溶け込んだ。
そして…
やはり男女問わず多数からの、憧景か恋なのか曖昧な視線を向けられても、まるでさもそれが当たり前といった感じの皇帝のような余裕の態度で…
恒輝は、複雑な感じでそれを見ていた。
そして、更に複雑だったのは、やはり、恒輝と明人との差を増々見せつけられた事だった。
体育でバスケをしても、頭脳戦がダメな恒輝と違い明人は優秀だった。
そして、勉強も…
どの科目も優秀な明人に比べ、恒輝は、数学、物理などなど、5教科でテストの補習を明人のいる前で言い渡された。
恒輝から見たら明人は、恒輝が持つような悩みも欠点も無い、正に真のハイオメガだ…
だが、一番複雑なのは、そんな恒輝に、明人が愛想を尽かす所か増々優しくて、立ってる時も話す時も歩く時も、増々明人が恒輝との距離を近づけてくると言う事だった。
恒輝が明人を見ると、明人はいつも優しく微笑んだ。
そして、その微笑みが、色気がダダ漏れで…恒輝は慌てる。
体育のバスケの時は、恒輝のすぐ横で明人が自分の体操服を胸ギリギリまで上げて汗を拭き、引き締まった体とその色気を又見せつけられ…
誘惑されてるようで、又、恒輝は慌て、更に普段他人から叱られるガワなのに、「簡単にそういう事大勢の前ですんな!」と明人に言うガワになった。
恒輝がふと気が付けば、いつも明人の美しい顔がすぐ傍にあり…
キレイな二重の瞳。
長いまつ毛。
白くなめらかな肌にドキっとしてしまう
。
そして、お互いの手が触れそうになり、恒輝がアタフタを隠して慌てる。
常に背の高さの違いも意識させられるし、恒輝が「ウゼぇ!」と一言言えば済む事だが…
明人の顔と優しさを見ると喉に詰まって
、どうしてもその一言が出て来なかった
。
電車を2つ乗り替え、25分程で自宅近くの駅に着いた。
しかし、帰宅中も、回想中も、恒輝には気がかりな事があった。
誰かに、学校からずっと付けられている気がしたからだ。
いや…正確に言えば、この3日間、下校途中ずっとだった。
それが誰かは、ケンカや仲の悪いガラの良く無い奴が多くて思い当たる節が多過ぎて分からない…
「おい!3日もコソコソ隠れて俺の事ツケ回してねぇで、出てこいよ!」
急に恒輝が後ろを振り返り、曲がり角に向かって低い声で言い放った。
すると…
「なーんだ…分かってたんだ…」
すぐに、キャップを目深に被り、サングラスをした男がそこから出て来た。
そして、その2つをパッと取ると、目が覚めるような細身の長身の美形男子が現れた。
恒輝が目を眇めて良く見ると、明人が転校してきた日に、教室の窓から校門を見た時にそこに立っていたオメガの男だった。
オメガらしい優美な美貌と、良く見るとフードパーカーから覗く首元のガードが
、オメガアレルギーの恒輝をイライラさせる。
「で…何だ?俺に何か用か?」
恒輝が、吐き捨てるように威嚇を隠さずそう言った。
するとオメガは、普段他人に邪険に扱われた事が無いかのように一瞬ポカンとしたが、すぐに口角を上げて、恒輝に告げた。
「単刀直入に言うよ…西島恒輝君…俺は
、彩峰明人が以前通ってた高校の同級生で、オメガ同士だったけど…明人と何日か前まで付き合ってたんだ…」
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