第19話19

いつも、そう…


恒輝は、小さい頃、イヤと言う程思い知った。


頑張らない方がいいのだ…


頑張っても…頑張っても…自分は、まともなアルファにはなれない。


しかも、頑張らなくても何でもこなす事こそが、アルファの血であるべきなのだと父母や回りは言う…


努力しても、又、回りから馬鹿にされ、罵られるだけだ。


そして、頑張った分、ただその分傷つくだけだった。


でも、佐々木と立ったまま道着を掴み合い、柔道の乱取りをしなから明人の目を見て恒輝は…


佐々木に、情け無く一本背負いで投げられる予定でわざと自分から崩しかけたフォームを即立て直した。


どうして明人を見て、佐々木にわざと負ける事を止めたのか?


佐々木にわざと負けた方が、恒輝には楽なはずなのに…


恒輝は考えようとしたが、今は、そうしている場合でなかった。


だがそこに佐々木が、恒輝の右足を佐々木のそれですくいにきた。


恒輝は咄嗟に避ける。


明人は、それを見てホッとしたのも束の間。


又恒輝と佐々木が互いの道着を掴み合い

、互いに技を掛けようと何度も攻撃しそれをかわし合う。


その間も恒輝には、明人の痛い程の視線が送られる。


そして、明人の胸は、又、激しく締め付けられるように痛んでいた。


(他人を見て、こんな想いをする事が本当にある…)


(これが恋なんだ…)


明人が恒輝と最初に会った時、生まれて初めて知った痛みでもある。


やがて…


最初はポカーンと見ていたクラスメイト達も、一進一退を繰り返し熱くなってきた乱取りに、無言で息を詰めて釘付けになる。


しかし、何かがおかしいと思ったのは、佐々木だった。


いつものように、いかない…


いつもなら、簡単に相手にかけられるはずの技が、恒輝には封じられ通用しない。


しない所か、佐々木自身に、だんだんと焦りが出てきた。


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