第11話11

「ざっけんな!」


「ふざけてないよ!」


「テっメー!」


「ほら、早く!」


「えっ!?」


「ほら!」


見るからに美味そうなその姿に、恒輝は固まったまま、ハンバーグを暫く凝視した。


「やっぱり…男の手料理ってダメかな?」


いつも堂々として、オメガの自信に満ち溢れている感じの明人が、酷くシュンとした。


その顔を見て恒輝に、何か分からない感情が湧き上がる。


「あのなぁ…昭和かよ!今の時代に、料理すんのに男だからとか女だからとかあんのかよ!」


恒輝の目に、本当に明人の大きな手で作ったとは思えない位、小さくてかわいい一口サイズのハンバーグが映る。


「じゃあほら!西島君!昼から柔道の授業もあるし、食べないと!」


途端に、明人は又ニコっと笑った。


(立ち直りはや!でも、ハっ…ハンバーグ…)


もう一度、恒輝の喉が鳴る。


ついに恒輝は、我慢出来ず明人の持つハンバーグにかぶり付いていた。


「どう?」


「うっ…うまいんじゃねぇか…」


「そう!良かった!」


明人は、満面の笑みを浮かべた。


そして、


恒輝の右下の唇に付いていたデミグラスソースを明人の右人差し指で撫で取り、明人は躊躇いも無くそれをペロっと舐めた。


「おっ…お前!」


「うん…我ながら…ソースはいい出来だね!」


「テメー!」


恒輝の顔が赤くなったのを見て、明人は満足気に微笑んだ。


「ダチがこんな事するか!」


真っ赤になってこっちを見る恒輝の事を

、まるで警戒心と気の強いかわいい小犬がキャンキャンと抗議しているようだと

、明人が思い又笑う。


「普通にやるんじゃないの?友達同士で」


「やらねぇよ!」


「やるよ!」


「ぜってー、やらねぇ!」


「やるよ!」


「ぜぇってぇぇーーー、やらねぇからな!やるかよ!」


そう言いながら恒輝は、


(じゃぁ、あの佐々木のヤローともこんな事すんのかよ?!)


と、モヤモヤして言いかけたが…


明人の嬉しそうな顔を見て、それをぐっと飲み込んだ。







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