黒霧の少女19


けど、陰陽術は基本的に戦う術じゃない。しかも今の俺の力量じゃ、精々が防御で精一杯か。


決め手は魔法、それも一撃必殺に成りうる物でないと…


魔を送る魔法は適性がない、力量では勝ち目がない。……存在その物を無かった事にするしか……


転移を多用しつつ札で結界を構築し始める。


まるで此方の飛ぶ場所を察知していたかのように能面の様な燈火の顔が転移した場所を向き、途端に目が合った。時間にして、1秒の更に半分。


空の足元の影が独りでに動き出す。空は思考に没頭しすぎて咄嗟には反応できず、足を取られてしまう。その影は足にまとわりつき、勢いよく燈火の元にに引っ張った。


片足では全体重を支えきれず尻餅をつき、苦悶の表情をするが、燈火に近づいてしまう。それどころでは無い。幾らこの場所では死なないとはいえ、こんなにも呆気なく、足掻くことすら出来ず簡単に敗北出来るわけがなかった。


慌てて転移を試みるが発動出来ない!


きっとここで負けたら俺はこのままで終わる。


「そんなのを許せるわけないだろぉ!」


空が願った。空は知った。これらに対して心という曖昧なものが何かと繋がった。


空が、無造作に影に放った札は、影を斥け、空の両の手には新たな力が、産まれていた。


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