黒霧の少女16


強い光を受けて目をつぶる。その光は暫く続き、弱まってきた所で目を覆っていた腕を退かす。視界にはさっきまでいた2人の姿はいなかった。


これは状況的に再試が始まったか?過去の例から行くと最強と当たる訳だが、俺の中では最強が入れ替わった。と、言うことは咲が現れるのか……。


考えただけで冷や汗が背筋を伝う。


燈火でも、充分過ぎるほどの壁を感じるのに、その更に先を見たばかり。知らず、鳥肌が立つ。


しかし、目の前に現れたのは燈火だった。


何故、と思うより先に燈火との闘いが綺麗さっぱり記憶から抜けていることに気づく。


あれ?燈火って、どんな魔法使うんだ?なんで俺はそれを知らない。


空はそれ以上の考え事は出来なかった。


ノーモーションから燈火を中心に電撃が、波打って、迫ってくる。


突然の事で対応が遅れた空は一か八か転移するしかないと思い、発動させる。


本来、転移は自身を1度無に帰し、移動する場所に自身を再構築する事である。


難易度は高いなんてものではなく、失敗すれば死は免れないため、禁術指定にされている魔法だ。


では、空はどうやってその禁術を行使してるかといえば、自身の核、DNAを着地地点とし、時の魔法で、細胞から、自分自身へと戻して使うと言う、荒業な使い方だ。この方法なら、リスクはほぼ無い。空にしか使えない。


しかし、空が、転移を使用する際、必ず陣を形成し、時間を掛けて魔法を発動させている。


緊急回避としては使えない魔法のはずだ。本来ならば。


この部屋にはカラクリがある。それは空のあずかり知らぬ事だった。


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