霊の10

『でも、なんであんなことをしたの?もう死んでる人間の為に、ほっといたって良かったのに』

 彼女はバッグの口を付属のベルトでしっかり締めると、俺をまた呆れたような顔で見た。

『俺はこう見えて結構気紛れな男でね。』

 それだけ答えると、俺はポケットを探り、銀色のスキットルを取り出した。

 中に入っているのはバーボンだ。

『あんたもるかね?』

『遠慮しとくわ。それより』

 そう言って彼女は俺の書いたあの『契約書』を取り出し、空中高く放り上げる。

 すると、契約書は蒼白い炎に包まれ、たちまち灰になってしまった。

『おい、あの契約書を灰にしちまったら、俺の魂が・・・・』

『あんたみたいな呑ん兵衛の魂なんか貰ったって仕方ないわ』

 彼女はそう言うと、右手を上げ、人差し指を突き上げる。

 魔法陣がさっきとは逆回転に回り、彼女の姿が立ち上った煙に吸い込まれるように消えていった。


 支離滅裂な話で申し訳ない。

 これで、今回の報告は終わりだ。

”お前みたいな現実論者にしてはおとぎ話みたいだな”だって?

 前にも言ったろ。

 俺はウソと坊主の頭だけは結ったことがないってさ!


                          終わり

*)この物語はフィクションであり、登場人物その他全ては、作者の想像の産物であります。


 

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事故物件奇譚 冷門 風之助  @yamato2673nippon

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