『世界史リブレット13 東アジアの「近世」』:NO SMOKING,NO LIFE

 本を読んで考えたことについてあれこれ書いていきます。


 今日の本は『世界史リブレット13 東アジアの「近世」』です。

 作者は岸本美緒さん。山川出版から出ています。

 この本の銀を扱った部分については別の場所で書きました。

 今日の話題はタバコです。


 タバコは明代に中国へ入って来たようですが、やがて対遊牧民の前線である北方でも吸われるようになりました。

 厳しく禁止された時期もありましたが、兵士から不満の声が上がって解除されたようです。

 ベトナム戦争のときに、米軍がありとあらゆる好品こうひんをベトナムへ持ち込んだ話を思い出させる逸話です。

 ホワイトハウスがドラッグの使用禁止を徹底しようとして、ベトコンと戦っているアメリカ兵がクレームをつけた、というような話だったのでしょうか。

 明の兵士は、寒さが原因の病気はタバコでしか治らないと訴えたそうです。

 暖かい華南から来た兵は、真剣にそう考えていたのかもしれませんが、さてどうでしょう。


 アメリカ大陸で「発見」されたタバコは、十六世紀末から十七世紀のはじめにかけて東アジアにもたらされました。

 現在もタバコ好きで知られる日本人ですが、最初から相性がよかったようで、持ち込まれてから十年で、だれもかれもが吸うようになりました。

 子供も女性も。


 タバコが広まるとすぐに、日本各地で禁煙運動がはじまりました。

 その理由は、一つひとつが実にごもっともな内容でした。

 一、食糧にならないタバコの栽培で穀物の生産が阻害される

 二、健康に有害である

 三、たばこ代が家計を圧迫する

 四、火事の原因になる

 反論は不可能だったでしょうが、煙の誘惑には政者せいしゃすらもおそらく勝てず、その後のけいについては語るまでもありません。


 近世の東アジアにおけるヒト・モノ・カネの流れというのは、なかなかダイナミックです。

 それを銀とタバコを例に説明しました。

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