赤砂漠の狼

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赤砂漠の狼


 レッドデザート、この世界を人々はそう呼んでいる。


 水も、食料も資源もほとんどないこの枯れ果てた世界で、人々は希望を失くし、今日を生きる為だけに殺戮の限りを尽くす。


 そんな奪い、奪われ、殺し殺され合う、弱肉強食の世界「マーズ」に二人の子供がいた。


 ❇︎


「ぷはーー! やっぱエネマグ最高ー!」


「はぁー、いつものことだけど、よくそんなに美味しく飲めるな。これってマグマからできてるんだぞ? 正式名称はエナジーマグマドリンクだ。毎日一本ずつもらえるとは言っても、こんなクソ不味い飲み物飲んでらんねーよ」


「でも、これは一日に必要なエネルギーをたった一本で補ってくれるんだよ? 全く、これを美味しく飲めないなんて、アキラは可哀想な人生ね」


「ったく、これを美味しく飲めるのはハナコだけだっつーの!」


 ボクはハナコ、大のエネマグ信者だ。ご覧の通りエネマグはみんなに大変不評だ。でも、これがなきゃこの世界では生きていけないから、渋々飲んでるんだ。


 まあ、ボクは大好物だから毎日三本くらい飲んでるけどねっ!


 このエネマグは一日一本、自販機からゲットできる。どういう仕組みか知らないけど、その日初めて自販機のボタンを押すと、ガシャコン、とエネマグが落ちてくる。


 一回ボタンを押すと、その日は別の自販機を探したところで貰えない。そういうルールなんだ。


 え、じゃあなんで一日に三本も飲めるのか、って? それは勿論、狩りをするんだよ!


「ほーら、アキラそろそろ行くよ! エネマグがボクを呼んでいる!」


「はいはい、わーったよ。次はどこら辺に行くんだ? 西か? 東か?」


「うーん、北北東!」


「は? まあいいけどよ」


「ふふ、アキラはほんと優しいよね、いつもありがとっ!」


 そう言ってボクはアキラに抱きついた。アキラの能力は「テレポート」いわゆる転移だ。そこでも好きな所、とまでは行かないけどざっくりあっち、みたいな感じで飛べるらしい。そして、一緒に飛ぶには体が触れてなきゃいけない。


「う、うっせー! ほら、行くぞっ「テレポート」!」


「もーう、良い加減慣れてよね、全く」


 そうやってボク達の狩りの時間が始まるのだった。


 ❇︎


「んー、あんまり人いないねー。アキラー、ちゃんと人がいるところ狙ってるー?」


「うっせー! お前が集中力乱してくるからだろ!」


「え、ボク何かしたっけー?」


「は! お前がっ!」


「ボクがー?」


「……っ! う、うっせーなんでもねーよ! ほら行くぞ! その内誰かいるだろ、そこら辺に!」


 ふふふふ、ボクはアキラをからかうのが大好きだ。だって、こんな面白い反応する男の子他にいないでしょ?


 能力の相性もピッタリだし、アキラは永遠の相棒だ。


「おーい、何してんだ早くしろー。置いてくぞー」


「うん、今行く!」


 こうやって絶対に置いていかないところも、ポイント高いよね。


 ❇︎


「おっ、集落があるぞ! これで今日の飯には困らねーみたいだな!」


 しばらく歩いていると、アキラが集落を見つけてくれた。アキラは目もいいからこう言う時に非常に便利だ。


「でかしたぞ、アキラ! では行くとしよう!」


「おうっ!」


 この世界は荒んでいる。人々は希望なんてなく、ただ今日を生きるために生きている。目の前のエサに群がり、欲望を満たそうとする獣たちだ。


「おう、嬢ちゃんたちこんなところで何してんだ? お散歩か? それにしてはあまりにも不用心すぎやしないかい? お母さんに外に出るなと言われなかったか?」


「お母さんなら、とっくに死んだよ」


「へっ、そうかよ。なら、俺が可愛がってあげるぜ! くらえっ、【チェインホールド】!」


「もー、おじさんったらせっかちなんだからー。激しく攻め合うのもいいけど、その前にゲームしよっか!」


 ドクンッ


 ボクがそう言うと、おじさんの動きがピタリと止まった。ボクの能力だ。


「な、なんだこれは! 一体どうなってやがる!」


「ぷぷぷ、おじさん、その態勢で怒鳴られても全然怖くないよ? 鏡持ってこよっか、とっても面白い格好だよ?」


 目の前のおじさんはボクを捕まえようとしたまま固まってる。そしてその状態で口だけをパクパクを動かしてるんだ。面白くないわけがない。


「チッ、ふざけたこと言ってないでさっさと解放しろ、さもないとお前をぶっ殺すぞ!」


「いやいやだからそんな体勢で言っても無駄だって。それよりゲームしようよ」


「げ、ゲームだと?」


「お、ようやく話を聞く気になってくれたみたいだね。おじさんが静かになるまで五分二十秒かかりました。大人なんだからもうちょっと早くして欲しいね。じゃあルール説明するよ?」


「いいから早くしろ! そのゲームとやらが終わったら今すぐぶっ殺してやる!」


「まあまあ、落ち着いて落ち着いて。ルールは簡単、今からボクが嘘を吐くから見破って欲しいんだ。ボクはたくさん嘘着くけどおじさんは一つでいいよ? じゃあ、始めよっか!」


「は、おい、どう言うことだよ!」


「ルール説明は終わったよ? じゃーあー、ボクの年は十二歳、可愛いでしょー! 出身は孤児院だよ! あとはーボクの好物はエネマグだよ!」


「エネマグだって?」


「うん! じゃあこのくらいにしてあげる! 因みに、間違えたらおじさん死ぬからね?」


「ひっ!」


 ここはオーラを最大限にして脅しておく。そうした方がビビってくれるからね。まあ、こんな可愛い見た目をしてたら、あんまり意味ないかもだけど。


「お、夜になったみたいだね、そろそろ時間だ。ボクの嘘は分かったかな?」


「はーっはっはー!  簡単すぎて笑ってしまったぜ! 嘘はエネマグが好き、って奴に見せかけての孤児院出身って奴だろ? 出会い頭にお母さんが死んだってポロってたもんな! 大人を甘く見るんじゃねーよ、クソガキが!簡単すぎて話にならねーなー!」


「はい、ブッブー! 残念でしたー!」


「え?」


「因みに、嘘は「今からボクが嘘を吐く」ってとこだよ? その小さい頭でいーっぱい考えてボクが最初に言ったこと思い出してくれたみたいだけど、残念、あれも嘘だったんだ。ごめんね? じゃあ、バイバイ!」


 グサッ


 そうやってボク達は今日初めてあったおじさんと別れを告げた。


 ❇︎



 アキラのテレポートでボク達の拠点へと帰ってきた。


「ふぅー! 大量大量! 今日もカモだったねー! じゃエネマグはもーらいっと!」


「はあ、相変わらずお前の能力はえげつないし、エネマグ好きだなほんと。でも、それで言うと普通はみんなエネマグに引っかかるけど、今回のおじさんは孤児院の方だったな。少しは頭よかったのか?」


「まあ、頭がよかったとしても、そこまでってことでしょ。こっちにはルールを知ってるっていうアドバンテージがあるからね!」


「まあ、ルール説明されたら普通それに従うだろうな。現にああやって体が動かなくなったら何もできないしな。でも、なんでハナコは女なのに、狼少年っていう能力なんだろうな?」


 そう、ボクの能力は狼少年。強制的に相手をゲームに参加させて嘘を見破れるかのゲームをするんだ。相手が嘘を見破れなかったら、そのまま体が固まったままで、もし見破ることができたら、多分ボクが固まる。


 まだ負けたことないからわかんないんだよね。


「にしてもこれでハナコの連勝記録は更新かー! ほんと強いよなー、負ける気がしねー。なんつーか相性が良いっていうか、ハナコにピッタリだよな! ま、負けても俺がいるから安心しろよな!」


「アキラは別に強くないでしょー! だからボクを運んでくれるだけで充分だよ! はい、今日の戦利品!」


「お、おう。サンキューな」


 ボクの方針として、基本的に人は殺さない。流石に可哀想だからね。でも、その代わり身ぐるみはキチンと剥いでくよ? そうじゃないとエネマグが飲めないからね。


 え? さっきのおじさん殺してたじゃないかって?


 チッチッチ、殺してないよ、アレはもし追いかけられても大丈夫なように、足を刺したんだ。


 まあ、今はアキラがいるけど一人の時は徒歩で逃げなきゃだからね。その時の名残りみたいなもんかな。


 基本的にお金は半分こで、もし珍しく食べ物を持ってたりしたらアキラにあげてる。ボクはエネマグで充分だからね。


 売れるものもあれば売るって感じだけど、そんなもの持ってる人なんかそうそういない。みんな、ギリギリ生きていける最低限の持ち物しか持ってない。


 中には、毎日動物を食べているお金持ちのお偉いさんなんかもいるらしいけど、ボクらからしたら無縁の存在だよね。


 こんな世界でどうやってそんなことができるのか、不思議で仕方がない。


「なあハナコ、やっぱ最近、大人たちの様子がおかしくねーか?」


「うん、そうだね。さっきのおじさんとかも急に襲いかかってきたし、全体的にピリピリしてる気がする」


「あぁ、これは何か臭うな。俺たちも注意したほうがいいかもしれねーな」


「大丈夫でしょ! だって、もしもの時はアキラが守ってくれるんでしょ?」


「あっ、あったりめーだろ! だから心配すんな!」


「もー、アキラから言い出したくせにー! もう、今日はエネマグ三本飲んだしもう寝るよー、お休み」


「あっ、ちょ! ったく、俺にもお休みを言わせろよ……」


 後ろの方から、アキラが何か言ってる声が聞こえたけど、よく聞こえなかった。


 それより、ボクも最近の大人達のことは気になる。ボクからすると、みんな単細胞になって騙しやすくなるのはいいんだけど、アキラのいう通り、何か怪しい。


 それに、孤児院のマザーにも被害が出るかもしれない。どうにかしたいところだ。


 どうすべきか、その答えが出ないまま、ボクは夢の中へと潜ってしまった。


 ❇︎


「おっはよーアキラ!」


「あぁ、おはよう」


「ん、どうしたの? ちょっと暗くない? もーそんな時はエネマグ! ほらほら自販機行くよー!」


「おいおい、押すなって! 自分で歩くって、うぉっ! おい、急にやめるなよ、危ないだろ!」


「ふふふ、面白いんだからー! はい、じゃあ本日のエネマグ投下!」


「あっ、いつの間に! うぇ、やっぱ不味いよなエネマグ。ほんとよく飲めるよハナコは、尊敬するぜ」


「へへーん! もっと尊敬するのだー」


 今日もいつもと変わらぬ日だった。そう、この瞬間までは。


 ッドーン!


「おいおい、ここには旨そうな肉がたくさんあるなぁ! ちょっと腹ごなしといくかぁ! 【超斬撃】ィ!」


「危ないっ! 【テレポート】」


「ありがと、アキラ、今回は流石に危なかったね。それにしてもどっからコイツら湧いてきたんだ? とりあえずアキラは孤児院のみんなに地下通路から逃げるように言って」


「いや、俺も戦う!」


「行って! 早くしないと手遅れになっちゃう。それに孤児院の皆んなは絶対に殺させたくない」


「分かった。俺が帰ってくるまでに絶対に生きてるんだぞ、約束だからな」


「うん、約束する」


 そう言ってアキラは皆のところに向かった。これで安心して戦える。


「ゲームを始めよう!」


「うぉっ、なんだこれは?」


「ふふふっ、ボクの能力だよ。今から言う三つのことに一つだけ嘘が入ってるから、当ててみて? 当てれたら解放してあげるから」


「ふんっ、なんだその子供騙しはこっちは遊びじゃねーんだよ!」


「まあまあ、体も動かないんだし、少しくらい付き合ってもいいんじゃない? まず一つ目、ボクはエネマグが大好きなんだ。二つ目はボクの好きな人がさっきいた男の子ってこと。三つ目はそうだな、まだボクは人を殺したことがないってこと。さあ、どれが嘘でしょう?」


「はぁ? んなもんエネマグが好きってことに決まってんだろ! アレを好きなやつなんていねーだろ!」


「はい残念賞ー! そんな君にはとっておきのプレゼントを」


 グサッ


 今日、ボクは初めて人を殺した。


「あっ、おいハナコ!」


「あ、アキラ……ちょっと疲れたから、もう寝るね」


「おい、さっき起きたばっかだろ!? って、コレ……」


 そこでボクの意識は途絶えてしまった。


 ❇︎


 

「うぅ……ここは?」


「お、ハナコ! やっと目が覚めたのか、全然起きないから心配したぜ、全く。戻ってきたら血だらけで、本当に、本当にびっくりしたんだからな!」


「ご、ごめん……」


「あ、あぁ。とにかく今はゆっくり休もう、な?」


 ✴︎


「ほう、彼女が言葉で人を倒す者ですか。これは良い情報を得ることができましたね。隣にいた彼の情報も分かったのはかなりの手柄でしょう。今回の駒は役に立ちましたね。まあ、死んだけど。

 よし、じゃあ次は可愛い可愛い女の子を食べようか。もう準備はできたみたいだし、明日はパーティを開こうか!」


「はっ、いくらほど奴らを投入しますか?」


「んー、軽く十くらいで良いんじゃない?」


「はっ、かしこまりました。では、夜明けと同時に出発いたします」


「あぁ、頼むよ」


 男は一人部屋に残り、笑みを浮かべた。明日のご馳走に思いを馳せて。


 ✴︎


 今日は久しぶりにゆっくりとする休みの日だ。アキラが提案してくれたんだけど、たまにはこういう日もあっても良いかもしれない。 


 

 ッドーン!



 そんな怠惰で幸せな考えも吹き飛ぶ、爆発音。これは昨日と全く同じ音、いや昨日よりも更に大きい音だ。


「アキラ!」「ハナコ!」


 ボクたちは無言で意思疎通を図った。昨日と同じようにアキラは皆の避難に、私は敵の排除をするのだ。


 ただ、昨日と同じようには行かなかった。


「なっ! 数が増えてる……」


 そう、敵は一人じゃなかったのだ。その数およそ十名以上、これはかなり不味い。ボクのスキルは大人数相手でも効くのは効くけど、コイツら普通の人間じゃない。


 目が完全にラリっちゃってる。これは受け答えも厳しいかもしれない。でも、ボクはやるしかない!


「ゲームをしよう!」


 すると、目の前の敵が動きを止めた。そしてここからが勝負だ、確実に勝ちにいく。


「ボクが今から嘘を吐くからそれが何か当ててね。ボクは男の子でー、孤児院の出身でー、エネマグが大好きなんだ〜! さぁ、夜がきたよ、嘘はどれでしょう?」


「「「「…………」」」」


「ん? 嘘はどれだと思う?」


 回答が帰ってこない。不味い、不味い不味い不味い不味い。ボクの能力の弱点が見破られたっていうのか? この能力の弱点はそう、答えない、という選択も出来るんだ。そして、それが実行されると、、、


「お、ホントだ。体が動くぜ! ならさっさと連れていくか!」


 そう、再び時が動き始めるんだ。そして、ボクはされるがままに、捕まえられて、意識が飛ばされてしまった。


「アキ、ラ……」


 ❇︎


「うぅ……」


「おぉ、やっと目覚めてくれたみたいだね。流石に意識がないままでは、面白くないからね。折角のお嬢さんだ、存分に楽しみたいだろう?」


 目の前には一人の男がいた。玉座の様な椅子に座ってボクを見下している。もちろんボクは鎖に繋がれている。これは絶体絶命だ。


 これからボクはこの男に最大限の屈辱を味わわせられるのだろう。


「ふふふっ、そんなに怯えなくても大丈夫だよ。僕はそこらの下衆どもと違ってキミをおもちゃの様に扱うつもりはないからね」


「えっ……?」


「それよりも気にならないかい? なんで君の能力が効かなかったのか。それはね、その前の襲撃に関係してるんだよね。たった一人の捨て駒に対して君は丁寧に能力を使ってくれてくれた。そして僕は気づいてしまったんだ。もし、これに答えなければどうなるんだろう、とね。

 君の能力は確かに強い、一見無敵に見えるほどだ。ただ、そんな能力は存在しない。どんな能力にも弱点はある。僕はそれを見つけたってわけだ」


 くっ、あの時の襲撃がただの偵察だったなんて……!


「僕はねただ、僕は美味しい美味しい、晩御飯を食べようとしているだけなんだ。これは誰にも止められない欲望だ。

 人は職に飢えている。毎日同じものを食べるしかなく、食への喜びも見失ってる。しかし、それではまるで家畜みたいじゃないか。そこで僕は気づいたんだよ、じゃあ人間も美味しいんじゃないかってね」


「え。。。。」


「ふふ、つまりはそういうこと」


 パチン!


 目の前の男が指を鳴らした。すると、どこにいたのか、剣をもった男が一人現れ、私の側に立った。


 その男がこれから取る行動はもう一つしかないだろう。そう、ボクの首をとるつもりだ。これはもう、チェックメイトだね、、、


 ザシュッ


「くはっ! た、助けにきたぞ、ハナコ!」


 死を覚悟したボクの前に現れたのは、アキラだった。


「アキラ! どうしてここに!」


 体の正面が斜めに大きく切り裂かれていて、血も出ている。そんな、、


「ハナ、コ、まだ諦めちゃいけないよ。まだ希望はある。お前は俺の最強なんだから、こんな奴に負けんじゃねーよ」


 そう言葉を放り絞ってガクッと、意識を失ってしまった。


「別れの挨拶は済んだかな? 僕は男の子には興味がないんだよ、じゃあそろそろ良いかな?」


「……さない」


「え、なんだって?」


「許さない、許さない! お前ら全員殺してやる! ゲームの時間だっ!!」


「へぇ、このごに及んでまだやるんだ。まあ君の種は割れてるし少しくらい付き合ってあげるよ。食前の運動はご飯を皿に美味しくしてくれるからね」


「今からボクが嘘をつく。それを当てられたら、お前の勝ちだ。ボクはエネマグ大好きな少女、アキラのことが心の底から大好きで、殺した奴を死ぬほど憎んでいて、本気で殺すつもりだ。さぁ、夜を始めようか」


「ふふふふー、言わなかったっけ? 君の戦いは見てたって、どうせいつもの通り嘘をつくのところが嘘なんだろ? でも、僕は答えないよ? だって、それで勝てるんだもん」


 ジリジリとタイムリミットが迫ってくる。それでも沈黙は続く。目の前の男は不敵な笑みを浮かべて黙っている。


「さぁ、これで時間切れかな?」


 タイムリミットだ、お前らのな。


 ブシャッ!


 目の前の男以外、この場にいた全ての人間の首が弾け飛んだ。


「なっ!? これはどういうことだ、何が起きたんだ!?」


「ふふふ、これは突然死、会議の間何も喋らなかった不届き者の末路さ。何も答えないは確かに有用だけど、流石に考えてるフリくらいはしないとねぇ?」


「き、貴様ぁああ! 見逃しておいたら調子に乗りやがって、死にやがれぇっ! 【触手】!」


「ふっ、本性を出したみたいだね、でもも遅いよ。朝がきたみたいだ」


 ドクンッ!


「なっ!?」


「さぁ、どうする? 次答えないと死んじゃうよ? もう一人しか残っていないから喋るだけじゃ意味ないし、これがラストチャンスだよ。さぁ、ボクの嘘はなんでしょう?」


「な、なんだとっ? くっ、クククク、そういうことか。あまり大人を舐めない方が良い。最初の嘘を吐く、と見せかけて今言った、次答えないと死ぬ、だろう? 別に答えなくても死なないのだろう。だが、どうせこのゲームが長引くだけならここで終わらせてやろう、俺は今すぐにでも貴様を食べたいのだ!」


「はい、ブッブー! 残念でしたー! あなたに嘘は見抜けないよ、じゃあお疲れさん」


 グサっ、


 ボクは相手の心臓をナイフで貫いた。


「はぁ」


 ボクはアキラの元に歩み寄った。今は亡きアキラの元へ。


 なんで先にいっちゃうんだよ。一緒にいくって約束したじゃん、ボクを守ってくれるっていったじゃん、なんでそう、いつもいつも……


 ボクの目からは何かが溢れた。


 なんだろうコレは、暖かくて冷たい、抑えきれない感情と共に止めどめもなく零れていく。


「これが涙、、、」


 ボクはそのままアキラの隣になるように意識を手放してしまった。


 ❇︎


「おーい、いつまで寝てるんだよ、おーい! 帰るぞー!」


 ボクは聞き慣れた、でも聞こえるはずのない声で目が覚めた。そうか、コレはおそらく夢なんだろう。


「俺にピッタリ抱きついてきて、そんなに寂しがりやだったのかー。にしても流石はハナコだな! こんな大人たちを全員倒しちゃうとはな!」


 ん、なんか夢にしてはリアルじゃない? それになんか長尺喋りすぎじゃない?


「え、アキラ? アキラ!?」


「うぉっ、どうした?」


「え、なんで生きてるの、なんで生きてるの!?」


「あ、あー。俺が死んだと思ってたのか? ふっ、甘いな実は俺はテレポートの力を応用させて、自分の体の一部を一瞬、異空間に飛ばすっていう技術を身につけたんだ。もともとテレポートは亜空間を一回経由してるってのが体感的に分かったからこっそり練習してたんだよな! 

 どうだ、驚いただろ! まあ、本番はちょっとミスってかすり傷くらっちゃったけどな」


「かすり、傷……?」


「あぁ、かすり傷だ、心配すんな!」


「でも、ずっと倒れてた……」


「あぁ、あれはまだ慣れてないから疲れて寝ちまったみたいだ。まあ、俺は戦闘には役に立たないから別に良いかなって」


「……」


「……」


「帰る」


「は? なんで怒ってんの、俺なんかしたか?」


「帰る」


「おいおいおい、俺はちゃんと有言実行したんだぜ? 言っただろ、俺がお前を守るって」


「アキラ……」


「ハナコ、帰る前に一つ言いたいことがあるんだ。俺は……俺、アキラはお前のことが好きなんだ! コレからも、ずっと一緒に旅をして、ゆくゆくは結婚を……」


「あ、アキラ……」


「俺と、一緒になってくれ!」


「アキラ、ボクも一つ言わなきゃいけないことがあるんだ」


「ん、なんだ?」


「実はボク、、、男なんだ」

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