第11話 日本語文法(11):アスペクト

 動詞の動きの今どの段階にいるのかを示すために、動詞に付与する補助動詞をまとめて「アスペクト」と呼びます。

 こう書いてもピンと来ないと思いますので、例を挙げてまいります。





アスペクトの形式

直前:〜ところだ 例.絵を描くところだ。 意気込み

直前:〜かける  例.絵を描きかける。  これからやろうとする

開始:〜始める  例.絵を描き始める。  スタートする

開始:〜てくる  例.雨が降ってくる。  すでにスタートしている

開始:〜ていく  例.絵を描いていく。  始めて少し進めている

進行:〜ている  例.絵を描いている。  すでに進めている

進行:〜つつある 例.絵を描きつつある。 まだ触れ始めたばかり 

継続:〜続ける  例.絵を描き続ける。  どんどん進めていく

終了:〜終わる  例.絵が描き終わる。  ここでよいと終わりにする

   〜終える  例.絵を描き終える。  自然と終わりを迎える

終了:〜やむ   例.雨が降りやむ。   続いていたものが断ち切れる

完了:〜てしまう 例.水を飲んでしまう。 すでに到達点まで至っている

完了:〜きる   例.絵を描ききる。   最後まで突き詰めて終える

完了:〜つくす  例.絵を描きつくす。  やれるところまでとことんやる

結果:〜ている  例.窓が開いている。  結果を提示する

結果:〜てある  例.絵が描いてある。  すでに意図的に成果が出ている




「〜ている」には2パターンある

 上記の一覧を見て、「〜ている」が二回出ていることに気づきましたか。

 実は「〜ている」は自動詞に付くか、他動詞に付くかで役割が変わってしまうのです。

 まず「窓を開ける。」という他動詞「開ける」に付くとどうなるか。

 「窓を開けている。」つまり今窓が開く途中で進行、動作を表しています。現代進行形といえます。

 では「窓が開く。」という自動詞「開く」に付くとどうなるか。 

 「窓が開いている。」つまりすでに窓は開いたあとで結果、変化を表してます。

 もちろん例外はありますが、単純にするとこうなります。





「〜てある」

 本動詞として「いる」と「ある」は存在の状態を示します。

 そして生物は「いる」、無生物は「ある」を用います。

 「恋人がいる。」「プラモデルがある。」と言いますが、「恋人がある。」「プラモデルがいる。」とは言いませんよね。(人の物化(擬物法)、物の人化(擬人法)は除きます)。

 無生物の存在に用いる「ある」を用いた補助動詞「〜てある」は「〜ている」とは少し勝手が異なります。

 「窓を開けてある。」「絵が描いてある。」は使えますが、「窓が開いてある。」はあまり用いません。

 「〜ている」との決定的な違いは、(話者以外の)何者かの仕業つまり作為を感じさせてその成果が表されています。「〜ている」は話者自らの作為で成果を出す状態を指します。

 「窓を開けてある。」は「誰かが窓を開けたのがそのまま」というニュアンスになります。

 「絵が描いてある。」は「誰かが絵を描いてそれが見えるところに存在する」ニュアンスになります。

 ただしペアとなる自動詞を持たない他動詞では、動作主の作為は感じられなくなります。

 「傘が置いてある。」「日付が印刷してある」はどちらも「無生物が存在する」という状態を出ません。




日本語学習で憶えたいポイント

(1)動詞にはどこまで進行しているのかを示す補助動詞がある

(2)自動詞・他動詞で扱いがことなる「〜ている」

(3)「〜ている」は生物、「〜てある」は無生物かつ何者かの作為を表す




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