第7話 パーティ

「はじめまして。」



 靄のかかった真っ白な空間に、サガンは意識を取り戻した。



 目の前には、珍妙な風貌の、くちばしを持つ魔物の姿があった。


 その細長いフォルムは、二足歩行の大きな鳥のように見えた。


 黄色の羽毛がふわふわと揺れ、




「やっと会えたね。」


 そいつはそう言うと、大きな丸い目玉をくるくると動かしたが、サガンと目線が合うことはなかった。




「お前は誰だ。」


 サガンは聞いたが、それは名乗ってはくれなかった。



「君は今から目覚める。


 瀕死の君を救ったのはホノカという少女だよ。


 君と彼女は出会う運命にある。


 これから君は旅を共にするだろう。


 この世界とあの世界にとって二人は特別な存在なんだ。」




「何を言っている、この魔物め!」


 サガンは槍をそれに向けた。


 その時。サガンは自身の怪我が消えていることに気づいた。


「ここは夢の空間さ。君の怪我は無かったことにしたよ。この空間のルールは僕さ。


 その槍を消し去ることも僕には容易にできるんだよ。」




「だけれど、この槍には何か特別な何かを感じるんだ。


 恨みや、怨念とも違う、呪いの類とも違う、君はどこでこれを?」



 サガンは黙っていたが、それは納得したように頷いた。



「そうなんだね。よくわかった。


 君はずっとそれを守っていかなければ行けないみたいだね。


 槍を守るだなんて矛盾していると思ったかな?


 だけれど、『言葉』や『思い』というのは強い力を持っているんだ。


 概念とは、イメージする気持ちなんだよ。


『思い』の強さは精神力に影響する。


 大事なのはいつも想像力を持つことだよ。


 君はもっと強くなれる。


 想像よりもずっとね。」





「俺は強くなる。誰よりも。」





「君に教えておかないといけないことがある。君の目的についてね。」





「黒髪の魔法使いはどこにいる。」





「あれは災厄を呼ぶもの。この世の理から外された存在だよ。


 名を、グレイシード。元人族の魔人だよ。


 己の研究の為に悪魔に魂を売った男。


 今の君では、到底足元にも及ばない。


 君はそれでもあれを探すのかい?」





「奴を殺すのが生きる理由だ。」




 それは目玉をコロコロと左右に振った。


「君はまだまだ弱すぎる。



 とにかく北を目指すんだ。



 もう少し強くなったら、また会いにきておくれ。」





 その瞬間、空間が大きく歪み、その渦の中にサガンは巻き込まれていった。






「生きるんだよ。竜族の子、英雄サガンの生まれ変わりの子。」












 目が覚めたサガンは宿屋のベッドに横たわっていた。



「気が付いたのね。よかった......。」


 美しい少女がそこにいた。


「お前が助けてくれたのか。」


 どうやらこの少女の名はホノカというらしい。


 夢の魔物の言ったとおりだ。



 ホノカは数日前、ここアルガリアの北の祠で目覚め、リーノという単眼族のレンジャーと行動を共にしていた。


 ホノカには祠以前の記憶がない。


 美しく聡明で、職業はプリースト。


 初級の回復魔法が使えた。


 その目を一度見ると、心の中を覗かれたような、そんなむず痒い感覚を覚えた。


「その、お前っていい方は良くないと思うわ。」


 叱られた。


 芯のある女だ。




 リーノはこの町の商業区出身。代々鍛冶屋を営む家系に生まれたが、自由を求め、冒険者になった。


 単独で祠の周辺の魔物狩りをしているとき、木の影で眠っているホノカを発見、危険だと思い揺り起こした。


 少女は、自分の名前以外のすべての記憶を失っていた。


 単眼族は人族の10倍以上の視力を持つ。


 一見華奢に見えたが、鍛えられた四肢には俊敏な筋肉がバランスよく備わっていた。


 職業はレンジャー。探索や補助を得意とした。


「なんやねん!ホンマ良かったわー。えらい出血量やったもんな!


 死んだおもたでー!


 しかし、あんた一人でサーベルファング倒したんかいな!」


 不思議な訛りを持っていた。



 うるさい奴だがすぐに打ち解けることができた。





 下級職同士、俺たちは3人はパーティを組むことにした。









































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