飛び梅
知っていますか? 飛び梅。
最近、サイトや動画を見ていると、何故か飛び梅の話題に良く遭遇します。
知っているかもしれませんが、簡単に説明しますね。
飛び梅は紅梅殿と言う所で、菅原道真が日頃から愛でていた梅の木だそうです。
梅の木の成長と共に順調に出世していった道真ですが、藤原氏の陰謀によって太宰府に島流しにされてしまいます。
太宰府に島流しにされる当日、愛でていた梅の木との別れを惜しんで、道真はこんな うた を詠みました。
・東風(こち)吹かば匂いおこせよ梅の花 あるじなきとて春なわすれそ
本当に簡単に訳すと、春になったら私がいなくても咲いてね。そんな想いを詠んだうたです。
道真との別れが耐えられなかった梅は、一夜のうちに太宰府まで飛んでいったそうです。
まだチョット続きます。
道真が語りかけたのは、梅の木だけではありません。庭の全ての樹木に語りかけたと思いますが、取り分け梅、松、桜の木に語りかけとされています。
松も、道真との別れに耐え切れず、道真を追いかけて太宰府まで飛んでいきましたが、途中で力尽きて兵庫県の辺りに降りたったそうです。
冒頭に戻ります。
飛び梅の話題を良く目にするのですが、心に残ったものが幾つかあります。
一つ紹介したいお話しがありますので、聞いて下さい。
それは飛び梅が精霊になって、人間の男の子と手紙のやり取りをする。と言うお話しです。
作中、飛び梅と少年は一切、顔と顔を合わせる事はありません。手紙でやり取りするだけです。
時代はいつ位なのでしょうか? あまり明確に描かれていませんでしたが、母と2人暮らしだった男の子の、その母が政府の高官に連れて行かれる所から物語りは始まります。
自分の力の無さを呪った男の子に、偶然その様子を空から見ていた飛び梅が、——腕力は無くとも知恵が有れば、いつか母を助け出せる。私と手紙のやり取りをして文字を覚え、書を読めるようになり、知識を得よ。——と、手紙を出します。
飛び梅は精霊なので歳をとりませんが、男の子は人間なのでやがて成人し、立派な書道家になります。
最初は飛び梅の精霊に文字や手紙の書き方を教えて貰っていた少年ですが、成長と共に飛び梅に書について、生きると言う事について手紙の中で語ります。
飛び梅は、「死ぬ」と言う感覚が分かりません。大好きな道真は一度は死にましたが、神になって飛び梅の側にいます。
書の大家となった男の子ですが、辺鄙な山奥に移り住み隠遁の余生を過ごします。
やがて、その山奥で一人寂しくその生涯を終えます。
その時に飛び梅は、初めて死別の悲しみを知りましたとさ。
長くなってしまいましたね。キミに伝えたかった事に辿り着くのに、だいぶ遠回りをしてしまいました。
物語の中で、人の師になれるほど成長した男の子が、飛び梅の手紙の書き方について叱る場面があります。
手紙の書き出しは、頭語で始め、その次は時候の挨拶をする。そして相手の安否を気遣う文章を入れなさい。と……
ボクたちの手紙は、それをまるで無視しているけれど、積もり積もればいつかは一つの物語のようになるでしょうか?
今夜は暑くも寒くもなく、毛布一枚で眠ることが出来そうです。
キミとボクの大切な人たちが、どうか良い夢につつまれますように。
そう願いながら眠りに落ちます。
草々
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