第30話 第五の事件! 電車の異常

◾隆臣


 普段電話なんてめったにかかってこないのに今日は珍しく電話がかかってきた。

 スマホの画面を見てそれが妹の緋鞠ひまりからであることがわかった。

 通話マークをタップして応答する。



「もしもしどうした緋鞠。俺に電話してくるなんて珍しいな。なんかあったのか?」



 緋鞠から電話がかかってくることなんて一生に一度たりともないと思っていたのでこの状況が少しだけうれしい。

 近いうちに東京に遊びに来るのかな? それとも仕事関係か? こんな状況だが俺は妹を全力で歓迎しよう!

 とはいえエースをガイストにして帰ったとき母さんからは「手は出してないんでしょうね!?」緋鞠からは「ロリコンたーくんっ!」って言われて実家を追い出された。その頃父さんは海外に単身赴任してたから俺を守ってくれる人は誰もいなかった。

 そんな緋鞠は俺にどんなご要件だろう。



『助けて、たーくん……』



 緋鞠の声は弱々しく震えていた。



「どうした!?」



 俺の言葉に、今度は別の声が答えた。



『よォ、俺だぜ』


「その声は……エミール、お前か!?」


『正解だ』


「貴様! 緋鞠に何をした!」


『ただ拘束しているだけさ。危害は一切加えてない』


「何が目的だッ!」


『1時間以内にこいつのところに来い。そしたらこいつの命だけは助けてやる』



 そこで通話は途切れた。



「てめぇー!」



 俺は怒りに任せて声を荒らげた。



「どうしたの隆臣?」



 とエース。



「横浜だ! 横浜に向かうぞ! 今すぐだッ!」



◾凛


 わたしたち一同は秋葉原駅から京浜東北線で品川駅まで向かいそこからは東海道線で横浜に向かいます。

 品川駅から横浜駅までに停車駅は川崎駅のみで十数分で横浜駅に到着します。

 時刻は午後9時をまわり乗客もまばらです。

 様々な色で輝く景色はすぐに後ろへ消えその代わりに絶え間なくまた新しい景色が前から現れます。そして消える。その繰り返しです。

 隆臣は拳を強く握りしめています。緋鞠さんを人質にしてわたしたちを誘き出した外道に対して激しい憎悪を抱いているのでしょう。



「緋鞠……」



 隆臣はつぶやきました。

 わたしはなんとか隆臣を励まそうと思い握り拳にそっと手を伸ばしました。

 しかし、



「隆臣、大丈夫だよ。私が――みんながついてるから」



 エースが隆臣の頭を抱いてよしよししているのを目撃してしまいました。



「ああ、ありがとうエース」



 隆臣は少し落ち着いた様子です。

 ずるい! ずるすぎます! 心底悔しいです。でもわたしだって……負けません!

 わたしはほっぺをぷくーっとふくらませ、



「えい!」



 隆臣に思いっきり抱きつきます。ぎゅーっと精一杯。



「うお! どうした凛」


「なんでもありません! (誰にも先は越させません! わたしが一番さんです!)」


「何言ってんだ? よくわからんけど熱でもあるのか?」



 隆臣はわたしのおでこに手のひらを当ててきました。



「ひぁあ〜」


「熱はないけど……いや、なんかどんどん熱くなってるよ!」



 わたしは自分の顔はどんどん真っ赤になっていくことがわかりました。胸がドキドキしてきゅうきゅうして……張り裂けそうです!

 隆臣が驚いて手を離すとわたしの熱も冷めていき胸の痛みも引いてきました。今のは予期してなかった……本当に隆臣は心臓に悪いですっ!



「だ、大丈夫です! 心配ないです!」



 わたしは隆臣から離れてビシッと背筋を伸ばします。落ち着け……落ち着けわたし!

 すると、



 ――まもなく川崎、川崎。お出口は右側です。京浜東北線と南武線はお乗り換えです



 そのようなアナウンスが入りました。

 少し経ってクリスさんが、



「おい! なんかおかしくないか? もう川崎に着くはずなのに、スピードが全然落ちてない!」



 と。

 ようやく全員がその異常を感じ取りました。それは他の乗客も同じようで、



「おい、川崎駅を通過したぞ!?」「何が起こっているんだ!」「ふざけるな!」



 車内はパニックに陥りました。

 しかし車両は速度を変えずそのまま走行を続けます。

 そして新たな異常が発生します。



「まさかとは思うんだがよォ……この電車、加速していないか?」


「うん! どんどん速くなってる!」



 尚子さんにハートちゃんがそう答えました。



「間違いない! この電車は暴走している!」


「何が起こってんのよ!」



 隆臣はそう判断しジョーカーも慌てています。

 すると、



『あーあー』



 アナウンスの声ではなく高くてかわいらしい女の子の声が聞こえてきました。



『お兄さんたち聞こえてますか? わたしです。エミリー・ウェーバーです。ふふ、さっきぶりですね。ここで1つご報告がございまーす。この電車はわたしとクイーンがジャックしましたっ!』



 To be continued!⇒

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る