第19話 痴情もつれは当人同士で解決を!
「なあ~~~にをやってんすか、あんた。(こんなとこで……)」
「私の上の立場からの指示でね、ほ……本当は嫌だったんだけど仕方ないでしょ、上の立場からの指示なんだから……。
それともなあ~に? ベサリウス、私達が派遣されてきたのがそんなに不服なワケ?」
なんでこんな面倒臭い事に?
“オレ”は、この人の言う「上の立場」って人に、『そちらの方から、こちらの有益となる優秀な人材を派遣してください。』と依頼したんですが……
それは“外”からの「
まあ、確かに「こちらに有益」で「優秀な人材」てとこまではクリア……ですが、も少し考えて……って事にゃならなかったんですかねえ?
「魔王軍総参謀」に就いているベサリウスが、最も苦手としている人物「竜吉公主」が、陣中見舞いと称する一行の中に紛れ込んでいた。
しかしこれは、今後の戦局の展開を
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
実は、この陣中見舞いの一行が派遣されるその前日……
「はあ? 私が魔王軍との「連絡係」をやれと?」
「はい。
先程総参謀からその要請が来ましたので、この条件に見合うあなた様が適任であろうと、私が判断したのです。」
「ええ~~~……でも、私が抜けてしまったら―――」
「(はあ~~)じゃ、「本音」で言ってあげましょか?」(ム・ヒ)
「(は? タメ息??)」
竜吉公主が「上の立場」の人物から言い渡された指示―――それこそが、「(彼女が)魔王軍と官邸の連絡係をする」と言うものでした。
が、実はこれは「建前」で、ササラの「本音」とした部分は―――
「(つ、て)はぁあ~? 「痴情もつれ」?? あのっ―――ちょっとそう言うのはですね……」
「おや、違うのですかあ~?」(ムヒヒヒヒw)
「(こ、のっ……
あ―――あの、そう言うのは流石に不謹慎だとは思いませんか。」
「嘘吐くんじゃネエ~よ、りゅうきちぃ。
あんた先程から(嬉しさ余って)頬緩みっぱなしじゃないか。」
「シェラ…………女王―――なぜにあなた様がこんなところに?」
「決まってんでしょ~が、この私を奴隷にまでしてくれたことの「落とし前」、きっちり耳ィ揃えて返してもらおう―――って事よ。」
「まあ、もう一つの「建前」が、そう言う事になりましゅ☆」
「『そう言う事』―――って?」
「『女王陛下の護衛役』☆」(ムヒッ)
ササラの「本音」―――と言うか、周りには判りやすいくらいにバレている雰囲気の「回収」を、この気に一気にしようとした事もそうなのですが。
今回の件は2つもの「お膳立て」があった、その一つが「ベサリウスが要請していた件」だったわけなのですが。
もう一つの方が、血気盛んに意気捲いていたワケでありまして、自分(ササラ)の仕事を邪魔されない様に鬱憤の捌け口を魔王軍に求めた……
* * * * * * * * * *
「ちょっとお~!? ここは陣中見舞いに来た客に、お茶の一つも出さんワケえ?」
「まあ……別に「不服」ってワケじゃないんですが―――あの迷惑な客、早々に連れ帰って頂けません?」
「(……)そう言われてみればそうだったわね。
折角来てあげたのにその対応―――何か裏で隠れてやってるんじゃないかしら? これは私の上の立場の人に言い付けてあげないと。」
このっ……まさか乗っかってきたぁ?
全く……なんでこの“オレ”が、この2人のやんちゃくれ相手にしなけりゃ―――
そう―――問題としなければならない処は、自分が苦手としている人物がここに来ている……だけでなく。
もう既に怒り猛り狂っている“
{*まあこの辺が「軍師」「参謀」の頭の痛い処のようで}
「どうしたのよ……さっきからシケた顔をして。」
「いや―――まあ……派遣されてきたのが“
優秀な軍師・参謀の条件の一つとして、現存する戦力でいかに敵陣営に大打撃を与えるか―――…
そう……これだ―――私が以前、この男に目を付けたのは……。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
竜吉公主は永年に亘り、『聖霊』の重鎮を担ってきました。
それはその分だけ様々な情報が彼女の下へと集まって来る―――と言っても過言ではなかった。
その中で見つけた「将来性」…………
これは……いい掘り出し物を見つけた気分ね。
所属する派閥は違うけれど、惜しむことなく援助をしてあげれば、いずれはこちら(『聖霊』)にも有益に傾いてくれることでしょう。
それは、『昂魔』の伏魔族に属する、ある秀才の経歴に目を通した竜吉公主の思惑でした。
まだこの頃に於いては各派閥間での交流は盛んに行われており、公主も立場ある存在として自分の派閥に有益となる人材の確保―――いわゆるこうした経歴に目を通す機会も多かったのです。
そして開始される「援助」―――当時のベサリウスは、この「
物好きな方もおられたものだ―――なにもこんな悪党のオレなんぞに目を掛けなくっても……
将来性の高い連中なんざ、そこら中にいるでしょうに。
確かに、彼と同じ様な才能を持った者は、そこら中にいました。
けれど竜吉公主が目を付けた処は、そう言った部分ではなかった―――
それが、優秀な軍師・参謀の条件の“2つ目”―――『敵に嫌われるほどには、味方にとっては有益』。
それに、『匿名性が高い』とは言っても、援助の出所は判っていました。
はあ~~『聖霊』―――ねえ……それも余程身分の高い方と見受けられる。
ま、くれるモノは有り難く頂戴しときますか―――
そして、
この
彼女の胸中が、いかばかりか複雑だったであろうことは、最早言うまでもないだろう。
それは、いずれは自分が囲う者の一人として、自らの愛情を注ぐために―――(本音)
いや、『聖霊』に有益に働いてもらえるものだと思っていたから。(建前)
それなのに、公主自らか認めた才は、今こうして自分の身に降りかかっている。
その「憎しみ」は、ある意味自分の
そしてこの不運は、彼も気付く処と成ってしまった―――……
まさか……このお方こそが―――?!
だからこそベサリウスは、捕えた竜吉公主の「放置」を言い渡したのです。
そして、自らの処遇もまた―――
* * * * * * * * * *
「(……)『公爵ヘレナ』さん―――でしたか。」
「どうだね、決意のほどは固まったかい?」
「残念ですが、その口にゃ乗れませんよ。
今更仕えてきたルベリウスの旦那を裏切るってワケにゃ―――」
「なら、どうして呼びつけたんだい。」
「竜吉公主様を―――どうか救い出してやってください。
見返りは、このオレの
優秀な敵の総参謀に目をつけていたのは、何も竜吉公主だけではありませんでした。
まだこの当時に於いては野に埋もれていた「カルブンクリス」もそうであり、彼女の配下である公爵ヘレナを通じての調略を仕掛けてもいたのです。
けれどベサリウスはヘレナからの調略を受けなかった―――ものの……
己の
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そして現在―――
「なら公主さん、あんたに一つ聞きたい事がある。」
「―――なによ……」
つづく
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