21

マリアの夢の中 暗闇

マリアはベッドの上で膝を抱えている。

黒いローブを羽織った男たちが登場。男たちは不気味な動きでゆっくりとマリアに歩み寄って来る。

マリアは体をこわばらせる。


黒ずくめの男1「いたぞ、嘘つき女だ」

黒ずくめの男2「どこの馬の骨とも分からぬ女が司祭様を陥れようとしている」

黒ずくめの男3「司祭様に取り入ろうとして失敗した腹いせに嘘をついたのさ」

黒ずくめの男1「悪い女に引っ掛けられた司祭様はなんてかわいそうなんだ」

黒ずくめの男2「そうだとも。過去にもそんな女がいたな。覚えているか」

黒ずくめの男3「いいや、覚えていない。名も無き女だ。覚えている訳がない」

黒ずくめの男1「名も地位もない女のことなど誰も気には留めない」

黒ずくめの男2「ああ、女の話など信じられるものか」

黒ずくめの男3「そうとも。そうとも」

黒ずくめの男1「名も無きあの女は司祭様と戦うそうだ」

黒ずくめの男2「無駄なことを。諦めて忘れてしまえ。立ち上がったところで誰が耳を傾ける」

黒ずくめの男3「他の女と同じ、名も無き女として忘れられて死ぬのさ。黙って死を待つがいい」


黒ずくめの男たちは薄気味悪く笑う。


黒ずくめの男たち「お前は……名も無き女! お前は……名も無き女! お前は……」


マリアの生霊が登場。マリアの生霊は燭台を高くかざす。燭台から神々しい輝きが放たれ黒ずくめの男たちを照らす。


マリアの生霊「否!」


黒ずくめの男たちは燭台の光にひるむ。


マリアの生霊「私の名はマリア! 名も無き女にあらず! 私の名はマリア! 名も無き被害者にあらず! 私の名はマリア! 女にあらず! 私の名はマリア! 男の思う女にあらず! 私の名は……マリア!」


黒ずくめの男たちが退場。

マリアの生霊がマリアに手を差し伸べる。


マリア「私は……あなたのように強くなんかない。強くなんかなれない、私なんて……」

マリアの生霊「私は弱い。そう……私は弱くて臆病者だ。けど、マリア、あなたがいるから私は時々強くなれる」


アーサー登場。


アーサー「マリア、私も弱い人間です。でも、マリアのために戦えるのなら、私は強くなれる気がします。たとえ、マリアが自分自身のことを弱いと思っていたとしても」


ポーラ登場。


ポーラ「私も。マリアのそばにいるだけで心強くなれる。マリアと共に生きたいって勇気が湧いてくる」


マリアはゆっくりとベッドから立ち上がる。


マリア「私の……名は……マリア……。私の名は……マリア。そう、私の名はマリア。 名も無き女じゃない。私の名はマリア! 戦い続ける者! 私の名前はマリア! 者! 私の名はマリア! 生きのび、声を挙げ続ける者! 私の名は……マリア!」

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